曖昧さ回避
- 日本の伝承に登場する蛇の妖怪。本項で解説。
- 『ファイアーエムブレムif』に登場する武器。→夜刀神(FEif)
- 『陰陽師本格幻想RPG』のキャラクター。→夜刀神(陰陽師)
- 『K』のキャラクター。→夜刀神狗朗
- 『デート・ア・ライブ』のキャラクター。→夜刀神十香 / 夜刀神天香
- 『ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』のキャラクター。→ヤトノカミ
- 『女神転生シリーズ』のキャラクター。→龍王ヤトノカミ
- 『神咒神威神楽』のキャラクター。→天魔・夜刀
概要
「やつのかみ」とも呼ぶ。
常陸(今の茨城)の歴史を記した「常陸国風土記」行方郡“曽根の駅”の項にその記述がある。風土記内の注釈において、夜刀神の外見は角の生えた蛇で、その姿を見た者は一族ごと破滅、根絶やしになるといわれる祟り神で、行方郡の原野に多数住んでいたとされる。
継体天皇の時代に箭括氏の麻多智が郡の西方の谷間にある葦原を開墾し、新田を作った。この時に夜刀神が多くの蛇を引き連れて妨害したが、甲冑を着けて武装した麻多智はそれを打ち殺して追い払い、山の登り口まで行って“標の梲(しるしのつえ、境界線の杖)”を堀際に立てた。そして夜刀神に対して「ここから上は神の住む場所と認め、ここより下は人民の田であることを知れ。これからは自分が祭司となって永久に汝(夜刀神)を祀るから、今後は決して人々に祟りをなしたり、恨んだりするな」と宣言した。
そして夜刀神社が建てられ、耕田十町歩あまりを開拓してそれを元手に麻多智の子孫が夜刀神を代々祭り今に至る。
この子孫が代々祀ったとする時代は風土記の書かれた時代を意味する「今の時代」であり、21世紀現在はどうなっているか不明
後に孝徳天皇の時代に壬生連麿がその谷を占領して池の堤を築いたところ、夜刀神が池の椎の木に群れ登りそこから去ろうとしなかった。これを見た壬生連麿は激怒して「この池の整備をしたのは人民のためである。汝は神と祀られているが何の神か。皇化に従えないのか」と大声で叫び、労役に駆り出されていた人々に「目に見える魚でも虫でも、反抗する者があれば遠慮なく全て打ち殺せ」と命じたので、夜刀神は恐れをなして逃げだした。
「夜刀」の語句は「谷地」(やち)、即ち低湿地帯に通ずるもので、その名の通り低湿地帯を守護する土着の神だとされている。
また、「常陸風土記」香島郡の記述には『むかし角のある大蛇が海に出ようとして浜を掘り進んでいたところ、角を傷つけて折ってしまった。このため、角折の浜という』旨の地名由来があり、日立市では頭部に突起をもつ蛇の装飾が施された縄文時代の土器が発掘されるなど、「角が生えた蛇」の概念は常陸地方に古代から存在したと言われている。
なお、大分県にも夜刀神の伝承があり、当地では富尾神社の祭神である佐伯惟治と同一視される。“トビノオサマ”とも呼ばれており、憑かれた者は蛇の真似をするという。
夜刀神の説話には複数の解釈があり、地方の先住民族を王権側が駆逐・制圧する様子を夜刀神に例えたというものから、古くなった農業神の信仰の克服(守屋俊彦)、荒ぶる水神を制することによる農業の発展(西郷信綱)、産鉄の神と伝説的始祖──甲冑で武装した麻多智のこと──の祭儀(吉野裕)等がある。