東京の街にバイブ星人が現れ、ゲンはその罠に落ちた。
その事で、ダンは長官に責任を追求された。
目に見えないバイブ星人に対し、どの様な攻撃を仕掛けたら良いのか?
がんばれゲン!急げレオ!
さぁ、みんなで見よう!!
放送日
1974年7月5日
登場怪獣
透明宇宙人バイブ星人
STORY
サイレンが鳴り響く中、東京の街を走る二つの人影。地球に侵入したバイブ星人を追って、ゲンは駆けていた。反対側からパトカーが現れ、警官2人が発砲。追い込まれたバイブ星人は、空中で高速回転して姿を消した。
警官達は呆気に取られ、ゲンは警戒して辺りを跳び回る。すると、ふとゲンのホルスターからマックナイフが浮かび上がる。ゲンが驚いて手を伸ばした瞬間、ナイフは警官の胸に突き刺さった!それも、あたかもゲンが投げ刺してしまったような構図で…
ゲンは警官を助け起こそうとするが、もう助からなかった。
警官「君だ、君がやったんだ!殺人現行犯で逮捕する!」
ゲン「違う!僕じゃない、僕じゃない!」
(場面転換)
その後、MAC本部にゲンは高倉長官に連れられて帰還。そのままダンは高倉から注意を受ける。
高倉「君の要請通り、おおとり隊員の身柄を引き取ってきた。しかしまだ容疑が晴れた訳じゃない、慎重にな。所でモロボシ君、我々は今まで君を信じてパトロール隊の指揮を委ねてきた。だが、今回のような不祥事については、責任を取ってもらわねばならん」
ダン「はい、全て私の責任です」
ゲン「隊長…!」
高倉「君を隊長の任務から外すという意見もある。おまけに、事件を起こしたおおとり隊員は、君の推薦で入隊したんだそうだな?」
ダン「はい!」
高倉「迂闊に人を信頼して、推薦したりするもんじゃない!ま、今回だけは君の過去の輝かしい実績に免じて、解任は免れた。しかしモロボシ君、2度と繰り返してくれるなよ?君のような有能な男を失いたくないからな。退院の処置については、君に任せる」
ダン「…はい!」
隊員達は一斉に敬礼し、高倉もそれを返して去っていった。しかし、ゲンは当然ながら納得がいかない様子。誰もいない通路にてダンに語りかける。
ゲン「隊長、あれは、あれはバイブ星人が!」
ダン「そんな事は分かっている、私もお前の迂闊さを責めている」
ゲン「しかし…!」
ダン「今更言い訳などいらん!それより考えてもみろ、私とお前はこの地球を守る、たった2人の宇宙人なんだぞ…わかるか?私とお前がMACに居なければならん理由が…この地球をこよなく愛し、故郷のように思ってる俺達は、この地球を守らねばならん…それが使命なんだ!お前はこの事件から手を引くんだ、いいなゲン」
ゲン「しかし、星人を誰が倒すんです!」
ダン「心配するな、お前がいなくても星人は倒せる…俺が倒す、一週間の停職だ!」
(場面転換)
その後、河原で百子やトオル・カオル兄妹と共に釣りをするゲンだったが、バイブ星人のことを考えるとさっぱり手がつかず、トオルに促されているのに横たわって考え事ばかり。3回もアタリを逃し、トオルと百子に心配されるが、何でもないとはぐらかすゲン。だが、彼の脳裏には姿を消したバイブ星人の姿や殺される警官、責任を追求されるダンの姿がよぎり、感情を抑えられなくなったゲンは向こう岸へ叫ぶ。
ゲン「ちくしょう…!バイブ星人めーっ!!」
すると思いがけない事態が。近くの草むらから本当にバイブ星人が出現し、トオルら3人を捉えて人質に取ったのだ。
MACの面々もすぐ駆けつけるが、人質を前には撃てずに立ち往生。すると、ゲンは憎きバイブ星人を前に我慢ができなくなり、MACの手榴弾のスイッチを入れて川に投げ込む。水面で爆発が起こり、それにバイブ星人が気を取られた隙にジャンプで背後に回り、トオル達を逃して格闘戦を仕掛ける。更にMACの銃撃を受けてバイブ星人は逃走を図るが、ゲンは許せずに追いかける。
星人が逃げ込んだ先は工事現場。ゲンの呼びかけに応え、その場の作業員全員が手に手にツルハシやスコップなどの武器を取り、バイブ星人に打ちかかるが、素人に倒せる程星人は弱くなく、鉄パイプを構えるゲン共々返り討ちに。そしてバイブ星人はまた空中に跳躍して高速回転を始め、透明になってしまった。
そして、ゲンの鉄パイプが徐々に引き寄せられ、MACの面々が到着した目の前で作業員の1人に命中してしまう…
赤石が脈を測るが、もう息はなかった。
青島「お前はなんて事を…」
平山「お前って奴は!」
ゲン「違う、違うんだ!俺じゃない!!」
その時、不気味な笑い声と共にバイブ星人が積み上げられた木の板の上に姿を現した。ゲンは「あいつだ、あいつがやったんだ!」と叫び、他の隊員の静止も聞かず突っ走る。しかし星人を追ってトンネルを抜けた所で、ゲンの足を何者かの杖が弾いた。それはダンのスティックガンだった。
ダン「やめろ!!」
ゲン「隊長!!」
ダン「やめろと言った筈だ!お前が深追いしたために、また1人の人間が命を失ったんだ!たとえ制服を着ていなくても、お前はまだMACの隊員なんだ!私の言ってる事がわかるか…!?」
ゲン「すみません…」
ダン「謝って済む事じゃない!」
ゲン「僕は…僕は自分の手で、ヤツの罠を暴きたいんです!!」
ダン「駄目だ!!」
ゲン「隊長、MACを辞めさせて下さい…!」
ダン「何…!?」
ゲン「これ以上…隊長やMACに、迷惑はかけられません!!お願いします…!」
振り返り去ろうとするゲン。だがダンは、
ダン「許さん…!!」
ゲンの脱退を認める気はなく、杖をゲンに投げつける。肩を打たれ怯むゲンだったが、そのまま振り向く事なくその場を後にした。
(場面転換)
MAC本部で高倉長官と話すダン。
ダン「長官…!隊員達のどんな行為も、皆MACの使命を果たすためのものであると、信じています…!」
高倉「それが君の責任とどんな関係があるんだ…!」
ダン「ゲンについても同じ事が言えます…私は、ゲンを信じています!私は、ゲンの無罪を証明し、星人を倒す事で責任を果たします!!必ず、必ず倒してみせます…!」
(Aパート終了)
ナレーション「ゲンは、星人の罠に2度までも陥り、身も心も打ちひしがれた。だが自分の技の至らなさを知ったゲンは、バイブ星人を倒す技を会得しようと、必死に空手の練習に励んだ」
木々の間を飛び移り、瓦やコンクリートブロックを叩き折り、大木を蹴り倒すゲン。その胸には罪なき2人の命を奪ったバイブ星人の不敵な笑い声が響き続けていた。
構えを取った後、呼吸を落ち着けるべく休憩するゲン。そしてふと、ゲンはあの時のダンの「星人は俺が倒す」という誓いを思い出す。
ゲン「隊長は死ぬ覚悟なんだ!俺は早く星人の罠を暴かないと、隊長…!」
その夜、基地でダンはバイブ星人がどうやって姿を消したのか考え込んでいたが、謎は一向に解けない。壊れたウルトラアイを手に、変身して戦えない悔しさを抑えきれず、机の定規をダーツの的へ投げ当てる。その時丁度部屋に入ってきた白川隊員が驚いて手の花瓶を落としてしまった。
その時、花瓶に当たった定規が激しく揺れたのを、ダンは見逃さなかった。
ダンは定規を指で弾き、引き抜いて尚何度も振る。早く揺れれば揺れる程、よく見えなくなるのだった。
ダン「これだ…!」
一方のゲンも、大雨の降り頻る中で、ロープを巻きつけた木の板に打撃を打ちつけていた。しかし、ゲンはここで重大な事実に気がつく。
ナレーション「ゲンは突然あることに気付いた。いくら自分の空手の技が優れていても、相手の姿が見えなかったら、それは何の役にも立たないではないか」
ゲン「そうか…だが、一体星人はどうやって姿を消したんだ?」
翌朝、MAC基地のサイレンが鳴り響く。東京の街にバイブ星人が現れたのだ。MACの名誉と冤罪を着せられたゲンのために、必ずバイブ星人を倒せと号令をかけるダン。
星人は隊員達によって十字路に追い込まれ、マックロディーに乗ってダンも到着。追い詰められた星人は再び透明になり、隊員達は惑うが、ダンは焦らず耳を澄ましてみる。すると虚空から微かな振動音が聞こえていた。
自身の推理が正しいことを確信したダンは、特殊カメラを取り出して辺りを撮影すると、青島のホルスターからマックナイフが取り出された瞬間、そこを目がけて銃撃。青い血と共にナイフは落下し、手を負傷したバイブ星人が姿を現した。
捕まえようと襲いくる隊員達を掻い潜り、軽快なフットワークで銃撃を回避、笑い声と共に逃走するバイブ星人。後を追おうとする隊員達を「ゲンの二の舞はよせ」と制止したダンは、基地にて撮影した映像を流す。速度を変えてみると、そこには身体を高速で振動させながら動き回るバイブ星人がいた。
ダン「人間の目には見えない振動をしている。丁度、自転車の車輪やプロペラのようにな。だがレンズの目は誤魔化せん」
青島「おおとりは、星人の罠にまんまと…!隊長、一刻も早くこのことをおおとりに知らせてやりましょう」
ダン「ゲンはそんなことで帰って来やしない」
赤石「でも、隊長…!」
平山「隊長!」
青島「マックシーバーはまだ持ってる筈です、連絡してみます!」
ダンも自然と彼らの間に友情が芽生えていたことを悟ったか、どこか嬉しそうに頷く。その頃ゲンは、林の中で心を落ち着けていた。そんなゲンのもとに、マックシーバーの通信が入る。
青島「おおとり隊員、おおとり隊員!君の無罪が証明された、すぐ本部に戻って下さい!」
しかしゲンは、マックシーバーを地面に投げつけてしまう。
ゲン「そんなに優しい言葉で俺を呼ばないでくれ、俺は星人を倒すまで帰っちゃいけないんだ、帰れないんだよ…!!」
やりきれない思いを拳に込め、思い切り板を殴るゲン。すると、板もそれに呼応して大きく揺れる。何かを悟ってもう一度板を叩くゲン。揺れる板に、あの姿を消した星人の像が重なる。
ナレーション「その時、ゲンは揺れる板を見つめながら、バイブ星人の正体を見た!」
ゲン「これか!」
その頃本部では、いくら呼び掛けても応答がないと青島がダンに伝えていた。すると間髪入れず、白川隊員が東京K地区に星人が現れたと報告を入れる。ダンもその言葉に、何かを決意する…
バイブ星人は姿を大きく変え、巨大化して街を荒らし回っていた。すぐさまマックロディーやマッキー2号・3号が駆けつけ、ダンの命令で一斉攻撃が開始される。だがゲンはまだ揺れる板を見つめており、帰ってこない。
次第にピンチに陥ったバイブ星人は、直立したまま高速回転し、またも透明に。一瞬、街に静けさが訪れるが、突如として火の手が上がる。
ナレーション「MACの目の前で姿を消したバイブ星人は、次々とビルを破壊した!」
見る間に街は火の海に包まれていき、マッキー2号も墜落させられた。残るマッキー3号に乗り込んだダンは、いよいよ覚悟を固める。
ダン(ゲン、俺がいなくてもあとは頼む…!)
ダンを乗せたマッキー3号は空中を旋回し、燃え上がる街の中へ突っ込んでゆく。ダンの目には、そこで暴れ回るバイブ星人の姿が見えるようだった。そして次の瞬間、3号が止まったかと思いきや、光と共にバイブ星人が姿を現す。なんとマッキー3号は星人の口に突っ込んでいたのだ!
口から火を噴いて苦しむバイブ星人。炎上する機内で苦悶の表情を浮かべるダン。
時を同じくして、ゲンの見つめていた板に一つの松ぼっくりが落ち、当たって弾き飛ばされる。それを見たゲンは反射的に松ぼっくりをキャッチ。
ゲン「見えた…見えたぞ!隊長…!」
ゲンは街でバイブ星人と戦うダンの姿を思い浮かべ、すぐさまレオへと変身する!
ゲン「隊長…!レオーッ!!」
空から街へ急行するレオ。ダンは爆発直前に脱出スイッチを押し、バイブ星人は全身が燃え上がって倒れた。その時、間一髪でレオは空中に投げ出されたダンをキャッチ。ダンが助かったことに、見守っていた隊員達も喜びの声をあげる。
炎上したバイブ星人は、もう2度と起き上がることはなかった。
(場面転換)
病院へダンを迎えに行くゲン。ダンは頭に包帯を巻き、左腕にギプスを付けながらも無事だった。
ゲン「隊長!僕の不注意で、こんなことになってしまって…」
ダン「約束通り、私は星人を倒したぞ」
ゲン「すみません…」
ダン「いやぁ、謝ることはない。私は、お前に命を助けられた…礼は、私が言わねばなるまい」
ゲン「隊長…!」
ダン「しかし、よく飛んでる私を見つけることができたな!」
ダンの言葉にゲンは微笑んで、大きく近くの段差を飛び越えて見せた後に、あの松ぼっくりを取り出して言った。
ゲン「松ぼっくりが、教えてくれたんです!」
ダン「松ぼっくり…?」
ゲンから松ぼっくりを投げ渡され、首を傾げるダン。そんなダンの様子がおかしくてか、ゲンは大きく笑うのだった。
余談
主役が戦う事なく敵が倒されて終わりという中々に異色なエピソード。
MACが単独で敵を倒したのは悲しいことに今回だけである。
ゲンは前々回の第11話同様一般人を死亡させてしまうというミスを犯してしまっている。