概要
物語序盤で主人公・竈門炭治郎が告げた台詞。これは惡鬼の犠牲になった一般人にかけた言葉。
どんなに打ちのめされようと、失ってしまった者や時間は元に戻らない。
涙を流し哭(な)いて打ちひしがれても、心が挫けてそうになっても、どれだけ後悔しても戻ってこない。
でも忘れない。
たくさん〝ありがとう〟や、他にもたくさんの思いを、過ぎてしまった「思い出」を糧に進むしかない現実。
残酷な現実(せかい)だけど、その中にある儚くて愛おしい人間愛や、人間だった鬼にも慈しみを向ける事で、その生き方がいかに悲しく虚しい存在かを知り、生きるとは何かを考えさせる。
そこから人それぞれで「答えのない答え」に苦闘した末から自己の信じられる道を進んだり、先人・敬愛する人たちから薫陶を受け未来に繋げたり、更なる壁に挫けそうになっても地道な努力で闘い方を磨き、己を省み過去を顧みて邁進する精神力で心を強くする。
たとえ目標に対して一人の力は弱く及ばずとも、幾人もの絆や幾星霜の想い重いの思いを繋ぐ心の在り方で突破する。
本稿「失っても失っても生きていくしかないです」は、作者の「人はそんなに簡単に強くなれない」という信条(テーゼ)から、失ってもそこから学んで生き、誰かを思い続けて繋いでいく慈愛を描くといった作風・世界観を現す言葉(せりふ)の一つであろう。(「怒りや恨みで鬼が殺せるならとっくに鬼なんぞこの世界にはいない」=そんなものはなんの力にならないとも堕姫戦で明言されている)
アニメ版では「失っても失っても生きていくしかないんです。どんなに打ちのめされようと」と、語句に「ん」と加えて語り易くする言葉遣いや、声優の名演から暖かな声音の表現で、原作に負けず劣らずの感情移入を受ける制作がされている。
また第19話「ヒノカミ」の挿入歌及びED曲『竈門炭治郎のうた』では、歌詞の一部に『失っても 失っても 生きていくしかない』と、炭治郎が劇中で言っていた言葉が挿入されている。