原作では
天竺へ向かう三蔵法師(以下、三蔵と略す)一行は、綺麗な水が流れる川に辿り着く。それこそが、子母河である。綺麗な水を見た三蔵は飲みたくなり、托鉢用の鉢を出して猪八戒に水を汲んでもらう。八戒も喉が渇いていたため、三蔵の残りを全部飲み乾してしまう…が、二人は途中でお腹が痛くなり、しかもお腹が腫れ上がって肉の塊が動くような現象までもが起こり始める。孫悟空と沙悟浄は、二人を助けて居酒屋に駆け込む。
その河を渡してくれた船頭さんは女性、村人も女だけという不可解な土地を見た悟空が訝しんでいると、居酒屋を経営するおばあさんが「ここは西梁女人国、男はひとりもいない国です。あの川は子母河といって、この国の女はあの河の水を飲んで赤ちゃんを生むのですじゃ。お前さんらは懐妊したのでしょうのう」と教えてくれる。
それを聞いた三蔵はビックリ仰天、「誰か医者を呼んでくれ~!」と泣きだした揚げ句、「堕胎薬はないのですか?」と、トンデモ発言を繰り返す。なお、豪傑で鳴らした八戒も「死にたくないよ!」「産婆さんを呼んで下さいよ」と暴走モードに発展。
おばあさんは唯一の治療法として「解陽山破児洞の中に落胎泉という泉があるのじゃが、如意真仙(実は牛魔王の弟)と言う欲張り道士が独り占めしておるのです」と情報を提供し、悟空は如意真仙に助けを請うが、かつて悟空に懲らしめられた紅孩児の叔父である真仙はそれを拒否、悟空に意地悪を仕掛ける。キレた悟空は悟浄に水を強奪させ、その隙に真仙を懲らしめて凱旋。三蔵と八戒に水を与えて治療に成功したのだった。
備考欄
- 王城(首都。当然女王様が治める)の外には迎陽館という駅舎があり、そこに照胎泉という泉がある。この水に影を映して、もし影が二つあるようなら子供が生まれるという証拠だとされる。子母河がある東の国境にある村は、女人国にとっては命綱と言うべき存在だが、余所者からすれば呪いの水なのは言うまでもない。
- なお、落胎泉は女人国の村からかなりの距離(三千里)もある場所に存在するため、泉の水はかなり貴重な薬として扱われており、色々と騒がせてしまったお礼として三蔵一行から残りの水を全て貰ったおばあさんは人助けもできる上にお金も入るため、「これで葬式代も払えまする…ワシの老後は安泰じゃ」と喜んでいる。
創作では
- 現実であればとんでもない話だがコミカル性を帯びているため、子供向けの本にも記されることが多い。お人好しの三蔵、食いしん坊の八戒が大失敗をすると言う分かりやすいストーリーは様々な西遊記モノに散見する。これでも原作通りなのである…
- ただし、曹洞宗が掲載したコミックの西遊記では「男でも子供が出来るのか」と恐れる三蔵と八戒におばあさんが、「男はハラワタが溶けて死にます」と言うなどシリアスな改変がされることも。このように、男子がいない地元民には救いの水だが余所者には「病で死ぬ」「男でも子ができる」「お腹が腫れて苦しむ」など不利益が伴う描写が多い。
- Koei西遊記ではこのエピソードに由来した「落病泉」なるイベントが存在する。ただし、災難の内容は懐妊では無く「眠らされる病」であり、如意真仙を懲らしめて治療用の水を手に入れる部分が共通している。
- Fate/GrandOrderのキャラである三蔵ちゃんこと玄奘三蔵(原作とは異なり、尼僧である)もひどい目にあったらしく、「子母河の水なんてもー絶対飲まないわ!」と発言している…が、後にこの発言は差し替えられた。