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海上保安庁が所有する、海上警備用の大型船舶。小型のものは「巡視艇」。


巡視船の特徴編集

基本的な船体構造は商船と同じだが、荒れた海でも活動可能な良好な航洋性、強力な指揮・通信能力、大型船を曳航できる強力な機関を持つ。また、巡視船の中でも大型のものは救難・哨戒用にヘリコプターを装備する。


密漁船、密航船、海賊船やその他の不審船に対処するため武装を持つことも特徴だが、軍艦ではないので、武器は機関砲程度。


通常は配備先に縁の深い名前がつけられるため、配備替えにより名前が変わる場合がしばしばある(ひだ型巡視船など、これにあてはまらない船もある)。


護衛艦などに比べると乗員数はとても少ない(3000トンクラスの「つがる型」でも40人強)が、救難や災害支援を想定し、大量の物資や人員を輸送するキャパシティを持つ。さらに特殊任務に対応するため砕氷機能や高速航行、消火機能といった特殊機能を持たされた巡視船もある。


その任務の特質上、船隊を組まない単独行動が基本だが、不審船対策用に建造されたひだ型巡視船のように3隻一組の運用を前提に建造された巡視船もある。


近年の海上保安庁の組織体制は、「南西シフト」が鮮明になっており、南西方面の第十管区(南九州と南西諸島北部を管轄)と第十一管区(沖縄県を管轄)には尖閣諸島警備用に「みやこ」「れいめい」「しゅんこう」と続々と新造船が投入される一方、北海道を管轄する第一管区は近年ほとんど新船の投入がなく「そうや」「つがる」の船齢は40年超えとなっている。


また2024年には尖閣諸島への対応に向け、30,000トンクラスの巡視船を建造することが検討されている。ヘリコプター3機に加え多数のゴムボートを搭載し、約1,500人の収容スペースとコンテナ輸送能力を備える予定。


巡視船の型式編集

多目的型(仮称):「????」。30,000トンの巡視船(多目的型大型巡視船?)。ヘリコプターを搭載し、多数のゴムボートを運用可能なもの(予定)。住民1,500人の収容スペースや、コンテナ輸送能力を備える(予定)。2024年現在2隻予定。


PLH型:「Patrol Vessel Large with Helicopter」。ヘリコプター搭載型大型巡視船。公称船型700トン以上の型のうち、ヘリコプターを搭載しているもの。2020年現在18隻。


PL型:「Patrol Vessel Large」。大型巡視船。公称船型700トン以上の型。現役船にはヘリコプター格納庫はないが、ヘリコプターとの連携強化を目的に、ヘリ甲板を備える型が多い。


PM型:「Patrol Vessel Medium」。中型巡視船。公称船型350トン以上700トン未満の型。


PS型:「Patrol Vessel Small」の略。小型巡視船。現在は公称船型130トンのものが最も小型であり、これは巡視艇(PC型およびCL型)の中で最も大きい「まつなみ」よりも小さい。


有名な巡視船編集

※概ね建造順。

  • PL-04→PL-100「栗橋」
    • 元日本海軍所属の救難曳船。1897年デンマークで建造、当時の船名はヘラクレス。1905年、日露戦争にあたり海軍がスウェーデンの船主から購入し、軍艦の引き揚げ作業を行う。太平洋戦争後復員輸送、掃海に従事し、初代の海上保安大学校練習船となった。1955年解体。
  • LL-01→PL-107「宗谷
  • PL-106「こじま
    • 元日本海軍海防艦「志賀」。栗橋に次ぐ海上保安大学校2代目練習船として運用された。なお以降の海上保安大学校練習船(PL-21)も同名である。
  • PM-21「しきね
    • 海上保安庁が建造した初期の巡視船の一隻。初代『ゴジラ』や、『ウルトラQ』に登場することで知名度が高い。
  • PL-11「のじま
    • 気象観測用巡視船。気象衛星「ひまわり」が打ち上げられるまで南方の遠洋で台風などの気象観測に従事した。
  • PM-89「たかとり」
    • 消防巡視船。東京港に係留されている「宗谷」を別にすると海保最古の現役巡視船であった。2016年10月13日退役。
  • PL-01→PLH-01「そうや
    • 前記「宗谷」の後継で、200海里時代PLHのタイプシップとして建造された大型砕氷船。ヘリコプター格納庫、OIC室(護衛艦のCIC室に相当)など多くの新機軸を導入し、その後のつがる型巡視船のプロトタイプとなった。たかとりの退役により現役最古の巡視船になった。
  • PLH-21「みずほ」→「ふそう」
    • 初のヘリコプター2機搭載型PLH。建造当時は世界最大の巡視船だった。同型船に「やしま」。「みずほ」は新「みずほ」の就役に伴い退役予定だったが解役は見送られ、「ふそう」に改名してしばらく現役を続行することになった。「やしま」の今後の動向は明らかでない。
  • PM-15「てしお」
    • 「そうや」と並び海保でただ2隻の砕氷巡視船。「そうや」の入れない野付半島周辺や道東の漁港の砕氷を担当する。
  • PL-31「いず」
    • 災害対応型の救難巡視船。病院船に準じる医療設備を持ち、給水・給食能力を強化している。海中捜索のため潜水士が常駐し潜水支援艇も搭載する。
  • PLH-31「しきしま
    • プルトニウム運搬船護衛用に建造。船体は軍艦に準じる構造となっており、基準排水量6500トンと巡視船としては極端に大きく、これまた建造当時は世界最大の巡視船。対空レーダーの装備など重武装。
  • PLH-32「あきつしま
    • 遠隔地派遣のため、しきしま型巡視船の2番船として建造。しきしまの武装を削減するかわりに搭載艇の増加、指揮機能の強化などが行われ、船型はより大型化している。
  • PL-51「ひだ」
    • 不審船対策に特化した高速高機能巡視船。同型船に「あかいし」「きそ」。
  • PLH-33「れいめい」
    • 平成28年度第2次補正予算案で建造されたヘリコプター2機搭載型PLH。当初は「しきしま」型3番船とされたが船体は新たに設計されている。
  • PLH-42「しゅんこう」
    • 「れいめい」と同じく平成28年度第2次補正予算案で建造されたヘリコプター2機搭載型PLH。尖閣警備を主眼とし軍艦構造で建造された「れいめい」型に対し、商船型の船体で災害支援機能を強化している。
  • PLH-41「みずほ」
    • PLH-21の後継船として建造されたヘリコプター2機搭載型PLH。特徴や装備は「しゅんこう」型とほぼ同じだが、船体は少し小ぶりにつくられている。

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