概要
海上保安庁の特殊部隊で、シージャック事件やテロなどの特殊な海上警備事案への対処を主任務とする部隊。通称「SST」(Special Security Team)。
関西国際空港に近い大阪府泉佐野市の特殊警備基地を拠点としており、第一特殊警備隊から第七特殊警備隊までの7個隊で編成され、各隊は8名ずつの隊員からなる。
海上保安庁内では、海上デモ対策部隊の特別警備隊(同名である海自SBUとは別)と略称がダブるため、両者を区別するために特別警備隊を「特警隊」、特殊警備隊をSSTで呼び分けているとされる。
任務
上で述べたとおり、SSTは海上でのシージャック事件やテロへの対処、さらに工作船や海賊による事案にも対処するほか、西日本方面でのサリンなどの化学剤を用いたテロが海上で起きた際の対処も担当する(東日本では羽田空港に基地を置く特殊救難隊が担当する)。
2009年には高知県室戸岬沖で覚醒剤の密輸船を急襲して制圧したり、2014年にはサンゴ密漁船にヘリコプターからのリペリング降下で突入して制圧する等、密輸や密漁を行う船への対処も実施している。また、調査捕鯨を妨害するシーシェパード(エコテロリスト)の対策のため捕鯨船に便乗することもあり、事案の大小はあるが日本の特殊部隊で最も出動数が多いとも言われている。
また、後述する前身部隊の任務内容より、重要物資の護送や護衛、重要施設の警備も行うと考えられる。
沿革
SSTの前身になったと言われるのは、関西空港をゲリラ・テロ事件から警護するため1985年に発足した「関西国際空港海上警備隊(海警隊)」と、核物質であるプルトニウムの輸送船を護衛するため1989年に発足した「プルトニウム輸送船警乗隊(警乗隊)」で、1996年に両者が統合されることでSSTは発足した。
なお、警乗隊時代にはプルトニウム輸送に備え、アメリカ海軍特殊部隊のネイビーシールズによる指導が行われた。SST発足後は韓国の海洋警察特別攻撃隊(SSAT)と合同訓練を行ったことがある他、現在も都道府県警察の特殊部隊SATや銃器対策部隊と合同訓練を行うことがある。
さらにはアメリカ陸軍第19特殊部隊グループに所属し、全米ライフル協会やFBIの銃器インストラクターを務め、国際実用射撃連盟や国際防衛射撃協会の創設メンバーの一人でもあるKen Hackathorn氏の指導も受けたことが、Hackathorn氏本人の口から語られている。
装備
「※」は警乗隊時代の装備
拳銃
- S&W M19(※):S&W社製リボルバー拳銃。指導したネイビーシールズから装弾数不足を指摘されたことで後述のP228に更新された。
- SIG SAUER P228:シグ・ザウエル社製オートマチックピストル
- S&W M5906:M39をベースとしたS&W社製オートマチックピストル。生産が終了しているため、現在は上記P228への更新が進められているとされる。
- 上記Hackathorn氏によると、氏の所属していた会社がSSTの要望に基づいてカスタムを施したSST向け独自カスタムのM5906を納入している。詳細は次のリンクを参照。→ 海上保安庁 特殊警備隊 (SST) の矢車マークが刻印されたS&W Performance Center 5906
サブマシンガン
ライフル
- 89式5.56mm小銃:豊和工業製アサルトライフル。狭い船内で扱うことを想定してか、第1空挺団などが用いる屈折銃床式を装備する。
- 64式7.62mm小銃(※):豊和工業製バトルライフル。照準器を取り付けて狙撃銃として運用。
- M4カービン:米国製アサルトライフル。一部有識者はSSTが本銃を装備していると主張している。
- 豊和M1500(※):豊和工業製狩猟用ライフル。狙撃銃として運用。連射できないため海上での使い勝手は悪かったらしい。
- 狙撃用ライフル:詳細不明。.338ラプア・マグナム弾を使用するとのこと。
- 対物ライフル:詳細不明。マクミラン社製とのこと(TAC-50か?)
その他
- 対NBC機材:化学剤や生物剤を用いたNBCテロへの対処用に装備。2013年に原発襲撃テロを想定して行われた合同訓練では、黄色の放射線防護服に突入装備と89式小銃を装備した姿で突入訓練を行うSSTの姿が公開された。→原発テロ想定~福島第2で合同訓練~ 写真特集:時事ドットコムニュース
- 潜水装備:気泡が出ない循環式潜水器を使用し、潜水で対象船舶に接近し乗り込む。
この他、特警隊が催涙弾を撃つために装備しているM870ショットガンも装備している可能性がある。