概要
一般的に和服の合わせを表現する際に用いられるが、洋服に対しても用いられることがある。対義語は右前(みぎまえ)。
和服においては「死人」に関わる特殊な意味を持つ。
解説
この場合の「左」とは、着ている人物に向かって左側の衽(おくみ、合わせとなる部分の生地)が前に来ている状態を指す。着ている人物から見てではないので注意。
右利きの者が他者に「着せる」ことに適した様式であり、女性が他者に着付けてもらうことの多かった西洋では、一般的な女性用の衣服の構造として用いられる。洋服が男物は右前、女物は左前となっているのはその名残である。
一方和服においては性別に関係なく必ず右前に着るのが古くからの習慣であり、左前に着ることはない。左前に着るのは、死んでから棺の中で経帷子を着せられる時のみである。このことから左前は「死人前」とも俗称され、生者の着方にあらず、縁起が悪いとされてきた。
しかし近年では洋服と同じ感覚で女物の和服も左前とする勘違いが発生し、絵の中だけでなく現実でも女性が和服を左前に着てしまうことがある。街のおばあさんから「あんた間違っとるでー」と指摘される可能性が高い。なお稀に男性でも誤って左前になっている場合がある。
外国人女性の場合も、上述のように洋服と同じと勘違いし、左前に着てしまう。
また勘違いでなくとも、絵の場合は後で反転させるつもりでわざと左前に描いたものを忘れて放置したり、右前で描いたものを反転させた際に修正し損ねたりしたために、結果的に左前となってしまう場合もある。
似たパターンに和服で自撮りした際は、画像が鏡像反転したままなので左前に映ってしまうことがある。
通常の和服を着た人物、なかんずく女性を描く場合、このような誤りはいろいろな意味でまずいので厳に注意する必要がある。
一発で覚える方法は「和服の襟はyの字で合わせる」。
ただし左前が死人前であることを逆手に取り、その人物が幽霊など死者、死に関わりのある者もしくはそのような連想を持たせる存在であることを表現する場合はこの限りではない。
中国での左前は、夷狄(異民族)の風習とされている。
褊衫(へんざん)と呼ばれる法衣は左前に着用するのが正しく、法衣の中でも特に戒律を重視したもので、主に授戒などの仏教の戒律儀式で用いられる。このため戒律を重んじる僧侶が好んで着用する。
使用状況
このような性質のタグであるため、指摘の目的で後からつけられることが多い。稀に左前が禁じ手であることを説明する絵につけられることもある。
比喩的な意味での「左前」
このように縁起の悪さの最たる例=死に関するタブーという性質を持つため、「運気が下がること」「懐が厳しくなること」の例として「左前」が使われることがある。
例
「大通りに大型ショッピングモールが出来てから、うちの店の売り上げはずっと左前だ」
関連タグ
幽霊:左前でも問題ない、というよりそっちが正しい例
白坂小梅:『アイドルマスターシンデレラガールズ』より。着物を左前に着るのが好きなのだが、案の定、アイドル仲間からは「縁起が悪い」とツッコまれている。
五十鈴れん 伊吹れいら:『マギアレコード』より、れんは魔法少女の衣装、れいらは変身のアニメーションにおける魔法少女の衣装が左前である。実は二人とも魔法少女になるまでに……