概要
下野国佐野庄の天明(現在の栃木県佐野市・犬伏町。当時は東国随一の茶釜産地として知られた)で作られた茶釜。普通の茶釜と違ってどら焼きのような平べったい形をしており、これを蜘蛛に見立てて「平蜘蛛」と名付けられた。
とてもそうは見えないというあなた。考えるな、感じろ……。
主と共に散りぬ
そんな平蜘蛛、所有者はあの松永久秀。将軍暗殺に荷担するわ、東大寺を焼き討ちするわ(そのくせ別の寺の「この頃やけに雷が多いんで仏罰かと思ってます」というお悩みに対しては励ましの書状を送った事もある)で悪名高い一方、高名な茶人として茶器への造詣も深く、熱心な茶器コレクターという顔もあった。
ちなみに松永は織田信長に臣従する際に九十九髪茄子(抹茶を入れる小さなツボ。これもすごい値打ち品)を献上することで所領安堵を約束されたが、信長としては平蜘蛛も気になっていたようで、幾度も譲ってくれと懇願している程。
だが意地とプライドが許さなかったのか、こちらは最期まで譲らなかった。
そして天正5年(1577年)、松永は信長に対して二度目の謀反を起こし、拠点である大和国(今の奈良県)・信貴山城に籠城した。
この際信長は城を包囲しつつも「平蜘蛛を渡せば助命する」と破格の譲歩をしている(そもそも謀反を起こした奴を許す時点で異例だが、そいつが再度裏切ってもなお助命を約束して譲歩するなどとてつもなく甘い)。
……が、松永はもう後には退けないとばかりにこれを拒み、平蜘蛛をたたき割って自害したという(首を茶釜とともに家来に爆破させたとも、茶釜を叩き壊して自ら火にとびこんだともいわれている。松永は70近いご老人だったので、たとえ助命されてもどのみち長くない身ではあったろう)。
ちなみに昭和以降は「平蜘蛛に火薬を詰め込んで首につるし、火薬に点火して自爆した」と脚色され、この設定が小説やドラマで広まった。戦国ファンの間で松永が“ボンバーマン”と呼ばれるようになったのはこのため。
現存説
通説では焼け落ちる城と共に失われたとされる平蜘蛛だが、一部ではその後も残っているという記録もある。しかし真偽は不明で、当時のものとされる平蜘蛛茶釜(静岡県浜松市の浜名湖舘山寺美術博物館に保管されている)も本物だという確証はない。
「平蜘蛛の破片を集めて復元した(元々鋳物なので鋳造し直せば良い)」
「信長が焼け落ちた城跡を掘り起こして探してこいと命じ、無事に出土したので彼の手に渡った」
「実は久秀が破壊したのは偽物で、本物は友人の柳生松吟庵の手に渡った」
創作
- へうげもの…久秀が自爆した際、吹き飛んだ蓋を織部が回収し修復した。
- 麒麟がくる…破壊されず光秀に託される。その後、光秀から信長の手に渡る。破壊こそ免れたものの、光秀の手に残された結果彼が本能寺の変に走る遠因となるなど凄まじい影響を与え、あの冷静沈着な光秀が「これは松永殿の罠だ!」「見事にしてやられた!」と狂ったように笑い、視聴者からも「やっぱり爆弾(特大サイズ)じゃねーか」「自爆よりも始末に負えねえ」と突っ込まれることとなった
- 平グモちゃん:平蜘蛛茶釜を擬人化した本作。松永久秀がイケメンとして登場する。
また史実由来のアイテムでもゲッテンカワールドの世界観に合わせて魔改造される事が多い中、平蜘蛛は蜘蛛のオブジェが添えられているくらいで結構現物に近い。