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必殺口上


黒船このかた 泣きの涙に捨てどころなく

江戸は等しく針地獄の様 呈しおり候

尽きせぬこの世の恨み一切 如何様なりとも始末の儀

請け負い申し 万に一つもしくじり有るまじく候

ただし 右の条々 闇の稼業の定め書き

口外法度の仕留人


(語り:芥川隆行)


概要編集

1974年6月~同年12月に放送された、必殺シリーズ第4作。全27話。

中村主水が主要人物として登場する、いわゆる「中村主水シリーズ」2作目の作品であるが、前年の『必殺仕置人』放送中に現実に起きた殺人事件が「必殺仕置人殺人事件」と報じられてしまった騒動を受け、同シリーズで唯一「必殺」の名を冠していない作品となっている。


必殺仕置人』や以降のシリーズと比較し、「幕末の動乱期」という時代設定や主人公たちの「義兄弟」という関係性、裏稼業として人を殺める意味に苦悩する描写など、本作ならではのドラマ性に重きを置いた描写が随所にみられるのが特徴。

また、メインの登場人物において初となる殉職者がシリーズで初めて出たのも特徴で、この要素はシリーズの世界観を示すものとして後続の作品にも引き継がれてゆく。

また、サブタイトルは前作『助け人走る』同様に規則性があり、全て「〇〇にて候」で統一されている。


キャスト陣では主水役の藤田まこと、半次役の津坂匡章、おきん役の野川由美子が『仕置人』から続投した一方、新レギュラーとして石坂浩二近藤洋介が登板しており、「旧作からの続投組と今作での新規組による混成」という、のちの『新必殺仕事人』でも採用されるやや特殊な構成になっている。


作品そのものは勿論関連コンテンツも大きな注目を集め、主題歌「旅愁」がオリコンチャート最高2位にランクインしたほか、劇中に登場したセリフ「なりませぬ」が流行語となった。


登場人物編集

仕留人編集

義兄弟編集

主人公の三味線弾き。妻の糸井あやは主水の妻・りつの末妹で、義兄弟では末っ子にあたる。

本名は吉岡以蔵。かつては高野長英に師事する蘭学者だったらしいが、蛮社の獄によって師の長英同様に幕府に追われる身となり名を偽っている(ちなみに師の長英はのちに意外な形で必殺シリーズに登場した)。

主水の誘いを受け、病弱な妻の薬代を稼ぐため彼が義理の兄と知らずに裏稼業者となった。

妻と穏やかに暮らすことを願う優しい人物あると共に巨視的な視野で日本の未来を憂うような高い教養人でもあり、それら故に裏稼業者としての仕事が果たして本当に世の中の役に立っているのか、僅かでも人を幸せにしているのか、全て無意味な事では無いかなど悩む様子が多く見られる。そうした裏稼業者らしからぬ優しさ、教養人ぶりが災いし、最終話では殺しの標的が命乞いの為に発したある言葉に反応してしまった隙を突かれて致命傷を負い落命することとなった。

裏稼業には特殊な三味線の撥を使用。刃を仕込んだ二枚重ねのものを多用していたが、木製の撥や針を仕込んだものを使ったりすることもあった。中盤からは簪や特殊な矢立によって相手の急所を刺す技を用いるようになった。


墓石彫り(現代で言うところの石材屋)。りつの妹であるたえこと妙心尼を愛人に持つ義兄弟次男。

幼少期に親を亡くしある寺の和尚に拾われるも、彼が金貸しをしていたことに端を発する情のもつれから誤って和尚を死なせてしまい島流しになった前科を持つ。

私欲のために行う裏稼業に嫌気がさし一時遠ざかっていたが、主水に誘われる形で復帰した。

酒と女と博打が好き。情に脆いが、貢と異なり裏稼業については割り切った価値観を見せている。

裏稼業には素手で臨んでおり、怪力で相手の心臓を握りつぶし死に至らしめる方法をとる。その際、心臓が止まる瞬間のレントゲンおよび心電図のカット(ファンからは『死ん電図』などと呼ばれることも)が入るのが特徴。


北町奉行所同心。義兄弟長男。

『必殺仕置人』最終回にて仕置人一味が解散となった後、しがない一同心に戻っていたが、ある出来事で大吉や貢と面識を持ち、さらに程なく半次・おきんの二人と再会、大吉・貢を誘い再び裏稼業を始めることとなる。

裏稼業に用いるのは自前の刀による剣術。


密偵編集

『仕置人』の「鉄砲玉のおきん」と同一人物。仕置人一味解散後、長崎に一時期いたらしく、そこで仕入れたという奇妙な舶来品を半次とともに売りさばいて暮らしている。


『仕置人』の「おひろめの半次」と同一人物。いつの間にかおきんと再会して江戸に戻ってきていた。

本作にて府中の生まれだったことが明かされている。中盤に起きた自らの出自にまつわる事件を機に裏稼業を離れたらしく、それ以降登場していない。


  • おみつ(演:佐野厚子)

おきんや半次の協力者。厳密には仕留人と異なるものの、情報収集などで手を貸すことが多い。


関係者編集

  • 中村せん(演:菅井きん)

主水の姑。相変わらず婿養子である主水をいびる。

本作にてご先祖様が足軽だったこと、および夫が13年前に亡くなっていることが明かされている。


  • 中村りつ(演:白木万理)

主水の妻にして、せんの長女。妙心尼とあやの姉にあたる。

せんと二人で主水をいびるのがお約束。


  • 妙心尼(演:三島ゆり子)

せんの次女。

名の知れた尼僧でありながら性欲が旺盛で、大吉を愛人としており、「なりませぬ」と繰り返しつつ彼に行為を迫る。

のちに『新必殺仕置人』にも登場。相変わらずの好色家ぶりであり、義理の兄である主水からは呆れられていた。


  • 糸井あや(演:木村夏江)

せんの三女。

貢の妻で、病気を患いながらも彼を献身的に支えている。


その他編集

  • 同心 田口(演:古川ロック)

奉行所における主水の同僚。


  • おまさ(演:鳴尾よね子)

余談編集

当初は別作品が制作・放送される予定だったが、中村主水のキャラ人気を受け本作の制作が決定した。ちなみに当初予定した作品は必殺シリーズの括りには入らず『おしどり右京捕物車』として予定通り制作されている。


実は本来『暗闇始末人』のタイトルにするはずだったのだが、ある時代小説のタイトルがこれに近くなってしまったためやむなく直前に改題した経緯があり、このため一部書籍では修正前のタイトルで情報が出回っている。なお「始末人」の名は後年の劇場作品『必殺始末人』にて使われることとなる。


関連項目編集

必殺シリーズ

助け人走る ← 本作 → 必殺必中仕事屋稼業


中村主水シリーズ

必殺仕置人 ← 本作 → 必殺仕置屋稼業


からくり屋の源太:『必殺仕事人2009』において「裏稼業者らしからぬ優しさゆえに悪人に命を奪われる」という貢と似た運命を辿ってしまった人物。

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