概要
木曽山脈(中央アルプス)の最高峰で、標高は2,956mでわずかに一万尺(3,000m)に届かない。
日本国内に「駒ヶ岳」の名がある山が多く存在するため、区別する意味で木曽駒ヶ岳と呼ばれる事がほとんどである。
また麓の伊那谷を挟んで東方に位置する赤石山脈(南アルプス)の甲斐駒ヶ岳(2,967m)の別名東駒ヶ岳に対して、西駒ヶ岳と呼称・表記される事もある。
山頂部は丸みをおびた比較的なだらかな山で、支峰ともされる宝剣岳(2,931m)や、木曽前岳(2,826m)、中岳(2,925m)、伊那前岳(2,883m)などが周囲に立地する。
山頂近くにはヒメウスユキソウやオヤマノエンドウ、タカネシオガマなどの高山植物が多い。
宝剣岳の南東面には氷河の浸食作用で生まれた典型的なカール地形があり、千畳敷カールと呼ばれる。
古くから山岳信仰の対象となり、14世紀には開山、16世紀には地元の神官によって山頂に保食大神が祀られたと伝わっており、現在山頂には木曽側と伊那側にそれぞれの駒ヶ岳神社の奥宮がある。
また山頂の北東部のカールにできた濃ヶ池には、日照りの夏に岸辺で騒音をたてると雨が降るという伝説があり、江戸末期頃までは麓の住民が雨乞いで登山することがたびたびあったようである。
木曽駒ヶ岳周辺は麓の集落からの徒歩では険しい斜面の山々が多く、大正期には気象予報技術の不足や山小屋の損壊などにより登山中の中学の学生・教員ら10名近くが凍死するという痛ましい事故も発生するなど過酷な道のりであった。
1967年(昭和42)夏に千畳敷カールの末端に近い2,612mの地点まで駒ケ岳ロープウェイが完成し、木曽駒ヶ岳の登頂及び周辺の山の縦走は劇的に容易となった。
カールまでの観光客も増加した。
積雪のない夏季の荒天ではない日においては、カールの駅から木曽駒ヶ岳山頂までは20〜40代の健常者なら片道1時間半ほどで歩ける距離であり、傾斜や足場も特に険しい箇所はない。
両側にペグとロープが設置されたわかりやすい登山道で山小屋数も多い。
大きな広場となっている山頂からは360度の展望を望む事ができ、晴れた日なら御嶽山や、乗鞍岳、穂高岳など飛騨山脈(北アルプス)の一部、八ヶ岳、南アルプス、富士山の上部も確認できる。
無論ピクニックやハイキング感覚の装備では登るのは賢明ではないが、日本アルプスや富士山といった険しい高山への挑戦のトレーニング場としては非常に適していると言えよう。
麓からロープウェイの下の駅まではマイカーの通年規制区間である。
そのためJR飯田線の駒ヶ根駅や菅の台バスセンターで路線バスに乗り換える必要があるが、中央自動車道の駒ヶ根ICからもかなり近く全体的に交通アクセスは良い。
伊那側の登山口に早太郎温泉のある駒ヶ根高原が、木曽側に木曽駒高原があり、ともに観光保養地やゴルフ場、キャンプ場などになっている。
(ロープウェイでアクセス可能な千畳敷カールと木曽駒ヶ岳の登山口の光景)