曖昧さ回避
概要
会津(福島県)の諏訪の宮の伝承では、鬼に似て眼光鋭く、歯噛みする音は雷の如く響くとされる。
一度出現して標的を驚かせ、その後相手の不意をついてもう一度驚かす、所謂「再度の怪」と呼ばれる妖怪のひとつ。最悪の場合、驚かされた側はショックで死んでしまう。
諏訪(長野県)にも登場し、こちらは舌が異様に長い老婆の妖怪「舌長婆」が宿に泊まりに来た二人の旅人を襲おうと、寝ている者の顔を嘗めていた所「舌長婆、舌長婆、諏訪の朱の盆じゃ。捗らなければ俺が手伝ってやろう」と扉を打ち破って朱の盆が登場する。こちらは顔の長さが2mもある赤い大坊主である。起きていた旅人が刀で切りつけると朱の盆は消えたが、もう一人の寝ていた方は舌長婆に連れ去られた。同時に泊まっていたボロ屋も消え、残された旅人は仕方なく大木に腰掛けて夜を過ごした。翌朝、あたりを見回すと連れ去られた者は骨だけになって横たわっていたという。
伝承で別々の妖怪が協力して人を襲うというのは珍しいケースである。
呼称
読み仮名は「しゅのばん」であり、「朱の盆」や「首の番」などとも呼ばれる。
漢字では、資料によって「朱の盤」や「首の番」と表記するが、いずれも「しゅのばん」と読み、昨今で有名な「しゅのぼん」という呼称よりも此方が本来の呼び名だった可能性がある。これは、例えばアマビエなど他の妖怪の伝承の変異の経歴にも度々見られる現象である。
創作での扱い
ゲゲゲの鬼太郎
⇒朱の盆
まんが日本昔ばなし
「しゅのばん」として登場した。
厳密には、実際の本物の妖怪として登場したのか主役の男のやる気がおきない自堕落な毎日を律するために「何か」が見せた幻だったのかは不明である。飲み屋の女将たちや犬の顔が突然しゅのばんのそれに変化するというのっぺらぼうや置いてけ堀などにも似た演出がされており、『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズ影響を受けている可能性のあるデザインになっている。
天守物語(泉鏡花の戯曲)
舌長姥と共に、猪苗代城の女妖怪・亀姫の眷属として、主人公・富姫が住まう姫路城を訪れる。「大山伏の扮装(いでたち)、頭に犀のごとき角一つあり、眼円かに面の色朱よりも赤く、手と脚、瓜に似て青し」と表され、自らは「岩代国会津郡十文字ヶ原青五輪のあたりに罷在る、奥州変化の先達、允殿館のあるじ朱の盤坊」と名乗る。
到着早々、女童をおどかすが「いやなおじさん」「怖くはありませんよ」と涼しく返されて苦笑い。全体的にコミカルな役どころではあるが、土産に持参したのが血まみれの男の生首である辺りは流石に妖怪である。