「何となく見れば分かるんだよね。洞察力にはちょっとした自信があるから、さ」
まだ彼の深層心理に深くは踏み込まない。慌てなくても時間はあるのだから、ゆっくりと確実に。そして────。
「先輩は雪って、好き?」
※本記事は本作のネタバレが含まれます。
プロフィール
概要
2年生編から登場。高度育成高等学校の新入生で1年Cクラスに所属する女子生徒。
気だるげな雰囲気を漂わせる女子生徒でギャルっぽい外見をしている。口数は少なめで、基本的に無表情。OAA上の成績にも目立つ点はないが、頭の回転自体は早く、特に洞察力の高さを自負している。
入学後は基本的にクラスのリーダーである宇都宮陸と行動を共にする。
他の1年生に比べて、未だに物語上の正体が判明していないこともあり、謎が多い。
人物
髪型や容姿はギャルっぽく、服装も制服の下にパーカーを着たり、逆にジップ式パーカーを羽織ったりしているが、私服は大人びたワンピースだったりする。
コンビニに立ち寄ったら何かを買うのが礼儀と考えるなど、律儀な面が窺える一方で、目的のためには脅迫紛いの手段を厭わない時もある。実際、八神から情報を聞き出したり、佐藤の行動を誘導したりするために脅迫行為に及んだ。
相手との信頼を築くことを苦手としており、宇都宮のような信頼のおける人間がいないと自然な雑談を続けることは難しい。
綾小路清隆に対して強い関心を抱いているが、その真意は未だ不明。
実力
OAA評価はどれもD+かC-でこれといった特徴は見られず、中の下といった所。しかし、1年生の戦いでは時折核心を突いた発言をするなど、成績には現れにくい能力を持ち合わせている。
本人も自負しているように洞察力に関しては作中でも屈指の高さを誇り、綾小路でさえも見抜けていなかったあの人の本性をほぼ見抜き、見事に動揺を誘っている。
クラス戦では、宇都宮がリーダーの役割を担っており、表に出ることは少ないが、参謀のような立ち位置で宇都宮をも動かしていると予想される。綾小路の退学が絡む試験では宇都宮を使いつつ、積極的に指揮官のような行動も取る。無人島サバイバルでは綾小路を強引にリタイアさせる作戦を指揮し、協力者の移動ルートを的確に指示した。
上級生の綾小路、軽井沢恵、佐藤麻耶の恋愛事情を把握していたり、綾小路の行動を探ったりと情報収集力は高い。また、尾行スキルにも長けていて、カフェで対象者を観察する際の適切な位置取りを自然に行える点を綾小路から評価されている。さらに、情報の分析力やその知識にも優れている。無人島サバイバルでは、一定時間ごとに取得したGPS情報を元に綾小路のテーブルを特定した八神拓也の方法を即座に看破した。
身体能力に関してOAA上の評価を超えるような行動は確認できておらず、宝泉和臣に対して言った「喧嘩では逆立ちしても勝てないけど、頭は別」という言葉に現時点では矛盾は見られない。
強いて言うなら、佐藤に接触した際に発揮した身軽な身体能力だが、誰かと戦ったわけでもないため、どうとでも解釈できる。
略歴(ネタバレ注意)
2年生編1巻で初登場。新学期が始まって間もなくの特別試験でのパートナー探しのため、綾小路は休日のケヤキモールに向かう。そこで声を掛けてきたのが宇都宮と椿だった。宇都宮は椿のパートナーとなる2年生を探していて、綾小路にパートナーの相談を持ち掛ける。
宇都宮たちの話を聞いてみるが、綾小路を退学させるために潜入しているホワイトルーム生の偽装成績パターンと椿のものが酷似していたこともあり、綾小路はパートナー候補がいるということで宇都宮たちの提案を断った。それを聞いた宇都宮はパートナー候補を聞き出そうと食い下がるが、椿はそれを止めて他の2年生を探しに行く。
2巻では、櫛田桔梗を介して八神が話し合いの場をセッティングし、綾小路はケヤキモールのカフェに向かう。綾小路の退学を勝利条件とする特別試験について八神から聞かされている途中、椿がカフェに入ってきて誰かと連絡を取りながら八神の方を観察し始める。
八神の話が終わり、コンビニに立ち寄っていた綾小路に椿が声を掛けてくる。コンビニの外で待つも、椿は一向に会話を始めようとしない。少しして合流してきた宇都宮に話を聞くと、話題は綾小路の想像外のものだった。クラスメイトの仇を取るため、無人島での特別試験で宝泉を退学させることに協力して欲しい、と。綾小路がその提案の不自然さを指摘すると、椿が目を合わせて尋ねる。
「その左手の傷は宝泉くんとやり合ったときにできたものじゃないんですか?」
椿は綾小路の退学を狙っていたことも打ち明け、宇都宮のフォローをしていく。綾小路はここで初めて椿の頭脳が宇都宮より優れている可能性に気づいた。
宝泉を退学させたいだけだと宇都宮は強調し、椿と一緒に帰っていくが、綾小路は1年Cクラスの真意が掴めないという感想を持った。
3巻の無人島サバイバル前、試験6日目に1年生各クラスの代表者で集合することを提案。椿以外の代表者はAクラスの高橋修、Bクラスの八神、Cクラスの宇都宮、Dクラスの宝泉だったが、宝泉は時間になっても姿を見せない。
高橋が腹痛で森の中に消えると、八神が話を切り出し、椿に集合の真意を尋ねる。綾小路を退学させる試験に関して、互いの動向を探り合った末に、椿は櫛田の身の危険を示唆したり、宇都宮を使って拘束したりして八神を脅迫。八神の作戦の要であった櫛田の過去を聞き出した。
4巻、無人島サバイバル試験13日目、椿を指揮官として1年生たちは全クラス合同で綾小路をリタイアに追い込む作戦を展開する。綾小路の指定エリアを妨害することに成功するも、中心メンバーだった八神と宇都宮がそれぞれの思惑で椿の計画を失敗させるべく動いていたため、宝泉と綾小路の直接対決は実現せず、作戦は失敗に終わる。
椿は綾小路の強い警戒心や自分自身が仲間を信用できていないことを失敗要因に挙げ、1人で作戦をやるべきだったと強く後悔した。
6巻では、体育祭が近づいたある日、ケヤキモール内の女子トイレの前にいた佐藤に声を掛ける。軽井沢が退学したら綾小路との関係が進展すると佐藤を唆し、詳しい話を知りたければ寮の部屋に来るように伝えた。
7巻の文化祭終了後、綾小路の知らない番号から着信があり、通話に応じると椿だった。校舎玄関の外で落ち合うと、椿は八神が退学したことを話し、綾小路に感謝を伝える。
やり取りをしているうちに全てを仕組んだのは椿ではないと綾小路は確信する。椿は綾小路とのやり取りを宇都宮と通話状態のある人物に任せた。
11巻の交流合宿では、綾小路と同じグループになるも当初は接触しなかった。しかし合宿最終日、橋本正義から綾小路が早朝に出掛けているという話を聞きつけ、綾小路の前に現れる。その際に、綾小路を退学させる特別試験がなくなったことを残念に思っている心中を明かし、「雪は好きか?」、「もし親に存在を秘匿されていた兄(姉)がある日、いきなり現れたらどう思うか?」などと問いかけている。しかし綾小路と待ち合わせていた堀北鈴音らが現れたことで立ち去る。
人間関係
理由や目的は不明だが、深層心理に踏み込むことを考えたり、綾小路を退学させる試験に積極的に参加したりと関心の強さが窺える。
無人島サバイバルで綾小路をリタイアに追い込む作戦を指揮した人物として坂柳から一方的に認識されている。
クラスメイトの波田野を退学させた犯人として当初疑っていた人物。無人島サバイバルでは綾小路をリタイアさせる役目を与え、その準備を整えることと交換条件で作戦に協力させた。
クラスメイト。1年生の中で唯一信頼をおける存在だと認めていて、共に行動することが多い。綾小路を退学させる特別試験には宇都宮を繰り返し説得して参加した。
綾小路を退学させるピースとして櫛田に目を付けていた八神に疑問を抱き、2人の関係性を探った。そこで得た情報を元に脅迫して八神の作戦を聞き出そうとし、八神から「単なる生徒ではない」という感想を持たれる。無人島サバイバルでは作戦への参加を認めるものの、全く信用しておらず、本人の前でもそれを隠さなかった。
クラスメイトの波田野を退学させた真犯人を教えてもらった。宇都宮とともに真犯人の排除に協力した。
余談
0巻で登場した綾小路と同期の「雪」という名のホワイトルーム生との関係が読者の間で予想されている。以下が主な理由。
- 雪の口絵でのビジュアルが椿と似ている
- 雪に妹が存在する
- 雪の好きな花が「桜」である
- 雪は綾小路のことを心配していて、椿は綾小路に強い関心を持つ
- 雪椿という名の花が存在する
- 椿の花言葉は『私の運命はあなたの手に』。雪椿の花言葉は『変わらない愛』
その後、11巻の交流合宿における先述の発言により、雪の妹とする説が濃厚となった。