横光利一
よこみつりいち
横光利一(よこみつりいち)は日本の小説家。その理知的な文章力から文学の神様だとか小説の神様だとか言われた。本名は横光利一(としかず)。
川端康成とともに新感覚派(当時の批評家が命名)の一人として知られる。なお、文豪とアルケミストの横光利一は当該記事を参照。
福島県奥会津の生まれだが、父親が敏腕の鉄道設計技師であったため、小学校は滋賀県の大津、中学校は三重、高校は兵庫で暮らしている。その後親の反対を押し切り、早稲田大学に入学。文学には高校時に目覚め、ドストエフスキーに傾倒し、夏目漱石や志賀直哉の影響を受けるが、スポーツ万能の文武両道でもあった。
早稲田在学中に初恋の交際相手がスペイン風邪で急逝、精神を病んでしまい休学。姉が近くに住む京都の山科で療養がてら、書生を目指していた。そんなとき、親友との縁があって菊池寛を紹介され、後の朋友、川端康成と出会う。また、その頃に創作した作品が『蠅』や『日輪』であり、才能の片鱗を見せていたが、当時は全く名が売れなかった。
菊池寛が『文藝春秋』を創刊すると、ずっと温めていた『日輪』を発表、川端康成とともに同誌を代表する存在となる。その後は母や妻の死去、関東大震災という不幸に見舞われながらも、川端らと共に同人誌『文学』を創刊し、代表作『機械』を発表、斬新な描写は多くの評判を得る。
その後フランス訪問体験を期に、西洋と東洋の文化比較をベースにした長編『旅愁』を発表するが長編ゆえに戦局が変わり、未完のまま掲載を中断。また、これが戦後になってGHQの検閲に引っかかり、不本意な改訂を強請されてしまう。この心労が祟り、戦後まもなくして病死した。
なお、これについて角川文庫のみ検閲改訂前の版を発表している(青空文庫は改訂後の講談社版)。
死後、横光利一の偉業が再評価され、当時は皮肉で呼ばれていた文学の神様という称号も、今は好意的な意味で用いられている。
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