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江水散花雪

こうすいさんかのゆき

ブラウザゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を原作としたミュージカル『刀剣乱舞』の第9作目
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概要編集

2015年10月より始動している『刀剣乱舞-ONLINE-』を原案としたミュージカル作品、ミュージカル『刀剣乱舞』(通称:刀ミュ)の第9作目にあたる作品。

本作では和泉守兼定、大包平、小竜景光、山姥切国広、南泉一文字、肥前忠広の6振が、改変されてゆく歴史の顛末を見届ける物語が描かれている。


あらすじ編集

大包平、小竜景光、南泉一文字の三振は遠征任務において、幕末へと飛ぶ。

雪がちらつき、夜鳴きそばの鈴の音が聞こえる江戸城下。そこで一人の男が時間遡行軍に襲撃されている所を助けるが、更にもう一人、時間遡行軍に追われる若者がいた。

一行は袋小路に追い詰められるも、若者の発案によって状況を打破する事に成功。ようやく安堵した所で、二人の人間は互いを名乗る。


井伊掃部頭直弼──近江彦根藩十五代藩主、後の大老。

吉田大次郎──長州藩士、松陰と号し尊王攘夷を謳った志士。


正しい歴史とは異なる形で出会った二人は、この事件をきっかけに意気投合し、友誼を結んだ。

二人が改変の鍵となると考えた刀剣男士達だが、時間遡行軍の目的が解らない以上、現状では様子見しか出来ない。

そこで小竜が大次郎の従者となり、その旅に同行。大包平と南泉は直弼の客分となり、彦根へと招待された。


本丸では、山姥切国広が審神者と対面し、事の次第について話し合っていた。

増援として幕末に向かう事となった山姥切は「放棄された世界」に詳しい者の同行を審神者に希望すると、先に政府の先行調査員をつとめた肥前忠広が呼ばれる。

共に幕末へと降り立つ二振だったが、何故か山姥切は事態を傍観して傘張りに草鞋編み、遂には浮世絵師と、内職で時間を潰すに留まる。その真意が解らない事に苛立ちながらも、旅に出て独自に調査を開始する肥前であった。


水戸学の権威である会沢正志斎から「諸外国の脅威を退け、日本を強くする方法」を教わった大次郎は、この国の将来を良きものにしようと励んでいた。だが長州藩を脱藩した形となり、切腹どころでは済まない事態になってしまう。

そんな大次郎の処遇を憂慮した直弼は、毛利家と談判して助命。更には自分の家臣にするよう願い、これを取り付けてしまった。

これにより安政の大獄が起きる事もなく、大次郎が吉田松陰として死ぬことはなくなった。


ただ一時の出会いから、歴史は徐々にその流れを変えていく……


嘉永7年。日米和親条約締結のためにペリーが再び黒船に乗って姿を見せ、大次郎は渡米の希望を抱いて密航しようとしていた。

山姥切に呼び出される形で浦賀に結集した刀剣男士だったが、時間遡行軍の数は多く、数に押されて劣勢となる。

その時、突如として現れ、瞬く間に敵を斬り倒す姿が一つ。それは修行を終え、極の姿となった和泉守兼定であった。本丸に帰還した直後に審神者から増援として寄越された和泉守の姿に奮起し、時間遡行軍を打ち倒す刀剣男士。


その後、一同はそれぞれが持つ情報を示し合わせ、現状を把握する。

本来の歴史から改変が進んだこの歴史では、将軍の後継者問題や粛清が起きず、流れる血もない。今や大次郎を右腕とした直弼はその辣腕を振るい、諸外国との間に次々に条約を結び、国を開く事で技術や知識を受け入れ、日本を強い国に変えていこうとする。

南泉は「それは……いい事なんじゃないか?」と発言して一同をずっこけさせるが、確かにその一面を見ればその通りではあった。


その後も刀剣男士が介入する余地はなく、改変は進行。

思い余った肥前は「天誅」と称し、自らの手で歴史通りに要人が暗殺される道を選んだ。その一部始終を見ていた和泉守は「好きなようにやってみろ」と告げ、立ち去る。

肥前はその後も天誅を繰り返し、とある幕府の重要人物を襲撃するに至る。ところがそこで警護についていた男と衝撃的な出会いを果たし、本人ばかりか刀としての自分をも否定する言葉に激しく動揺する。


そして遂に「第十四代」将軍・徳川慶喜は、政を朝廷へ返上。大政奉還へと至った。

新たな時代の到来に世間はお祭り騒ぎとなり、「ええじゃないか」と踊り狂う人々がそこかしこで見られる。

だが、次の瞬間──


部隊編成編集


歴史人物編集

後の大老。十四男という、家督から遠い位置で「埋木」となっていたが、運命のいたずらか嫡子に据えられ、彦根藩主となった。

時間遡行軍に襲われていた所を助けられ、大包平と南泉一文字こと「包平」「猫丸」を客分として招待。特に「おっさん」と呼んで懐く南泉を可愛がる。藩祖・井伊直政が遺したとされる言葉を継承しており、平和な世を願い続けていた。

長州藩士。吉田大次郎とも。剣の腕はお世辞にも強くないが、やる気だけはある。

本来の歴史では松下村塾にて多くの志士を育て、新たなる日本を夢見た男。安政の大獄で死罪となる筈だったが、それより前に井伊直弼と出会い意気投合した事で歴史が変わってしまう。英明な頭脳を持ち、改変された歴史における直弼の右腕となったが……

  • 会沢正志斎(犬飼淳治)

水戸藩士、水戸学藤田派の老学者。尊王攘夷を唱えた著書『新論』に感銘を受けた大次郎の訪問を受けるが、いかめしげな風貌からは想像も出来ないノリの軽さを見せて「尊王攘夷は古いッショ!」と断言。「あっぷでえと」した見識をもってこの国の未来に必要なものを告げ、大次郎に大いなる影響を与える。

誰が言ったか「第二の榎本武揚」と評された水戸学ミュージカルは必見。

なお演じた犬飼氏はこのほかにもアメリカ公使ハリス、穢多頭・弾左衛門、勝海舟を演じており、スペシャルMVでも夜鳴きそばの店主を演じている。

  • 岡田以蔵(きたつとむ)※アンサンブルも兼任

肥前忠広の元主。後の世に「人斬り以蔵」の名で伝わった男だが、改変世界の影響で学を得てまっとうな性格の侍となっている。勝海舟を襲撃した肥前に「人を斬って何になるというのです!」と諭し、激しく動揺させた。

終盤、放棄された世界に取り残されて発狂。あらゆるものに襲いかかる中で再び肥前と出会い……


このほかアンサンブルが演じた歴史人物は以下の通り。

  • 徳川家茂・徳川斉昭・一橋慶喜
  • 梅田雲浜(儒学者、安政の大獄で獄死)
  • 小栗又一(幕末の外交に関与した幕臣)
  • 橋本左内(福井藩、安政の大獄で死罪)
  • 有村次左衛門(薩摩藩、桜田門外の変に参加)
  • 江藤新平(佐賀藩、西南戦争で戦死)
  • 金子孫二郎(水戸藩、桜田門外の変に関与)
  • 武市半平太(土佐藩、土佐勤皇党盟主)
  • 高杉晋作(長州藩、尊王攘夷志士)

余談編集

タイトルの「江水散花雪」は、幕末~明治の浮世絵師・月岡芳年が描いた浮世絵。

桜田門外の変を題材にしたもので、芳年の代表作の一つに数えられる。


刀ミュにおいて「改変された歴史はどうなるか」を初めて描いた作品。

ゲームや刀ステにおいて「特命調査」としてたびたび語られていた「放棄された世界」という名の地獄絵図に、観客は頭を抱える事となった。

任務が失敗扱いとなった為か、第二部ラストで「誉」が出ていない。


実は本作においてこの本丸にはかつて折れてしまった刀がいる事、それは山姥切国広が部隊長の折に起きた事が明らかになっている。

また、並行して刀ミュ本丸では未だに初期刀・・・所謂「始まりの刀」が誰なのか不明の状態 (最初の演目で登場した加州清光は違うことが脚本家から明言されている)であり、審神者の中にはこの刀がそうではないかとする考案がある。

そして初期刀組の登場順番を踏まえると、これらに該当するのは・・・


刀剣男士が極の姿で登場したのは、単騎出陣のにっかり青江以来、2振目となる。

公演前・公演中の和泉守兼定のビジュアルは極前となっており、終演後に極の姿に差し替えられた。


公演中、小竜景光役の長田光平の負傷により、演出変更に伴って大阪公演の2月11日~13日が上演中止となった。

その後、第一部ではアンサンブルキャスト及びアンダースタディの兵藤結也が小竜景光役を黒装束・黒ウィッグ・黒マスクでつとめ、裏で長田氏が声を充てるという演出になった。

一方で、ライブパートの第二部では負担がかからないよう演出を変更し、限られたステージングながら本人が登場している。

この黒い小竜について、公式には「小竜景光(影)」と記された。他にも「影打」という非公式の名称があり、上演終了後にアップされる演者のTwitterの写真でも、たびたび小竜と「影」とのツーショットが挙げられた。

大千秋楽のカーテンコールでは、長田氏が涙ぐんで言葉に詰まる一幕もあったが、役を貫いて感謝の言葉を述べ、客席からは温かい拍手が送られた。

なおDVD/Blu-rayでは、初日公演と大千秋楽公演の両方が収録。2022年6月14日からのアーカイブ配信でも、2つの公演がそれぞれ個別に配信された。


「真剣乱舞祭2022」では、会場変わり(福岡・広島)の山姥切以外が全員通しで参戦。小竜も引き続き、負担をかけない演出で登場している。

小竜の髪紐が本来と異なり黒を用いている場面があり、そこに「影」の存在を感じてグッと来る審神者も。また東京公演では「江水」第一部ラストを飾った楽曲「14th (one-fourth) son」が通しで初披露された。


CD「お前が知ってる」初回限定版に収録されたスペシャルMVでは、本編が終わった後のちょっとした続きが描写された。

約束通り夜鳴きそばを山姥切のおごりで平らげた一同が立ち去る中、振り返った小竜が見たのは……


関連動画編集


関連項目編集

刀剣乱舞

刀ミュ


前作→東京心覚

次回作→花影ゆれる砥水

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