東京心覚
とうきょうこころおぼえ
2015年10月より始動している『刀剣乱舞-ONLINE-』を原案としたミュージカル作品、ミュージカル『刀剣乱舞』(通称:刀ミュ)の第8作目にあたる作品。
本作では水心子正秀を中心に、源清麿、大典太光世、ソハヤノツルキ、豊前江、桑名江、五月雨江、村雲江の8振が「東京」を舞台としたさまざまな時代に飛ぶ群像劇が描かれている。
信号機が「とおりゃんせ」を歌い、人々が行き交う、現代の東京。
見慣れぬ光景に立ちすくみ、心ここにあらずといった風の水心子正秀。
そんな彼の前に、月の光の下で零れ落ちる砂と共に、能面をつけた少女が現れる。
無言で舞い踊る彼女は何者なのか──近づこうとした水心子だったが、自分の名を呼ぶ清麿によって彼は現実へと引き戻される。
本丸に顕現して後、水心子は自我がおぼつかなくなるほど心を逸らす事しばしばだった。
それを懸念する清麿であったが、審神者はそれに対する答えを出す事は出来ない。
そうした中で刀剣男士達は、かつて「江戸」と呼ばれた「東京」の、様々な時代へ飛び、戦う。
平安。坂東武者がその覇を競う中で「新皇」を名乗り乱を起こした平将門。
室町。数多の民を率いて要となる城を築き上げ、「江戸」を興した太田道灌。
江戸。徳川家康を支え、江戸の霊的守護を完成させる為に奔走した南光坊天海。
幕末。江戸城無血開城へと道筋をつけ、新たなる時代を迎え入れた勝海舟。
そして遠い未来。行き交う人が絶え、一面に広がる廃墟……
時系列は複雑に絡み合い、確かな言葉で語られる機会を持たないまま、やがて刀剣男士は水面に浮かぶ月と対峙する。
そこで知らされた、彼らの負うべき役目。そして、今この時代において出来る事。
それは……
- 平将門(川隅美慎)
坂東の地において「新皇」を名乗り乱を起こした男。死後に怨霊として恐れられ、江戸を鎮護する神として祀られる。豪放磊落の性分を誇り、「友」を名乗り近づいた男の誘いを一蹴する気概を持つ。何故乱を起こしたのかという問いに対するその答えは、あまりにも明快なものだった。
- 太田道灌(有馬自由)
東夷の地に城を築き、後の江戸の要を作った名将。気さくな人柄で親しまれ、自らも人足と共に石を運び、共に汗を流す。その姿を、豊前江は「大将」と呼んで親しみ、好ましく感じた。後に卓越した才を危険視した主家によって暗殺されそうになり……
- 南光坊天海(三上市朗)
齢百を超えなお矍鑠とした高僧。徳川家康の忠臣として、主が望んだ「子守唄の絶えぬ平和な時代」を実現すべく、江戸の霊的守護を完成させんと奔走。ソハヤ曰く「ネコマタならぬヒトマタ」で、人でありながら時間遡行軍と渡り合う法力を持つ。
- 勝海舟(三上市朗)
幕末における幕臣。気風のいい江戸っ子で、剣の腕は立つが流血を嫌い、自ら刀を抜く事はない。西郷隆盛との会談において江戸城無血開城を実現させ、これが江戸の終焉、そして東京の誕生となる。
- 少女(松島朱里/及川結依)
水心子の前に姿を見せる、能面(小面)をつけた少女。様々な時代の様々な存在として登場するが、決して言葉を発する事はない。
出陣する刀剣男士は過去最多の8振となっている。
そのうち村雲江は本家ゲーム実装から通算3日目でステージデビューを飾る事になった。
名前のあるキャラクターではなく、台詞もないが、刀ミュでは初となる女性キャストが採用されている。
従来の作品とは大幅に異なった演出や抽象的な物語は、初見の観客をおおいに混乱させた。
事実、初日配信では豊前江の台詞をとった「わっかんねー」がTwitterトレンド入りするほどで、賛否両論の声が上がった。
しかしこれに対して様々な考察が上がり、作中にちりばめられた描写や歌から、独自の解釈を下すという楽しみを見出す者もいる。
声を発して応援したり、誰もが気軽に劇場に足を運ぶ事の出来ない時世における、刀ミュの新たな転換点となった。
日本三大怨霊に数えられ、現代でも畏怖をもって語られる平将門の登場は、界隈の内外を問わず驚きと、恐れをもって語られる事象に対する懸念をもって迎えられた。
しかし作中で見せた「人間」としての心の強さや、七体の分身と共に刀剣男士と戦う勇姿に魅了される観客は多く、「将門公かっこいい」として評判が上がる。ともすれば怨霊としてのとらえ方が強い現状の認識に、新たな動きを見せた。
その後、将門は少女と共に「真剣乱舞祭2022」に出陣。
冒頭の「神送り」では、吹き荒れる嵐に足止めされる刀剣男士を鼓舞するが如く歌い、荒魂と呼ぶに相応しい豪快な舞を見せる。そして彼岸と此岸の狭間にて榎本武揚と邂逅、時に興じ、時に共闘する。
そして終盤で「貴様は我をどう見た!怨霊か?神か?」と問い、対峙した水心子の答えを受けて呵々大笑。「愉快な祭であった!また……会おうぞ!」と宣言し、去っていった。
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