概要
任天堂から発売されたコマンド選択型テキストアドベンチャーゲーム。ファミリーコンピュータ ディスクシステムで1988年4月27日に前編、同年6月14日に後編が発売された。
元は『ファミコン少年探偵団』というタイトルで企画が進められていた。1987年12月1日にファミリーコンピュータ ディスクシステムで発売されたアドベンチャーゲーム『中山美穂のトキメキハイスクール』のディレクターとシナリオを担当した坂本賀勇氏が続投する形で制作。坂本氏いわく、様々な制約を受けて開発が難航した『中山美穂のトキメキハイスクール』の欲求不満を解消することを目的に作り上げたという。
ストーリー
主人公は崖の下の草むらで倒れていた。天地(あまち)と呼ばれる男の声によって目を覚ます主人公だが、彼は自らの名前を始めとする記憶を失ってしまっていた。
後に自分が倒れていた現場に戻った主人公は、1人の少女・橘あゆみと出会う。彼女から自分が空木探偵事務所に所属する探偵助手であることを知り、名前も思い出すことができた主人公は、事務所に残された「明神村 綾城」と書かれたメモを頼りに明神村へと向かう。
「綾城とは明神村の資産家「綾城家」のことでは?」と、現地の駅員から聞いた主人公は屋敷へと訪問。そこで執事の田辺善蔵から当主の綾城キクの死にまつわる依頼を受けていたことを思い出す。そして主人公はキクの調査を再開し、事の真相へと迫っていく。
登場人物
声はNintendo Switchのリメイク版のもの。
空木探偵事務所の探偵助手。17歳。綾城家の執事・善蔵からの依頼で綾城キクの不審な死を調査していた矢先に事故に遭い、記憶を失う。
主人公と同じ空木探偵事務所の探偵助手。17歳。綾城商事を始め、主人公が関われない明神村以外の調査を担当する。
- 空木俊介(うつぎ しゅんすけ)
空木探偵事務所の所長。38歳。警察から厚い信頼を得ている敏腕探偵。本作では出張中であることから、名前以外は登場しない。
- 天地(あまち)(声:杉田智和)
海上の崖で主人公を助けてくれた38歳の男性。大里市のマンションで一人暮らしをしている。記憶をなくした主人公のことを心配しており、調査について度々アドバイスしてくれる。
- 田辺善蔵(たなべぜんぞう)(声:樋浦勉)
綾城家の執事。76歳。キクの死に疑問を持ち、主人公に調査を依頼した人物。
- 綾城キク(あやしろキク)(声:宮沢きよこ)
綾城家の当主。綾城商事の会長だったが、心不全による謎の死を遂げる。享年78歳。生前はヘビースモーカーであり、夫である綾城徳兵衛(あやしろとくべえ)の強引な経営手法に心を痛めていたとされる。
- 綾城完治(あやしろかんじ)(声:木下浩之)
綾城商事の社長で、綾城家の先代当主・徳兵衛の弟である完兵衛の長男。58歳。あずさによれば、財産よりも綾城商事の運営に魅力を感じているらしい。キクと同じくヘビースモーカー。妻はファッションデザイナーの綾城香で、一人息子として綾城アキラがいる。
旧姓・綾城。完治の妹で、二郎の姉で40歳。春日家に嫁いだが、キクや完治に借金をしていることから、綾城家の遺産をあてにしている。兄、弟と同じくヘビースモーカーだが、現在は喉を傷めたことから禁煙中。
- 綾城二郎(あやしろじろう)(声:堀内賢雄)
綾城商事の専務。39歳。完治とあずさの弟で、キクの死により、完治が会社の実権を握っていることから苦しい立場に置かれている。キク、兄姉同様、彼もまたヘビースモーカーである。
キクの一人娘。20年前に家を飛び出し、行方不明になっている。失踪当時24歳。ディスクシステム版ではあずさ、香と同じ年齢だったが、Nintendo Switchのリメイク版では5歳年上に変更された。
- 山崎茜(やまざきあかね)(声:石飛恵里花)
キクに可愛がられていたお手伝いの女性。19歳。キクの遺体を最初に発見した人物。それまでは明るい性格だったが、キクの死後からは沈み込んでいる。
- 熊田医師(くまだいし)(声:岩崎ひろし)
明神村唯一の医師で、キクの主治医。熊田医院という病院を経営している。63歳。主人公の捜査に協力し、殺人現場においてはその検証に立ち会う。美人の女性が大好きな一面があり、そのために病院を突如休業して飛び出すほどの行動力を持つ。台詞の語尾に「ぢゃ」とつくのが特徴。
- 玄信(げんしん)(声:塾一久)
明神村の神楽寺(かぐらでら)の住職。87歳。キクとは古くからの親しい間柄だった。村の伝承に詳しく、主人公に「死人甦り」の伝説を教えてくれる。
- 駅員(えきいん)(声:千葉繁)
明神村の駅員。推定年齢40代。明神村にやってきた主人公に綾城家や、村の中で起きている出来事を教えてくれる。本人によれば顔には自信があるという。
- 看護婦(かんごふ)(声:佐藤舞)
熊田医院に勤務する看護婦。自由奔放に行動する熊田に手を焼いている。ディスクシステム版では立ち絵が存在しなかったが、Nintendo Switchのリメイク版で新たに描きおこされた。さらにディスクシステム版では、進め方次第では一切登場せずに終わってしまうことがあったが、Nintendo Switchのリメイク版では出番が大幅に増え、そのようなことが起きなくなっている。
- 藤宮由紀子(ふじみやゆきこ)(声:小清水亜美)
海上の崖に現れる推定年齢27~28歳の謎の女性。恋人がおり、その帰りを待っている。
- 神田恭之介(かんだきょうのすけ)(声:???)
綾城商事の顧問弁護士で相談役。キクが亡くなる直前に遺言書の作成に協力。また、キクの死に疑問を抱いていた善蔵に空木探偵事務所に勤務する探偵助手の主人公を紹介した。秘書によれば、仕事熱心な人物であるという。ディスクシステム版では「神田弁護士」という名前だったが、Nintendo Switchのリメイク版でフルネームが設定された。
ゲームシステム
「ばしょいどう」「きく」「よぶ」「とる」「しらべる」といったコマンドを選んで、キャラクターたちと会話したり、現在いる場所の調査を通しながらストーリーを進めていく。
コマンドの中には「おもいだす」というものもあり、それまでの調査を経て分かった情報を整理したり、忘れていたことを思い出すことができる。場面によっては、思い出すことによってストーリーが進展を見せることもある。
リメイク版
2021年5月14日、続編『ファミコン探偵倶楽部PARTII うしろに立つ少女』とセットでNintendo Switch向けにリメイクされた。科学ADVシリーズで知られるMAGES.が開発。続編『うしろに立つ少女』は1998年、スーパーファミコン向けにリメイクされたが、『消えた後継者』はされることはなく、Nintendo Switch版が初のリメイクとなった。
基本システムは原作を踏襲しつつ、台詞の早送り、既読スキップ、あらすじなどの便利機能が追加。グラフィック、サウンドも全面的に一新されたほか、キャラクターたちはフルボイスで喋るようになった(オプションでOFFにすることも可能)。また、音源をディスクシステム版のものに変更できる機能を用意。クリア後特典として「音楽鑑賞」も用意されている。
『うしろに立つ少女』はスーパーファミコンでのリメイクに当たり、3D迷路などの一部要素のカットや新曲の追加も図られていたが、こちらは原作をほぼそのまま現代風にした形となっている。
ただし、熊田医院の看護婦を始め、原作では姿形が無かったキャラクターに新規の立ち絵が起こされたり、ストーリーが章仕立てになるといった、スーパーファミコン版を踏まえた変更点がある。
一部、キャラクターの扱いも多少変わっており、先の熊田医院の看護婦は原作以上に出番が増えている。既存キャラクターでも綾城キクを始め、新たに回想シーンなどが用意された。
余談
- スーパーファミコン版『うしろに立つ少女』には原作のディスクシステム版同様、エンディングに『消えた後継者』へと繋がるシーンが存在し、当時からリメイクが期待されていた。しかし、発売されることはなく、Nintendo Switch版まで23年の時を要することになった。
- 初移植は2004年8月10日にゲームボーイアドバンスで発売された『ファミコンミニ ディスクシステムセレクション』。『うしろに立つ少女』と一緒に発売され、前後編がひとまとめになっている。当時のレーティングはA(全年齢対象)。Nintendo Switch版でC(15歳以上対象)に引き上げられた。
- シナリオを担当した坂本氏は制作当時、『犬神家の一族』と『悪魔の手毬唄』ぐらいしか推理小説を読んだことがなかったという。そのため、全体的に両作品を執筆した横溝正史の色が強く反映されている。それにちなんでか、Nintendo Switchのリメイク版にはとある登場人物が金田一耕助のコスプレを披露するシーンが追加されている。
- Nintendo Switchリメイク版「COLLECTOR'S EDITION」同梱の調査ファイルには、当時の坂本氏が原稿用紙に執筆した手書きのプロットが掲載されている。
関連動画
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