概要
東方Projectに登場する稀神サグメにまつわる二次創作におけるアプローチの一つであり、サグメに関連した「白」が「黒」へと逆転した様子である。
なお「クロサギ」には鳥類の「クロサギ」(※1)と魚類の「クロサギ」(※2)があるが、サグメにまつわる「鷺」が鳥のそれを指し示すものと思われるため、本タグが示すところの「黒鷺」も主に鳥類のそれを想定したものと思われる。
※1:鳥類の「クロサギ」…ペリカン目サギ科クロサギ。旧コウノトリ目。
※2:魚類の「クロサギ」…スズキ目クロサギ科クロサギ。白身魚。
白のサグメと黒のサグメ
サグメは初登場した『東方紺珠伝』では服装こそブラウスや特徴的なスカートにみる紫色が目を引くものの、その髪や翼は灰色から白色のカラーであり、同作で描かれた範囲においてはサグメ本人については白をベースとしたカラーが主体である。
サグメについては先の<「片翼の白鷺」>もあって「白」のイメージで語られることも多い。
このことが「白」と対比されるカラーである「黒」を主体としたサグメの想像にも繋がり、pixivにおいてもその姿は「片翼の黒鷺」として結ばれているのである。
そのアプローチとしては白い翼のサグメを黒を基調とした姿で描いてみるというデザイン的なものと、「白」から「黒」へと転じるというストーリーを基盤にしたものなどがある。
後者の場合、一般に「白」のイメージが「黒」のイメージへと転換する所謂「悪堕ち」などの象徴と重ねられることも多い。そのニュアンスは純粋悪への転換をはじめ悪役への転換やダークヒーローへの転換など創作ごとに多様であるが、同様の多様さが「片翼の黒鷺」にも見られている。
元々「白」にして「騙す者」、天邪鬼としての二面性とも関連した「 詐欺 」の要素も含むサグメ(ZUN、『東方外來韋編』)にあって、「片翼の黒鷺」は、大本のサグメの姿と重ねることでサグメという存在をより深く映えさせるものであるともいえるかもしれない。
なお、「黒」を「ブラック」(比喩やスラングとしてのもの)として理解するとき、『紺珠伝』において攻撃にさらされていた実際の月の都において具体的に防衛にあたる姿が描かれたのがサグメ一人であった様子から、サグメ本人ではなくサグメの境遇について「ブラック」な社会に身を置くものと例えるものもある。
その姿は高い地位にありながらもいざ有事となれば単身で最前線を担わざるを得ない、箝口令下のナイーブな情報管理に身を置く組織幹部や高級管理職の姿と重なるようである。
「黒鷺」が身を置く世界にもまた、独特の「クロ」が蠢いているのだと見出すアプローチといえるだろう。
「シロサギ」と「クロサギ」
以下の記述は「片翼の黒鷺」にも関連して、生物(鳥類)としての二つの「サギ」にまつわる記述である。
「白鷺」(「シロサギ」)とは「羽色などが白色の鷺」全般を指す語であり、生物学的分類や特定のサギ、サギの品種などを指す語ではない。
一方「黒鷺」(「クロサギ」)は先述の注に示したようにペリカン目サギ科クロサギ(学名は「Egretta sacra」)という種の一つである。
クロサギは日本を含む東アジア、東南アジア、オセアニア、ミクロネシア(海洋分類としてのもの)などに分布する。分布のうち、日本列島本州(関東)が最北圏の一部に符号している(2015年現在)。
種の和名にも繋がる羽色は薄い黒墨の色にも例えられるが、一方で白い羽による「白いクロサギ」もある。両者は主に嘴の形状(他のサギよりも太くて長め)や足の形状、体格などにその違いを見ることができる。
また群れ行動の様子や生息圏(淡水や塩水他あるいはいずれも生息圏であるかなど)にも違いがあるなど、一般的な白いサギとクロサギには大きな違いもあるようである。
ただし、やはり一見しただけでは「一般的な白いサギ」と「白いクロサギ」を見分けるのは難しい様子でもある。
注意深い観察と吟味、見分けるための知識を要する「白いクロサギ」は、その告げる言葉を裏腹にして真逆の運命への逆転をもたらすサグメにも象徴的に共感するものともいえるだろう。
また「白いクロサギ」を通して見る「クロ」と「白」の属性を帯びる姿もまた二つの側面を同時に備える天邪鬼としてのサグメを垣間見ることにもつながる。
余談ながら、「クロサギ」に関連して京都府が府内の生物の調査や保護を行う目的で調査発行する京都府絶滅危惧レッドデータブック(2015年度及び直前回にあたる2002年度版)ではクロサギは同府では府内絶滅危惧種として指定されている(日本全土を管轄する環境省の指定ではない)。
上海アリス幻樂団作品にはその正確な時系列は不明ながら「京都」が日本首都として登場しているが、この地で活動する、月の都にも臨もうとした秘封倶楽部の二人が京都の海岸や島で「クロサギ」を見ることはあるのだろうか。