概要
東方Projectに登場する稀神サグメに関連した二次創作的アプローチの一つ。
サグメと「食」に関連した創作の在り方である。
サグメは東方Projectにおける月の都に所在し、月は同作の物語が主に語られる今日の幻想郷とは異なる文化様式も持つ。
月の都はその創設の経緯からして地上と心理的にも距離を置く。積極的な交流も行われていない。
その一方、サグメの初登場した『東方紺珠伝』ではサグメとも関連する清蘭や鈴瑚など玉兎らの地上調査部隊や、後にはサグメ本人も地上へと降りており、二次創作ではこの際にサグメが今日の地上の様々な事物と接触する様子が想像されている。
その新しい接触の一つに「地上の食」が想像されている。
月の都の「食」
『紺珠伝』時点ではサグメ個人の食の在り方については語られていないが、サグメの所在する月における昨今の食文化については、例えばサグメの初登場する『紺珠伝』以前に月の物語が語られた『東方儚月抄』に地上世界の味覚との対比も通してその一端が語られている。
例えば同作中での経緯から月の都に滞在した博麗霊夢が、綿月豊姫、綿月依姫の二人が用意した料理に触れるシーンがある。
霊夢によればこのとき提供された月の料理は「 上品な料理 」、「 見たこともないような見事な料理 」であり、その光景を前に霊夢はご機嫌であった。これを建物の外から眺めていた西行寺幽々子もその豪華を「 羨ましい 」としている。
ただし霊夢が実際に口をつけてみると「 味は見た目ほどではない 」とも感じている。
月のお酒も霊夢に振る舞われたが、こちらも地上とは異なる、月ならではの味わいであった様子である。
月の人々の食としては、上記の機会に霊夢と食卓を共にした豊姫が霊夢と同じものを食べている他、豊姫が月の桃を口にする様子やその嗜好を依姫が窘めるなど、時には他者に注意を受けるまでに好みの味わいを愛するという地上同様の食への愛着の在り方ともとれる一幕も描かれている。
「桃」については鈴仙・優曇華院・イナバも月時代を回想して語っており、鈴仙によれば月では位の高い人々は桃を食べるのが普通だったとのこと。ここで言う位の高い人々とは、永琳や輝夜(「 姫様 」)、豊姫、依姫を指す。
また月の食は全般的に「 単調 」とも語った。兎たちの食事は「 適当 」だったともしている。そんな状況にあって、兎たちはついた餅に砂糖をかけて食べることを楽しみにしていた様子である(『東方文果真報』)。
今日の月の文化が描かれる一方で月から地上の文化へと馴染もうとする人々の様子が描かれることもあり、例えばかつて月の人々であった八意永琳や蓬莱山輝夜らは今では地上の人々であり、地上の食に身を置く。『儚月抄』でも永琳や輝夜が地上の食べ物やお酒に触れる様子が描かれている。
また先述の霊夢が体験したような「月の酒」の味わいと「地上の酒」の味わいの違いの感想もまた永琳らを通して『儚月抄』や『東方三月精』においてそれぞれのエピソードを通して語られている。
東方Projectにおける食文化についてはゲーム作品で語られる他に先述の『儚月抄』や『三月精』を
はじめ各種書籍作品でも特に描かれており、中には食、または食材ともなりうるもの一つのエピソードの中心軸となって、そこから東方Projectそのものの世界観へと物語が展開されるなど、多様な「食」の姿が描かれている。
なお、サグメは「食」そのものの要素ではないものの、周辺の要素に「言葉によって世界を変える」能力の比喩または暗喩として食にも関係する器官である「舌」(「舌禍の女神」)の語が用いられるなど、その背景にも「口」周辺に関連した要素に縁を持つキャラクターでもある。
二次創作におけるサグメと地上の「食」
上記のように霊夢の味覚、あるいは永琳らの味覚を通しても食にまつわる違いが語られている月と地上であるが、二次創作における「サグ飯」では今度はサグメが地上(幻想郷)の「食」を体験する。
「食」との出会いへの導入のケース例
『紺珠伝』時点ではサグメが永遠亭以外の地上を訪れているかなどは不明であるが、二次創作では月とまるで異なる価値観を持つ地上に驚いたり気に入ったりするサグメが描かれることもあり、その地上との交流の一つとして「食」という要素が見出されている。
地上に降りたサグメが現地の食に触れるきっかけは様々で、例えばふと人間の里を探索した際にその香りに興味を引かれたり、『紺珠伝』で知り合った地上の人々の食卓や宴会、あるいは永琳や蓬莱山輝夜らの永遠亭の食卓に誘われたりといったサグメのアクティブな行動、あるいはサグメの人間関係を通した縁のつながりなどがその導入のありかたの一例として想像されている。
永遠亭を訪ねるサグメについては「文々春新報」に掲載された写真などに永琳らとお茶を飲む様子が捉えられている他、鈴仙がお茶菓子として団子を運ぶ様子も収められている(『文果真報』)。
サグメ本人についてもその二次創作において比較的物怖じしない、あるいは興味をひかれたものには考える前に自然と手がのびるような一面、はたまた天然ボケのようなキャラクター性が見出されることもあり、そういった性格面は地上の「食」に対する心理的垣根の低さとして結ばれるというキャラクター造形にも関連して具体的なストーリー展開の在り方も見出されている。
ストーリーの構成によっては『紺珠伝』以前またはそれ以後から地上に降りた清蘭や鈴瑚などの現地報告に付与された食にまつわる現地レポートなどを通してそもそも地上の食に強く惹かれていたなどの想像もある。レポートを通してお腹を鳴らしたりする様子も想像されているなど、『紺珠伝』での異変を通して想定外の新しい世界を発見してしまったサグメの姿も想像されている。
地上の食への興味の高まりについては『紺珠伝』周辺のサグメ本人を取り巻く環境・境遇との相互作用を考えるストーリーの在り方もある。
例えば『紺珠伝』周辺の時点では月の都は数か月単位(「 半年 」以上)に渡って脅威にさらされているという極めてストレスフルな事態にあった。防衛の要職を任された(あるいは押し付けられた)サグメにとって、まるで本能に訴えかけるような地上からの魅惑的な食レポートが未来への希望の一つになっていたのでは、と想像する創作の在り方もある。これは例えば「平和になったら心ゆくまで地上の未知の食の練り歩きをしたいサグメ」、という想像にも繋がる。
そして実際に地上の食に触れるわけであるが、「サグ飯」のアプローチの一つとしてはこれがサグメに衝撃をもたらす、といった想像がなされている。先述のように月と地上とではその食の在り方が異なるため、サグメに一種のカルチャーショックをもたらすのである。
「神」と味覚、月と地上
サグメは「 天津神の部分 」という神格の側面ももつ(サグメ、『紺珠伝』)。
その由来や関連については日本神話に登場する「アメノサグメ」ではないかとされ、実際に大和の神である八坂神奈子の言にはこれに関連したものがある(『紺珠伝』)。
あるいはサグメの「天津神でない部分」にかつて別れた「地上の神」を見出すというアプローチでは、サグメが今日的な地上の「食」への変遷に新鮮な出会いを果たす、という想像もなされている。
「味覚」という点ではサグメ個人またはアメノサグメ個人については不明ながら、日本の神々は一般に食と酒に愛好をもって語られることも多く、東方Projectにおいて原初の時代に分かたれた世界である今日の月には馴染みのない味覚であったとしても、個々の嗜好は別として「おいしい」と感じる感性や想いには共有できるもののあるのではないか、と前提されることもある。
つまりは、食を通して感性的に分かり合えるのではないか、というアプローチであると言えるだろう。
このサグメの「おいしい」という感性を素朴に刺激する出会いが、「サグ飯」の在り方の一つである。これまで実体験としては知らなかった今の地上を、サグメは「食」を通して知るのである。
東方Projectの世界観においては一般に、月から見て地上は忌避や嫌悪の対象であり月に遠く及ばない卑俗な文化であるが、そういった様々な障壁をたちどころに無にするものが、食やその食環境を通したストレートな実体験なのである。
同じ釜の飯を食べれば盟友、杯を交わせば朋友。
それはサグメと食を通した、隔てられてきた異なる文化同士の新しい出会いであると見出す作風もある。
「食」による影響
ただし地上の食に触れたことでコメディ的には例えばふくよかネタ、シリアス的にはサグメの存在性自体への地上の穢れの浸透などといったそれ以後の問題へと至るケースも想像されている。
特に後者の場合、地上の「食」には食物連鎖の象徴としての側面もあり、二次創作においても仙人食(例えば霞)でもない限り穢れを回避できないと想像されることもある。この視点に立つ二次創作の場合、食による「穢れ」との接触がサグメの体に影響を及ぼすこととなる。
このテーマはサグメの登場以前からサグメと同じく月の民にして地上との交流をもった依姫や豊姫にまつわる二次創作においてもその地上との「食」との接点において課題となってきたテーマでもあり、「サグ飯」においてもサグメを通したかたちで月と地上の境界のありかたを想像する創作上のテーマとなり得るものとなっている。
それでも先述のようにサグメの住まう月の文化にない地上の「食」を楽しむ様には心理的にも隔てられた地上と月を結ぶ懸け橋の一つともなり得ると想像されることもあるなど、サグメやサグメを取り巻く人々の笑顔が両世界の新しい未来の運命を結び付ける様子もまた想像されている。
二次創作に見る食の愛好と嗜好傾向の一例
東方Projectの二次創作においては原作の様々な表情を基に多様な形で「食」との関連が想像されている。
例えば個別のキャラクターをみるとき、比較的グルメな方向での創作が見られるキャラクターとして茨木華扇、なんでも食べる方向での創作が見られることが多いキャラクターとしてルーミアや宮古芳香等がある。また西行寺幽々子は創作ごとに両者いずれの方向性でも想像がなされている。
いずれも原作において各々の「食」(または食的要素)との関連が語られているキャラクターたちである。
またその能力や種族とも関連して二次創作でも特定の品目に対する強い志向が描かれるのがサグメとも縁のある鈴瑚やドレミー・スイートであり、こちらも幽々子同様その志向するジャンルの食品などについてグルメであったり万遍なく愛着を持っていたりするなどの想像がなされている。
直接的な縁ではないものの酒虫などを通して永遠亭とも関連を持つ伊吹萃香や星熊勇儀などについても二次創作では酒、あるいはおいしく酒をたしなむことをこよなく愛する存在としてとらえられることも多い。
戒律で食や飲酒に制限を持つ命蓮寺の面々についても、一部は時にはその限りではない様子も語られている(『東方求聞口授』)など食の魅力に強く惹かれている様子が語られており、命蓮寺の面々にまつわる二次創作においてもこの戒律との交渉がテーマとなることもある。
このように東方Projectの世界観においては種族を問わず食に愛着を持つ様々な存在があり、宴会文化などもあるため、地上の食に興味を抱いたサグメへの誘惑は極めて強力であると言えるだろう。
「サグ飯」と近似した体験を得た人物
先述のような「サグ飯」と同様に、地上の食を通したカルチャーショックを実際に原作中で受けたキャラクターとして比那名居天子がある。
天子は天界から初めて出て訪れた幻想郷の「 里 」で様々な地上の食を体験したようで、その味を忘れられない、としている(『文果真報』)。
天子もまた地上より高所にして高貴な人々の住まうとされる天の存在であり、同時に住まう土地の食について地上とは異なる様が語られているキャラクターである。例えば天界では食物として口にするものは「桃」が主で、天界の人々はそればかりを口にする様子などの普段の食のバリエーションの平坦さが天子によって語られている。
それだけに、初めて体験した地上の食は天子にとって衝撃と喜びだった様子である。
二次創作における「サグ飯」は、そのまま天子の体験した天界と地上の食のギャップの体験にも類似するものと言えるだろう。
pixivにおける他表記
pixivでは本タグ名称によるものの他「サグメシ」の表記によるタグが使用されている。両タグは併用されているものとどちらか一方だけが使用されているものがあるため、広くサグメの食にまつわる作品を求める際は両タグを併用したワードを使用すると良いだろう。
また東方Projectと食に関連した二次創作タグとして「少女食事中」のタグも使用されており、「サグ飯」などのタグが併用されていないサグメの食関連の作品を求める際は「少女食事中」のタグと「稀神サグメ」などサグメの名前にまつわるタグを併用するのも一つの方法である。
- pixiv検索ワード例
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少女食事中(東方Projectと「食」の全般に関わる広範な二次創作関連タグ)