サグメと言葉
『東方Project』に登場する稀神サグメが、「言葉を口にする」のではなく筆談によってコミュニケーションをとる様子を描いた作品に用いられるタグ。
サグメはその能力の故もあって多くを語る事が無い。
「 関係者 」(または関係のありそうな者)等に対して事象に関わる言葉を口にすることで「 事象は逆に進み始める 」こととなるというサグメの能力は、これから起こる事象を従来のものから逆転させるという「 言った事で世界を反対に動かす 」ものである。
それは「サグメが言った内容が逆転する」のではなく、「サグメが事象に関連する事柄を口にすることそのものによって事象の運命が逆転する」ものである。
作中ではサグメは月の都に現れた『東方紺珠伝』自機の面々の背後に「 八意様 」の智恵を見、「 関係者 」であることを察知すると幻想郷遷都計画と純狐について語る。この語りによって両者の運命は逆転し、結果遷都計画は破棄され、純狐の企みも回避された。
「 私が真実を喋れば、この人間を中心に事態は逆転する 」(サグメ、『紺珠伝』)
このとき、サグメが「遷都計画の失敗」や「純狐の敗北」を口にする必要は無く、その事象を関係者に語るだけで良い。しかしそれは同時に情報を伝えるだけで本来の運命を逆転させてしまうことも意味するもので、例えば「 関係者 」の前では純粋な情報伝達を目的とした告知と運命を逆転させるための宣言を区別する事が出来ない。加えて変動する事象は全て「逆転」であるため、サグメ本人に有利なものとは限らない。
このようにサグメの能力はその影響力の絶大さも含め非常に込み入ったものであり、「言葉として口にする」という導入部分での容易さもあって、サグメにまつわる二次創作においてもその制御に難儀したり口にした言葉が思わぬ効果をもたらしてしまったりする様子が想像されている。
文字による対話
そのような苦難の中にあるサグメにあって、関連する二次創作などでは日常的なサグメのコミュニケーションスタイルの一つとして「筆談」が想像されているのである。言葉を「口に出す」のではなく文字を通して意思や情報を伝えることでその能力の影響を回避し、通常のコミュニケーションをとるというものである。
月の都には地上のものとは異なる独自の文字(稗田阿求が月都万象展で確認。「幻想郷縁起」、『東方求聞史紀』)があり、さらに玉兎のレイセンが綿月豊姫の命を受けて書簡を準備している様子(『東方儚月抄』)からは文字として現わすための紙及び紙に相当する媒体の存在も見て取る事が出来るなど、サグメが文字と文字を書き示すことによってコミュニケーションをとり得る下地は存在している。
多くを語る事が無いサグメであるが、能力の影響を迂回する筆談を通してならば自由に気兼ねなく、普段から「 饒舌 」にも語る事が出来るのではいか、と想像されているのである。
その一方で、サグメは月の都遷都計画にかかるオカルトボールに至るパワーストーンの制作にあたって無機物に「 言葉で世界を変える力 」を付与しており、実際にパワーストーンは幻想郷に多様な都市伝説の具現化をもたらした(『東方深秘録』)。
サグメが「口にする」内容次第、あるいはそれ以外のサグメの能力によって、ともすればサグメが手がけた文字や媒体もまた、特殊な存在となり得るのかもしれない。