概要と設定
「THE LOST CANVAS 冥王神話」は、手代木史織によるマンガ作品。車田正美の原作「聖闘士星矢」を下敷きに、それより243年前に起こった前回の聖戦(冥王ハーデスと女神アテナとの抗争)を描いている。
この項目で扱う「牡牛座のフランキスカ」は、同作の外伝で扱われた、さらにその前の聖戦当時の人物である。(いわゆる聖戦は二百数十年ごとに繰り返されてきたので、フランキスカ生存当時の聖戦は、およそ原作の500年ほど前と思われる。日本史で言えば戦国時代ごろ)。
同作の巻数で言えば、外伝15~16巻に登場。この2巻では、本編の重要登場人物である教皇セージと祭壇星座聖闘士のハクレイ兄弟が、17歳当時に経験したある叛乱事件が描かれており、フランキスカは意に反してそれに巻き込まれてしまった牡牛座の黄金聖闘士として登場する。
人物
外伝16巻巻末のキャラクターデータによると、5月2日生まれ。血液型O型。身長175センチ体重87キロ。
劇中では「牡牛座のフランキスカ」という名と容姿、必殺技名以外のことは描かれておらず、年齢等も不明。ただ歴代牡牛座の黄金聖闘士に比べ、あどけなさの残る童顔に描かれており、おそらく当時蟹座の黄金聖闘士であったセージとその双子の兄ハクレイらと同年代と思われる。劇中、負傷したハクレイが周囲の制止も聞かず再度戦いに赴こうとするのを見て、「年上の言うことは聞けよな!」と発言しているので、おそらく当時17歳の双子たちより2~3歳年長であろう。ことさら偉そうに「年上」という点にこだわっているところを見ると、実際にはそれほどの年齢差はなく、20歳より上ということはなさそうである。
叛乱事件のさなか、直接拳を交えたセージによると、「黄金聖闘士随一のパワーと瞬発力」の持ち主で、必殺技「ブルリングスパイク」は文字通り「闘牛場(ブルリング)」の牛のごとく相手に突進する技。
牡牛座の聖闘士にふさわしい「直球戦法」をとるが、後世のアルデバランなどに比べると、それほど並外れて雄偉な体格の持ち主ではなく(身長175センチは聖闘士としても平均。むしろ劣るほうかもしれず、身に纏う牡羊座の黄金聖衣も少しオーバーサイズ気味である)、単純に「パワータイプ」と言っていいかどうか疑問は残る。ただ、セージから「洗脳されても戦法は直球」と言われているので、おそらく多彩な技を操る技巧派ということはない。
また洗脳状態であるにもかかわらず、囮を使っただまし戦法をとったセージに対し、「ふざけるな! 正々堂々と勝負だ!」と怒っているので、根っからフェアプレーを好む性格のようである。セージはそんな彼に対し、好意的に笑いながら「お前のそんな所は嫌いじゃない」とも発言しており、よほど性格の素直さや心根のまっすぐさを仲間から愛されていたキャラであることが窺える。
目下の白銀聖闘士たちからも信頼されている様子で、彼らは苦戦が予想される戦いにも躊躇なく付いてきてくれており、おそらく普段から陰日向なく人に接する性格であったと思われる。
またこれは比較の問題になるが、歴代の牡牛の聖闘士が、やさしくて愛嬌はあるが見かけはゴツくて怖い人物が多い中で、フランキスカは珍しく人形のように目鼻立ちの整った白皙の美青年として描かれている。頭髪はおそらく金髪で、人種は白人。本人が自分の容姿をどう思っているかはわからないが、ことさら豪快で熱血なキャラを演じているような気配もあるので、あるいは後世のアルバフィカのように、ある種の劣等感を持っていたかもしれない。
なお「フランキスカ」は「斧」という意味であり、歴代多くの牡牛座聖闘士と同じく(アルデバラン=牡牛座のα星の名。アラビア語で「後継者」の意味。ハービンジャー=「先駆者」)、おそらく本名ではなくセイントネーム(?)であると思われる。精一杯豪快な名前をつけようとした本人の気負いが感じられるが、何か妙にかわいい響きのほうが、むしろ本人のキャラにぴったりである。
活躍
前述の通り、原作より二百数十年前の前聖戦の時代を扱ったLC本編から見てさらにもうひとつ前の聖戦の時代(おそらく16世紀初頭)、まだ冥王軍との小競り合いが少々行われている程度の前哨戦のさなか、フランキスカは聖域内部で起こったある叛乱事件の関係者となる。
この事件は冥王軍の策略によって黄金聖闘士がほぼ全員洗脳されたあげく、彼らの手によって当時の教皇が抹殺されるという重大なもので、後世のLCの時代には「闇の歴史」として封印されていた。
当時蟹座の黄金聖闘士であったセージによって洗脳が解けたフランキスカは、瀕死の重傷を負いながら反逆者のいる教皇の間に乗り込もうとするセージの双子の兄ハクレイを見かね、「自分が(双子兄弟を)守って十二宮を突破し、教皇の間まで送り届ける」と、当代のアテナ(サーシャの前の代のアテナ)に申し出る。このとき十二宮を守る黄金聖闘士たちはおそらく全員洗脳されている状況で、これはまずもって途中で命を落とすことは確実なのを承知の上での申し出であった。
アテナが一時的に(瞬間移動を阻止する)結界を解除したために、彼らが十二宮を順に攻略する必要はなくなり、フランキスカは双子兄弟や何人かの白銀聖闘士たちと共にアテナの瞬間移動能力を借りて十二宮上空を飛行し、アテナ宮殿をめざす。だが途中の人馬宮上空で攻撃を受けて着陸。やはり洗脳状態の「射手座のアエラス」の目前に落ちる羽目になるが、結果的に自分が囮となって双子たちを教皇の間に送り込むことに成功する。
そして「洗脳されてもクソ真面目なところが嫌いじゃない(自分がセージに言われたことを踏まえているようである)」アエラスと戦ったらしいが、この勝負が結局どうなったかは描かれていない。おそらく双子兄弟によって叛乱事件の首謀者が討伐されたため、アエラスらもまもなく正気に戻ったと思われる。
本編でのセージとハクレイ兄弟の述懐によると、冥王軍相手の聖戦はこの事件のあとも続き、アテナ軍はタナトスとヒュプノスの双子神に苦しめられ、甚大な被害を出したものの、どうにかハーデスの地上侵攻は阻止したようである。この過程で双子は「多くの同志を失った」と述べているので、フランキスカも聖戦のどこかの段階で戦死したのではないかと思われる。
このように出番は少ないものの、美形の容姿と漢気あふれる性格によって、ファンの間では一定の人気があるキャラである。LCの番外編は現在もまだ不定期に書き継がれているので、ワンチャン、フランキスカが再度登場することもある……かもしれない。