概要
冥王神話とは車田正美原作の『聖闘士星矢』の続編またはスピンオフ作品を指す。
どちらも前聖戦時代の「天馬星座の聖闘士」と「冥王ハーデスの器の少年」の友情がテーマとなっており、同名の登場人物たちも両作品の間では差異がある。
「天馬星座の聖闘士」および「冥王ハーデスの器の少年」の名前、原作でもお馴染みの牡羊座のシオンと童虎の2人が登場し、彼らが十代の頃であった『聖闘士星矢』本編時点より243年前、という時代設定が共通しているが同名の別人状態である。
共通して登場するキャラクター |
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『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』
原作者である車田正美本人が描く、前聖戦時代と未来の物語。(通称『ND』)
オールカラー漫画であるのが特徴。
週刊少年チャンピオンにて不定期連載していたが、2024年に完結。
詳しくは → ネクストディメンション
『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』
手代木史織が描く、前聖戦時代の物語。(通称『LC』)
単行本全25巻で完結し、外伝が全16巻で完結、番外編が「チャンピオンRED」にて不定期連載中。
詳しくは → ロストキャンバス
どうして冥王神話は二作品存在するの?
2006年4月、原作者・車田本人による星矢の新作漫画『ND』が週刊少年チャンピオンで連載されると発表された。
プロローグとして描き下ろされたハーデス戦のワンシーンでは、前聖戦時代にハーデスとペガサスの聖闘士が友の間柄であったことが明らかとなり、実際の連載は夏からであると告知された。
そして2006年8月、いよいよ『ND』の連載が開始される。
袋とじで8ページのみであったものの、オールカラー漫画の連載が始まった。
しかし連載2週目にして、次号(part3)は来月に掲載されるという告知がされる。
全話オールカラー連載を続けるためにNDは不定期連載という形を取ること、そして『LC』が来週から開始することがお詫びとともに急遽発表された。
この『LC』も「冥王神話」の名を冠しており、二つの視点で一つの冥王神話が描かれるという触れ込みであった。
当初は登場人物も同じとされていたが、実際には土台となる設定等を除きそれぞれが独自路線を進み、異なる物語となっている。
尚、手代木が星矢を描くという噂は2006年4月頃から流れていたようで(もっとも車田本人が新作を執筆することが発表されたため、誰も信じなかったのだが)、平行連載という形は急遽決まったわけではなく相当前から企画されていたものであったようだ。
NEXT DIMENSION
当初、袋とじフルカラー8pの連載だったが、part9からは袋とじではなくなり、1話あたりのページが増えモノクロ連載となった。
ただし、製作自体はフルカラーCGで行われているようで、単行本はオールカラーコミックとなっている。
やがてハーデス編後の星矢が作中で登場してからは、前聖戦だけの物語ではなく、原作の後日談を描く続編としての意味合いも持ち始め、「正統続編」と称されるようになった。
原作の続編と謳われていた劇場版『聖闘士星矢 天界編 序奏 ~overture~』は興行的に失敗に終わっており、続編が作られる見込みがないためか、天界編の登場キャラクターも設定を変え登場することとなる。(実質的にリブートも兼ねている)
尚、『ND』の過去編ではアテナが指揮を執れず聖域で内乱が発生している状態で冥王軍と戦うことになっている前聖戦が描かれている。
未登場の黄金聖闘士たちがどのようなスタンスを取るのか、まったくわからないという点も『ND』の魅力の一つといえるだろう。
…それにしてもこの作品、休載が多すぎてぜんぜん進まないのである。
当初の2年半ほどは作者が別連載(リングにかけろ2)を隔週刊の他誌でかけもっていたりという事情もありさらにスローペースであり、前述の連載が終わってからは若干のペースアップとなった。
現在の掲載ペースとしてはおおむね年2回に単行本1巻分程度を連載→休止のペースなので、年平均すると月刊連載並みといったところであり、連載開始から数年経った2021年時点で単行本は13巻まで進んでいる。
作者が今のところフルカラーにこだわっているようなので、白黒でもいいから早く続きが読みたい、というのは言いっこなしなのだが…
前述の通り2024年に完結したが、終盤は展開がやたらと駆け足で多くの伏線を残し、消化不良気味な締めだった。但し、作者が相当高齢であり、連載途中で絶筆という最悪の事態を回避する為に敢えてそうせざるを得なかった点に留意すべし。
THE LOST CANVAS
当然ながら車田絵とは絵柄の方向性が大きく異なっており、連載開始当初は「少女漫画家が星矢を描くのか」と批判的な声も多かった。
しかし、原作ではあまり活躍できたとはいえなかった「魚座」の黄金聖闘士アルバフィカが登場し、華々しく戦ったあたりから評価を改める読者も増え、人気が加速していくこととなる。
手代木自身が星矢および車田の(控えめな言い方で)熱狂的なファンであり、絵柄は似ずとも聖衣の表現や擬音を原作と似せる、車田フキダシ(墨をぶちまけたような黒いフキダシ)を使用するなど、一見しただけでも読者に原作の雰囲気を強く意識させる作りになっている。
また、原作であまり詳しい説明のされなかった細かな設定を拾い、独自の解釈を行って話を膨らませていくという手法が多いのも特徴的である。
もちろんこれは手代木なりの解釈でしかなく(俗に言うLC設定)、原作者が本来どう考えていたかは別の話なのだが、こういった一つの答えというものを求めていた読者は多かったようである。
そうして一定の人気を得て連載は続き、アテナがトップに立ち聖闘士が一丸となって冥王軍と戦った前聖戦を丸ごと描ききるに至った。本編を完結し、月刊の系列誌に移行しながらも、聖戦よりも更に過去から遥か未来までの因縁を描いた外伝を完遂させた。
『ND』の長い休載の間も読者に星矢熱を維持させ、また『聖闘士星矢』の新規ファンを生み出すことにも成功しており、他作者によるスピンオフとしては大成功の部類といえる。