概要
「獅子の泉」とは、田中芳樹の小説『銀河英雄伝説』で建設計画が進行する皇宮の名である。
帝国暦490年・宇宙暦799年、ゴールデンバウム朝銀河帝国皇帝・カザリン・ケートヘン1世から譲位を受けた帝国宰相・ラインハルト・フォン・ローエングラム公爵はローエングラム朝銀河帝国を建国、新帝国暦を公布し、帝都を惑星オーディンから旧フェザーン自治領の本拠・惑星フェザーンに遷した。
これにより、新皇帝・ラインハルトに任命された閣僚、各艦隊司令官をはじめとする多くの帝国要人は惑星フェザーンの邸宅を買収・借用せざるをえない状況に置かれた。
当然、皇帝・ラインハルトも例外ではなく、彼はフェザーンの豪商から「柊館」を借り受け、新皇宮が建設されるまでの仮皇宮とした。
その新皇宮の名こそ「獅子の泉」である。
新皇宮「獅子の泉」は、ラインハルトが新設した工部省の長・工部尚書・ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒが帝国首都建設長官を兼ね、彼みずからが設計にあたった宮殿の名である。
シルヴァーベルヒは斬新な構想をもって皇宮設計に着手していたが、新帝国暦1年10月、フェザーン総督・ニコラス・ボルテックが主催した夕食会で爆発事件に巻き込まれて死亡、帝国首都建設長官の職責は工部省次官から工部尚書に昇格したグルックに引き継がれることとなった。
新皇宮設計もグルックが引き継ぐことになったが、シルヴァーベルヒが構想していた斬新な設計は当然引き継がれることはなく、日の目も見ることはなかった。
ローエングラム王朝成立後も、皇帝・ラインハルトが「柊館」に腰を落ちつけることは少なく、帝国軍総旗艦・ブリュンヒルトが彼の玉座となるケースが多かった。
新帝国暦3年・宇宙歴801年5月14日、仮皇宮「柊館」が地球教の実働部隊に襲われ、皇帝の子を宿した皇妃・ヒルダの生命を狙う事件が起きる。
間一髪のところで皇妃・ヒルダは憲兵総監・ウルリッヒ・ケスラー上級大将に救われるが「柊館」は炎上、皇帝一家は新たに邸宅を借り、仮皇宮にせざるをえなない状況に置かれた。
新帝国暦3年・宇宙暦801年7月25日深夜、皇帝・ラインハルトが仮皇宮において崩御、ラインハルトの在世中、皇宮「獅子の泉」が落成することはついになかった。