ウルリッヒ・ケスラー
うるりっひけすらー
ローエングラム陣営の最高幹部の一人。銀河帝国軍・上級大将。憲兵総監兼帝都防衛司令官としてラインハルトに仕える。本来は艦隊司令官として前線に立つことを望んでいたが、その行政処理能力の高さをラインハルトに買われて現職に就く。ラインハルト崩御後のことは明らかにされていないが、作中において「ついに政治中枢から離れることはなかった」と書かれており、終生、有能な軍政家として帝国に仕えたと思われる。
元はラインハルト(当時・ラインハルト・フォン・ミューゼル)少将の上司であったグリンメルスハウゼン大将の知己を得、軍上層部ににらまれながらも大将の庇護下にあったことで帝都・オーディンに残ることを許される(このときの階級は大佐)。大将の依頼によりラインハルトとリューネブルク少将との対立にも介入するが、グリンメルスハウゼン大将の死後、庇護を失って辺境に左遷されることになった。出立前、ケスラーは「グリンメルスハウゼン大将より、貴族たちの醜聞を書いた書物を預かっていますので、少将の望みを果たすために使ってください」との伝言を申し出るが、ラインハルトは「貴族たちに憎まれるのはいいが、恨まれるのは本意ではない」と拒絶、ケスラーに書物の封印を依頼し、「私が栄達したら卿(ケスラー)を呼び戻す」と約束、呼び戻されたのはラインハルトが元帥に昇進してからであった。
皇帝・エルヴィン・ヨーゼフ2世誘拐事件においては、(おそらくフェザーンからの)密告によりアルフレット・フォン・ランズベルク伯爵、レオポルド・シューマッハ大佐が帝都・オーディンに潜入、何らかのテロ行為を起こすであろうことを報告。これを受け帝国宰相・ラインハルト・フォン・ローエングラム公爵はヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ伯爵令嬢、参謀総長・パウル・フォン・オーベルシュタイン上級大将とそれぞれ諮って「テロの目的は皇帝の誘拐」であろうと推測。ラインハルトはあえて皇帝を誘拐させ、それを同盟侵攻の口実にすることもあわせて決定した。
このとき、オーベルシュタインは皇宮の警備責任者・モルト中将は罪を免れず、生命をもって贖わせるほかないと主張。モルトの人格をよく承知していたラインハルトは難色を示したが、「部下には死を与えることも時には必要」とのオーベルシュタインの主張にやむなく同意し、モルトの死を容認する。さらにオーベルシュタインはモルトの部下で帝都防衛司令であるケスラーにも言及するが、これにはラインハルトも首肯せず、ケスラーには戒告と減俸処分を下すに留めている。この一件に後味の悪さを感じていたラインハルトは、実際に皇帝誘拐が発生した際、モルトへ処分を伝えるに一晩の猶予を与え、身辺の整理を命じて暗に自死を勧めている。モルトはむしろ感謝すらして自室にて自決した。
ラインハルトの登極後、ラインハルトは2度の皇帝弑逆未遂事件にあっている。
1度目はラインハルトの登極直後、キュンメル男爵邸において起きた事件である。
不治の病にかかった男爵からの招待を受けたラインハルトは、このとき、皇帝秘書官・マリーンドルフ伯爵令嬢、高級副官・アルツール・フォン・シュトライト中将、親衛隊長・ギュンター・キスリング准将ら、少数の近臣とキュンメル邸を訪れる。
しかし、それは地球教とキュンメル男爵による皇帝弑逆の陰謀だった。
地球教とつながりがあった自由惑星同盟・前最高評議会議長・ヨブ・トリューニヒトはケスラーに地球教と共謀したキュンメル男爵が自邸で皇帝弑逆を企てていると知らせた末、
「地球教とつながりがあったが彼らの教義に同調したことはない」と主張、
身の安全と引き換えに同盟を捨てて帝都・オーディンに居を移したトリューニヒトを、ケスラーは心よく思っておらず、部下に命じて彼を軟禁したうえで、軍隊出身の憲兵隊に皇帝救出の命を下し、地球教オーディン支部の壊滅にも着手した。
2度目は貴族連合軍の領袖・オットー・フォン・ブラウンシュバイク公爵が起こした「ヴェスターラント虐殺事件」の生き残りの男が起こした事件である。間接的にブラウンシュバイク公と共謀し、蛮行を黙認したラインハルトへの恨みが犯行の動機であった。
これに対し軍務尚書・オーベルシュタイン元帥は「陛下にブラウンシュバイク公の蛮行を黙認させたのは私だ」と言明、男の憎悪を皇帝からそらしている。
直後、ショックを受けてうなだれるラインハルトを前に、オーベルシュタインは「帝国の名誉と男の名誉のために処刑」を、ケスラーは「名誉ある自殺の権利を与えること」を主張、男の処断に結論がつけられないまま、翌朝、男は牢内で自殺を遂げた。
長らく前線での戦闘参加はなかったが、地球教徒による皇妃襲撃のいわゆる「柊館炎上事件」で自ら仮皇宮に飛び込んで皇妃・ヒルダと皇帝の姉・アンネローゼ、ヒルダのお腹の中にいた後の皇太子を救う。この時ケスラーに協力した若い女侍従はケスラ-を見て「大佐」と間違えて呼んでしまうが(当時「大佐」の5つ上の階級(「上級大将」)で元帥に次ぐ高位)、これはケスラーの顔を覚えてなかったためで中の人が某赤い人ということとは関係ない(多分)。2年後、この少女マリーカと結婚することになる、ちなみに年の差の20歳である。某赤い人が特殊な趣味の持ち主であることとは関係ないだろう(おそらく)。
なお、ロイエンタール元帥謀反のおり、宇宙艦隊司令長官・ミッターマイヤー元帥がオーベルシュタイン元帥を軍務尚書から解任するよう進言した際、後任の軍務尚書にケスラー上級大将かメックリンガー上級大将のいずれかが適任であると皇帝・ラインハルトに推薦したことがある。もちろん、ミッターマイヤーの中の人が某緑の人とは関係がないだろうと思う(多分)。
憲兵総監と帝都防衛司令官を兼務。2つの職務はいずれも激務であり、本来ならば別人物がそれぞれの職に就くべきであった称されているが、その双方で非常に高い功績を上げ、結果としてラインハルトにとって不可欠な人材の1人となった。
こと憲兵隊に出向していた頃は、とある老婦人の不敬罪告発事件に際して上層部の意向に反した開明的な処置を下すなど当時から辣腕を振るっている(資料でこの事件を知ったラインハルトは、当時から彼を招聘する意向を固めていた)。
ローエングラム王朝では人事面でも軍部の人員を編入するなど巧妙な刷新を行い、その有能さを遺憾なく発揮している。それゆえにローエングラム王朝におけるラインハルトの存在と同じように、憲兵隊におけるケスラーの存在は絶対であり、もし彼が何らかの理由により不在となった場合、憲兵隊の指揮系統は崩壊することとなる。
事実、前述の柊館炎上事件は、ケスラーが新造された帝都郊外の施設の視察に向かった隙をついて実行されている。
その有能さ、発言力はミッターマイヤーが怒りにまかせてラングを独断で粛清しようとした時も彼を諌め、ミッターマイヤーも進言を聞き入れて鉾を治めるなど、元帥達からもそれなりに信頼されている模様。
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