注意
この記事自体は全年齢を対象としたとても真面目な記事であるが、やむにやまれぬ事情により本文中やリンク先にはやや品性を欠く表現が存在する可能性があるため注意を要する。
概要
珍宝閣(ちんぽうかく)とは南米を原産とする柱サボテンの一種である天守閣Echinopsis lageniformis(=syn.Trichocereus bridgesii)または大稜柱Echinopsis macrogonusなどの突然変異とされる園芸植物に付けられた和名の一つである。
原種である天守閣や大稜柱は柱状で刺を備え、一般にサボテンと聞いてイメージされるであろうごく普通の姿をしたサボテンであるが、珍宝閣は成長点や刺座の大半を失ない、刺や稜の無いスベスベとした棒状の姿をしている。
珍宝(ちんぽう)とは「とても珍しい宝」を意味する語句であり、好意的に解釈するならば本種の珍しい姿形や希少さから付けられた名前であると考える事が出来る。
出来る。…出来るのだが、本種の見た目はあの…なんというか、誠に申し上げにくいのですが、その、男性のアレにとても良く似た姿形をしており、明らかにその意味で名付けられたとしか考えられない。
早い話がちんぽっぽいのである。明らかにおちんぽ。ちなみに英名ではPenis cactusである。英語でもちんこサボテン。完全にちんちん。ドイツ語ではFrauenglück(女性の悦び)である。なにちょっと婉曲的にしてるねん!おちんこ言えや!!
近年では、あまりにも直球かつお下品な印象を与える呼称であるため、店頭などでは「成程柱」「なるほど柱」などの異名が使われる事も多い。何がなるほどやねん。
数千円程度で取引される。
なぜこんなふざけた名前が付いているのか
植物の世界共通の名前で「国際藻類・菌類・植物命名規約」に則り学術的に発表される学名と違い、品種名や流通名、和名などには明文化されたルールはなく、誰が付けたのか不明だがなんとなく先に浸透した名前が充てられている場合がある。
特に、昭和初期に輸入されたサボテンや多肉植物には輸入業者や趣味家が和名を付けた例が多い。これは、文字だけのカタログで植物が売買されており、現在のようにインターネットなどが発達しておらず学名という概念も一般人に伝わりにくい時代に、というか現在ですらEchinopsis lageniformis(=syn.Trichocereus bridgesii)
monstrosaとかなんとか文字で書かれても「なんかよくわからんくてワロタ」となるため呼びやすい日本語名を付けていた慣習による。
更にサボテン趣味家には男性が多い事もあり、男子特有のノリが珍宝閣という珍妙な名を生み出した要因であると考えられる。知らんけど。
珍宝閣(ちんぽうかく)の繁殖方法
珍宝閣は比較的殖えにくいサボテンである。
前述のように刺や成長点のほとんどを失っているため、極めて花が付きにくく(サボテンの花は刺が付く刺座から分化するため)、仮に開花したとしても、サボテンの多くは自家不和合性を有し、実を結ぶためには遺伝的に異なるパートナーが必要であるため、種子を作る事は難しい。
従って、種子による繁殖はほとんど行われていない。珍宝(ちんぽう)のくせに種は撒けないのである。
同じ理由から側枝もあまり出ないが、わずかに刺座の残る根元などから枝分かれする事があり、それをもぎ取って挿し木したり、胴切りと呼ばれる茎をスパっと切り分けて先っぽ側を挿し木すると共に根元の分枝を促す方法で増殖される。その場合でも増殖速度は非常に遅い。
珍宝閣(ちんぽうかく)の病気
繁殖方法で述べた通り、珍宝閣は種子での繁殖が難しい。これは植物にとっては非常に病気に侵されやすいという事に繋がる。
サボテンにはカクタスモザイクウイルス(CVX)などのウイルス病が知られているが、サボテンに限らず植物のウイルス病は基本的に根治が不可能であるとされ、一度感染すればその個体は永続的にウイルスを保有し続ける事になる(茎頂の先端0.1mmほどを無菌培養する特殊な手法を用いるなどすれば根治が可能な場合もある)。
種子による繁殖であれば、親がウイルス感染株であっても子に垂直感染しない事が多いのだが、挿し木などの栄養繁殖は親の一部を切り取って行うため親と同じウイルスを保有し続ける事になる。同じ株が長年にわたり圃場や園芸店などで不特定多数のサボテンと共に管理されていると、どうしても接触や昆虫などによってウイルス病が伝播する可能性が高く、種子繁殖によって「リセット」出来ない事はウイルス病の保有リスクを非常に高くしている。
また、珍宝閣は成長が遅いため接ぎ木で維持される事が多いが、接ぎ木も他の個体と合体し体液を濃厚に混じわらせる行為であるため、ウイルス蔓延のリスクが非常に高い(本来であれば、接ぎ木にはウイルス対策として種から育てた若い未使用、すなわちヴァージンな台木の使用が推奨されているが、非常に手間と時間がかかるため古木や台木からの枝が利用されがちである)。
これらの事から、過去数十年に渡って栄養繁殖や接ぎ木を繰り返された珍宝閣のほとんどは何らかのウイルス病を保有しているとされる。
ウイルス病によって直ちに枯死する事はないものの、成長に悪影響を与え、高温期や環境が合わず体調を崩した場合には、肌が荒れたり、なにかブツブツが出たり、まだら模様がでたりというウイルス病変が顕れる事が多く、健康で綺麗な状態を維持する事は難しい。
珍宝閣(ちんぽうかく)の美乳柱との相性
珍宝閣(ちんぽうかく)の栽培では接ぎ木が多用される事は既に述べたが、珍宝閣を接ぐ台には竜神木Myrtillocactus geometrizansという種類の柱サボテンがよく使われる。
竜神木には、福禄竜神木と呼ばれる女性の乳房のような突起が並ぶ品種が存在する。つまりおっぱいがいっぱいである。
癖(ヘキ)としての複乳の賛否についてはここでは論じないが、性質としては竜神木と同じものであるため相性が良く、接ぎ木で合体することで珍宝閣をより大きく出来ると考えられる。
筆者は竜神木でなく福禄竜神木をわざわざ用いる意義を今のところ見いだせていないが、なにかとても大切な事柄である気がしたので記しておく。
余談であるが、福禄竜神木はWikipedia英語版で
“The fukurokuryuzinboku(福禄竜神木) cultivar from Japan, commonly known as "titty cactus" or "breast cactus," has unusually plump ribs shaped like human breasts.”
(訳:日本の福禄竜神木は、一般に「おっぱいサボテン」または「乳サボテン」として知られ、ヒトの乳房のような形をした異常にふっくらした稜を持っている)
Wikipedia英語版Myrtillocactus geometrizans頁(2024年2月16日時点)より引用
とか書かれているように、海外でも日本が産み出した魅力的なおっぱいサボテンとして認知されており、日本が世界に誇れるものの一つと言えるだろう。
なお、文学的な判断から章タイトルでは福禄竜神木の中国語圏の呼び名の一つである美乳柱を採用した。
珍宝閣(ちんぽうかく)の快楽的利用とその是非
珍宝閣の原種であるとされる天守閣E. lageniformisや大稜柱E. macrogonusなどの仲間はサンペドロとも呼ばれており、摂取するととても気持ち良くなるアカン成分
であるメスカリン(3,4,5-トリメトキシフェネチルアミン)を始めとしたアルカロイド類が含まれている事で知られているため、珍宝閣も同様の成分を持つ可能性がある。珍宝(ちんぽう)のくせにオス-ではなくメスカリンである事についての所感はここでは記さない。
サンペドロ類はアンデス地域などでは伝統的な宗教儀式等で用いられている。特にペルーでは文化遺産として扱われており、最古の利用としてはマンコ(Distrito de Mancos)近郊にあるギタレロ洞窟(Guitarrero Cave)において約8600年前の痕跡が知られる(ペルー文化省次官決議第 00252-2022 VMPCIC/MC)。
ちなみにマンコがあるユンガイ郡が属するアンカシュ県には他にティンコ(Tinco)やチンボテ(Cimbote)などの自治体がある。
一方で、アルカロイド類の多くには毒性があり、メスカリン自体もアカン成分として多くの国で所持や使用が違法とされているため、これらを多く含む可能性のあるサボテンの安易な摂取は心身への悪影響をもたらす危険性が高く厳に慎むべきである。
更に、メスカリンの含有量が多いのは現地で長年選抜された系統が水量や肥料分の少ない過酷な環境でじっくりと鍛えられ育ったものとされ、日本の温室でぬくぬくと甘やかされて育った軟弱な珍宝閣(ちんぽうかく)には気持ち良くなる成分は殆ど含まれていないと考えてよい。
珍宝閣に限らずサボテンの多くは苦味やエグ味、青臭さ、ぬめりが強く食味が悪い事や、前述のアルカロイドの毒性の事も加味すると、青臭くて苦いヌルヌルとした濃厚珍宝閣汁を大量に摂取しても、単に気持ち悪くなるだけで涙目で嘔吐するなど尊厳を失った無様な姿を晒すハメになる可能性が高いだろう。知らんけど。