概要①
あくまで福岡県で話される様々な方言を総称した言い方である。
具体的には大分弁などと同じ豊日方言に含まれる小倉弁(北九州弁)や直方弁と、長崎弁などと同じ肥筑方言に含まれる大牟田弁、柳川弁、久留米弁、糸島弁、博多弁などから成る無関係な側系統同士の多系統群であり、言語学的な区分としてはほぼ意味を成さない。
ただし、いずれも相互に影響しあって変質している事情から、外部の人間には例えば豊日方言系の小倉弁と肥筑方言系の博多弁の区別は困難である。
博多弁、小倉弁は九州方言としては珍しく、外輪東京式アクセントを用いる。
狭義には博多弁の別名として使われる。
博多弁、小倉弁以外は話者数の減少が著しく、また高齢化しているため、近い将来の消滅が危ぶまれている。
概要②
かつて福岡県の城下町で使われていた方言で、別名「がっしゃい言葉」。
京言葉や江戸弁とともに特定都市の極めて狭い地域でのみ使われる方言であった。
現在は明治以降に誕生した比較的新しい方言である博多弁にとって変わられ、消滅言語となっているが、文献史料が比較的よく残されているため、現在でも詳細な研究が可能であり、習得は不可能ではない。
また、極々一部の表現や語彙は博多弁における敬語表現として、形を変えて存続している。
博多弁のベースになった博多言葉は、町人の使う荒い言葉とみなされていた一方、福岡弁は武家や武家と付き合いのある上層市民の使う丁寧な言葉遣いとみなされていた。そのため、日常生活では博多言葉を使いながら公式な場でのみ福岡弁を使う話者も多かったとされる。明治以降、公式な場で用いられる言葉は全国的に通用する東京山手弁に統一されていき、福岡弁は時代が経つにつれその存在意義を失っていった。一方、「荒くれ」呼ばわりされていた博多言葉は、それゆえに表現や言葉遣いの変化に寛容であったため、近隣の肥筑方言・豊日方言の諸方言や本州からの転入者が用いていた言葉遣いを巧みに取り入れ、現在の博多弁へと変化していく。皮肉にも、かつて「荒くれ」呼ばわりされ、公式な場からは排除されていた博多弁が(姿形は変えたものの)生き残り、かつてのイメージとは真逆に方言萌えの代表格になっている一方で、かつては上品とみなされていた福岡弁が消滅するという結果になった。諸行無常である。
福岡弁は歴史的には岡山弁から派生した中四国方言の一種であり、博多言葉などの周辺部で使われていた九州方言とは全く近縁ではない。同様の飛地的に分布する方言としては奈良県の奥吉野方言(十津川弁など)があり、こちらは周囲を近畿方言に囲まれながら飛地的に分布する東海方言(尾張弁や静岡弁と同系統)である。奥吉野方言も同様に存続が危ぶまれている方言である。
また、同様に上層市民に話され格式の高い言葉とみなされていたが死語となった言葉として、名古屋弁の上町言葉や大阪弁の船場言葉がある。