「おいらを嫌いに なったんとちゃう!?」
解説
「私はピアノ」は桑田佳祐作詞・作曲のサザンオールスターズの楽曲。
初出は1983年3月。サザンオールスターズの3rdアルバム『タイニイ・バブルス』の4曲目として収録。
原由子ボーカル曲のひとつ。
曲名にもなっているとおり、ロックバンドとしてのエレキギター(リードギター)はサポート役で、ピアノとベースの主旋律に載せた哀恋曲である。
と、書くと独身の女性や少女が密かな思いを……という感じではなく、倦怠期の夫婦がテーマの曲だったりする。
高田みづえ版
本楽曲はサザンオールスターズの楽曲としては当初アルバム収録の1曲であり、しかもメジャータイトルとしては初の原由子ボーカル曲というある種市場実験的な存在だった。
当時サザン(桑田)のネームバリューが少なくとも今ほどには高くなかったこともあり、目立つ曲ではなかった。
(時代背景的にも、当時はアルバム収録曲にアクセスするのはLPレコードがほぼ唯一の手段であり、一般の市民にはハードルが高かった)
一方、当時のアイドル歌手だった高田みづえのシングル曲として、同年6月に発売。当時高田はアイドル歌手として高名であり、たちまち浸透、高田はこの曲で、当時「歌謡番組の絶対的存在」だったTBSの『ザ・ベストテン』、更には同年末のNHK 紅白歌合戦にも本楽曲で出場している。
この為本楽曲は「高田みづえ版がオリジナルで、後に作詞・作曲を手掛けた桑田佳祐が原由子ボーカルでサザンの曲としてアルバム収録した」という誤解が非常に根強い。
実際には『タイニイ・バブルス』の発売は1980年3月。高田版シングルは6月発売なので、オリジナルはあくまでサザンである。
同様のことはやはり原由子ボーカルの「そんなヒロシに騙されて」(6th アルバム『綺麗』収録)にも言えるのだが、「そんなヒロシに~」は翌年には原由子メインのベスト盤の先頭曲として収録され(これには「私はピアノ」も収録されているのだが、いかんせん『タイニイ・バブルス』での初出から4年半以上が経過している)、「原由子ボーカルの楽曲」として強く認識されたのに対し、本楽曲は現在も「高田みづえの楽曲」として認識されがちである。
なお、高田版はサザン版のボリュームダウン版で、2番コーラスの途中に転調して桑田と原の掛け合いのセリフ回しの部分がなくなっている他、全体的にも旋律から毛ガニによるパーカッションセクションがなくなり、流れるような流麗なメロディの反面、サザン版を聞いてしまってからだと物足りなさ感があるのも事実である。