概要
アニメ『蒼穹のファフナー』の皆城総士×真壁一騎のカップリング。
同じ島で生まれ育ち、物心がつく前からそばにいて、公式側に「ピュアラブ」と言及されたことがある幼馴染にして親友。また、1期の公式曰く一騎は母性的で相手を理解しようと努めるタイプなのに対し、総士は父性的でまずは自分を理解してくれというタイプで、「2人の相性はばっちりすぎて、本当は信頼関係が生まれるはずなのに、ヘタをすると依存関係になっちゃいそうですね。でも、戦いや日常生活を通じて、お互いが真正面から認め合い、ちゃんとした『友達』になれたとき、2人の真の関係が始まるんじゃないかな」とのこと。
1期の身長差は4センチで、小説版に一騎が総士を上目遣いで見上げる一文がある。5年後の2期は数値は不明だが、総士の背が伸びたことはドラマCDで確定しており、依然として彼のほうが高い。体重は、1期では一騎のほうが5キロ軽い。
1期
2人は小学生の頃に起きたある事件で加害者と被害者になって以来、中学3年まで距離を置くが、その間も相手の存在を意識し続けていた。そして1話からは指揮官と兵士として共に戦い、すれ違いや一時の別れを経て互いと向き合い、和解に至った。深まった信頼は戦いにも好影響をもたらし、一騎だけが自分の全身が違うものになる感覚を受け入れて危険な機体を扱えるのは、「相手のために自分はこうありたい」という意識が一騎と、彼と戦闘中の感情や感覚を分かち合う総士の間に働いているためと説明されている。
しかし、慟哭する一騎(通称「総士9連呼」。なお総士[の中の人]もラジオで一騎9連呼に挑んだ)の目の前で総士は敵にさらわれてしまう。幼い頃は一騎に「お前とひとつになれる場所(=無)に帰りたい」と願い、戦いが始まってからは家族を立て続けに失い、家(=帰る場所)を無くしたと語っていた総士は、救出後に「いつか必ず帰る。お前がいる場所に」と約束を残して一騎の機体の手から砕け散り、一騎にも重い後遺症が残った。
小説版
分け隔てのなさ故に慕われている総士は、ある日突然大勢の自身の取り巻きの前で、一騎だけを特別扱いするかのごとく彼に話しかける。一騎は4年7ヶ月11日ぶりの総士との会話に混乱するあまり、島を出たがっていたことを「絶対に、お前は、逃げられないぞ」と罰されているのではとさえ疑った。
同日、敵襲を唯一察知した総士は周りの生徒たちに避難を指示しながら、皆と同様に戸惑う一騎に対しては、「来い!」と手首を引っ張って直接避難させようとした。しかし、「一騎が自分の後についてくることが当然というような態度」ですぐ自由にし、一騎もその通りにした。
突然の初陣で機体に暴力性を引きずり出されるまま敵を蹂躙し、「心の接続」によって総士に醜い自分を見られたと泣く一騎に、総士は己の更に暗澹とした胸のうちを垣間見せて、安らぎを与えようとした。彼は、はじめての痛み(※全身の筋肉痛)にも襲われた一騎をゆっくり休めと労った次の瞬間、翌朝真壁家を私的に訪問する約束を取りつけ、一騎を動揺させた(原作には、真壁家の敷居を跨ぐ場面は一切ない)。
一騎は変貌した世界への不安から総士に縋り、自らの意志を放棄して服従しかけたが、その一方で彼に成し得る限界や背負った孤独を早々に見抜き、総士から任された自機には親しい友人相手でも譲りたくないという執着を向けた。
続編と見られる劇場版の前日談小説では、この後原作通り島を出た一騎を総士がずっと待っていたことや、一騎が総士の部屋に招かれた際、例の自販機に関するやりとりがあったことなどが言及されている。
一騎視点の作品だが、総士の心情については彼の希少な理解者である義姉が「あなた、怖いのよ、皆城くん。だから一騎くんに、そばにいて欲しいだけなのよ」と指摘した他、うっかり一騎に時期尚早な発言をした理由が、やっと一騎が自分のいる場所に来てくれた喜びのせいなのだと地の文で明かされている。
劇場版・前日談小説
2年近い別離の間、一騎は期待を押し殺すことで乱れる心を庇いつつ総士の帰還を待っていたが、実は一騎の無意識下にて、彼の肉体に激しい負担をかけながらも、2人はずっと繋がり続けていた。精神体の総士は、これ以上戦えば命が危うく、またそれを自覚している一騎に出撃を命じると、「お前がいる場所へ帰る」とあすなろ抱きのように彼を包み込んだ。
一騎は島を襲った敵の手先との交渉役を担うが、相手の少年は一足先に一騎の夢を訪ねてくるほど、一騎と直に会える時を心待ちにしていた。なお少年は、仲の良い総士の好きなものは大好きという設定である。当初敵意を隠さなかった一騎は、彼が総士を助けていると知ると態度を和らげた。
交渉は決裂し、「帰れなくていい。お前が帰る場所を、守れさえすれば」と戦いに臨む一騎だったが、最後に何者かの乗る機体に抱きしめられるようにして庇われ、事なきを得た。そして戦いの最中にも重ねていた対話が実り、総士から託された島の平和と失っていた視力を取り戻す。その瞳が最初に映したのは、約束を果たした総士の姿だった。
2期
2人は19歳になり、公式サイトの相関図で「絶対的な信頼」と説明されている他、公式の予告で総士は「いつも楽園(一騎が調理師兼マスターの喫茶店)で食事する?」と解説されていた。一騎にとって第二の家と言える楽園にて、総士は店員ではないにもかかわらず営業時間外に来て賄いを食べ、いきなり厨房を使うことをマスターに笑顔で受け入れられている。
長くない身である2人は「2つで1つの力」の同型機を駆る戦友として異国の地へと飛び立った。当初は総士が命じ、一騎が(内容に納得が行く限り)応える従来の戦い方であったが、戦いを経て一騎は総士に別行動を頼み、遂には命令するようになる。同じ戦場で背中を預けられ、総士は嬉しそうな様子を見せた。
ちなみに2期の公式描き下ろしクリアファイルでは、右腕を後ろに引いている一騎の機体を、総士の機体が右手で肩から腰まで支え、左手は左太ももから膝裏まで抱え上げている、お姫様抱っこに近い両機の姿が描かれた。人体では不可能な範囲を包み込める、巨大な機械の手ならではの抱き方をしている一方で、パイロットと機体の感覚が一体化しているため、生身の時と同様に互いの感触が伝わっている。
総士は度々一騎の身を案じるに止まらず、彼が友好的な敵との接触を試みた時は「お前の命をくれてやる気か」と手首を掴んで繋ぎ止め、暗殺者に襲われた時は自身を擲って盾になろうとした(当の一騎は自らの命と重ねている髪を切ろうと決意した際、総士の申し出を受けて鋏を彼の手に委ねた)。しかし、命の果てを越えないかという一騎への誘いを「人として生きることが僕らの意志です」と、かつて人外の肉体を得て帰還した総士が本人の答えを待たずに拒み、島に帰った一騎の命は風前の灯であった。
ところが眠る隻腕の一騎に「お前も戻れ。まだ、僕らの時間は終わっていない」と言い置いて総士が島を離れている間に、一騎は常人の肉体ではなくなっていた。総士は何食わぬ顔で自分たちを出迎えた一騎の姿に目を瞠ると微笑み、「お前が選んだ道を、俺も選ぶよ」と告げられて複雑な表情を浮かべた。
そして転生を予言されていた総士も、決戦を終えて生命の限界が訪れる。一騎は一切ためらわずに彼に添おうとしたが、何度でも会おうと再び約束を交わし、総士を見送った。
2年後、一騎が繋いだ手の先には彼が「総士」と呼ぶ、別れの後に総士の機体から見つけた子供がいた。