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行かなきゃ……先輩のところへ!

『WANNA-BE』... STAND-BYっ...

起動(Set up)っ!!!

概要

講談社の少女漫画雑誌『なかよし』にて、1999年9月号から2002年1月号まで連載された立川恵の漫画作品。単行本は全6巻。

中学生の主人公白石みんくが『WANNA-BE』と呼ばれるヴァーチャルキャラクター作成プログラムを使って『Mink』というアイドルに変身し、芸能界に参入するところから物語が始まる。

いわゆる少女漫画では伝統的な変身ヒロインアイドルものであり、著者の代表作である『怪盗セイント・テール』の後継とも言える作品。その一方で、それ以前の同種の少女漫画とは異なり仮想現実を用いた拡張現実すらも予見したサイバーパンクのギミックを導入し、さらには変身という行動に対する問題点を挙げるとともに、匿名性の危険を指摘した(つまり、変身ヒロインものであるにもかかわらず「変身は(安易に変身に憧れて、それを求める事は)危険な事である」と子どもたちに問題提起を投げかけた)部分において、その革新性を評価する声がある。

実の話、作者の立川は芸能界に疎く、その上バーチャルリアリティと現実の混濁という難しいテーマを題材にしてしまったが故に、体調を崩しがちになった。結果休載を繰り返してしまった果てに、『なかよし』2002年1月号掲載分を持って事実上打ち切られてしまった。(ただし増刊号への完結編の掲載等により作品そのものの完結はしている)

そして、直後に『なかよし』誌は編集方針の大幅な刷新を行い、掲載作品の方向性も大きく軌道修正された。この事により立川は『なかよし』を離れる事になった。そのため本作は立川恵にとって『なかよし』本誌への最後の連載掲載作品である。(増刊号への掲載なら2本、読み切りがあるが、それ以降、立川は『なかよし』およびその関連誌に戻れていない)

あらすじ

芸能界に夢見がちなアイドル大好きミーハー女子中学生白石みんくは、立ち寄ったCDショップでディスプレイの倒壊事故に巻き込まれ、その場に居合わせたオートバイライダーの少年によって庇われる。自分を助けてくれた少年に礼を言おうとするみんくだったが、少年は「女の子はケガしちゃダメだよ」と笑い、傷だらけの体を引きずって彼女の前から風のように去っていった。

改めてショップで手に入れたCDを確認すると、なんと中身が音楽CDではなく『WANNA-BE』と書かれたプログラムCDだった。それに興味を惹かれた、みんくの友人の森山叶花は持ち前の好奇心で自らのパソコンにそのプログラムを走らせてしまう。すると『WANNA-BE』はヴァーチャル・キャラクターを作るソフトと判明。その仮想現実の面白さに反応した叶花と、もう一人の友人である鳥海真帆子は、みんくの身体データを使って「アイドルのみんく」であるMinkを創り上げる。だが、作り上げたキャラクターを起動させた瞬間、Minkは拡張現実としてみんくへと取り憑き、みんくを「電脳少女☆Mink」へと変身させ、テレビのロケ隊の前へと瞬間移動で乱入させてしまう。当然、大騒動になりMinkは慌てて逃げ出す事に。だがロケ隊のカメラに映った「ナゾの少女」の姿は、それだけで一世を風靡させてしまう。

一方、ロケ隊に乱入したナゾの少女の姿に釘付けになった少年がいた。それはCDショップでみんくを庇った少年。彼の名は鳥海モトハル(鳥海素晴)といい、真帆子の実の兄だった。モトハルは父親ですら匙を投げた家業の芸能事務所を立て直すために自社のフラッグシップとなる「ダイヤモンドのような女の子(アイドル)」を探していた。そして自社をなんとかしたいモトハルは、勢い余ってロケ隊のプロデューサーに、乱入した少女は自分のトコロのアイドルである、などと、とんでもない大嘘をかましてしまう。

一方、その頃。みんくたちは『WANNA-BE』のチュートリアルマスコットであるオムからとんでもない事を聞かされる。実は『WANNA-BE』は未来のソフトウェアであり、過去の人間がこれを使う事は歴史改変という犯罪行為になるという。そして、この事実が未来世界にバレてしまったら、みんくたちは歴史から存在を消去させされてしまうのだと教えられる。

この事実に震え上がったみんくたちは、一度は『WANNA-BE』を二度と使わず永遠に封印することを誓った。

しかし、みんくは真帆子を通じて「CDショップで自分を助けてくれた先輩」の素性と、その追い詰められた苦境を知る事になる。自分を助けてくれた恩人にして、現在進行形で自身の心が惹かれつつある人の苦境を前に、みんくは思わず二度と使わないと誓った『WANNA-BE』を起動させてしまう。

かくしてMink(みんく)はモトハルの苦境を救うとともに、彼の守ろうとしている芸能事務所バード・ミュージックの一員として「ふたりの運命」を始める事になった。そして真帆子と叶花も一時は青くなったものの、みんくの決意が固い事を知り、彼女に協力することにする。

そして「電脳少女☆Mink」はライバルがひしめき、時に人を貶めるトンデモナイ罠が待つ芸能界に立ち向かう。そして案の定、トップアイドルにして大手テレビ局グループ社長家のお嬢様である水原愛純、スキャンダルパパラッチのジョニー堀田らの妨害と罠に苦慮。さらには、みんくが憧れていた男性アイドル歌手にしてヒットプロデューサーであるイリヤや、のちに事務所の後輩となった茜有香も無自覚にトラブルメーカーとしてMink(みんく)の周囲を引っ掻き回しドタバタが加速していく。

だが、その裏でMinkたちの動きを注視する仮想世界からの視線があった。それは『WANNA-BE』の創造主、鏡・J・ファーウェルのものだった。彼は未来世界に自分を認めさせるためにワザと『WANNA-BE』を過去の世界に複数バラ撒いていた。当初はバラ撒いた『WANNA-BE』のうちで唯一使われて成功例となったMinkたちを造物主として操り未来世界へのプロモーションのネタにしようと企んだ鏡だったが、Minkを「モノ」として扱う、その勝手な言動に怒ったみんくたちは鏡を拒絶。鏡への抵抗の果てに、みんくたちは自らの使う『WANNA-BE』から鏡の管理者権限を奪い締め出すことに成功する。だが、その結果として鏡は怒り『WANNA-BE』のバージョンアップ版である『WANNA-BE Ver.2』をネットを通じて無作為にバラ撒くという暴挙に出る。

鏡によって後からバラ撒かれた『WANNA-BE Ver.2』はピンポイントに人の欲望を感知して確実に求める人間の元に届くようにセットされていた。そして人々の欲望を刺激して増幅させ、ユーザーに取り憑いてその欲望を叶えさせるため、邪魔者を全て排除するように仕向けるという凶悪なプログラムと化していた。その牙は「Minkの恋人になりたい」とするMinkのストーカーや「Minkみたいになりたい、アイドルになりたい、皆に好かれたい」と願ういじめに遭った孤独な少女など、心に闇を抱える人間へと巧妙にまとわりつき、彼らをMinkと同じサイバロイドに変身させて欲望の闇に基づく暴挙へと駆り立てる。みんくたちは、その対処にも追われる事になるのだった。

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