「おっし、少年採用!」
CV:小栗旬
概要
都内の一角で小さな編集プロダクション『K&Aプランニング』を営んでいる男性。
年齢は42歳(小説版、66ページ)。アウトローな雰囲気に違わない自由人だが、人当たりのいい面倒見のよさも備えている。
社長でありながらライターも兼ねており、都市伝説をはじめとするエンターテインメントの提供のためにアシスタントの須賀夏美とともに日夜取材と執筆に奔走している。
主人公の森嶋帆高とは東京行きのフェリーのなかで知り合い、家出中の身である彼を案じて自身の連絡先を載せた名刺を渡す。その数日後、須賀は自らのもとを頼ってきた帆高に対して「インターンシップ」と称して取材への同行と原稿作成を命じ、彼の素質を見定める。そして、その働きぶりを通して見込みありと判断した須賀は正式に帆高をアシスタントとして雇い入れ、事務所に住み込みで働かせることになる。
人物
容姿
適当に生やした無精髭や無造作な頭髪、ゆるんだように垂れた一重の細い目がいかにも自由人風な、ひょろりと背の高い中年男性。髪に混じる白髪や髭まわりの吹き出物、ざらりと乾いた肌、節くれだった指先など、ごまかしの効かない年相応の特徴もいくつか現れ出ている。
また、赤い派手なタイトフィットのシャツをはじめとして、彼のまとうファッションはその雰囲気と相まってお洒落にもだらしなくも見えるものであり、帆高や夏美たちから「とっつきやすく近しくも感じられる大人」という印象で受け取られている。(『天気の子』映画公式パンフレット、24ページ)
性格
軽薄そうな笑みを浮かべる気だるげな無頼人で、無責任さをひけらかしたり半笑いで相手をはぐらかすこともしばしばある。
その実、うさんくささとは裏腹にリアリスト(現実主義者)な常識人としての一面も持ち合わせており、公序良俗に基づいて物事の優先順位や善悪の判断を見定める冷徹さを秘めている。なお、時には自身の小心ぶりによってリアリズムに徹しきれずに葛藤してしまうこともあり、そのような彼の様子を見た夏美からは「中途半端でダサい」と評されてもいる。(小説版、187~188ページ)
生活環境
東京都新宿区山吹町の一角にある会社の事務所を住居としており、いつもはそこで暮らしている。(小説版、32ページ、56ページ)
4年前に元あったスナックをリノベーションして構えられたその事務所は、前の店の名残である小さなバーカウンターの周りに本や書類や段ボールなどが雑然と積まれており、事務所全体が家主の「まあどーでもいいんだけど」という性格を反映したような空気に満ちている。(小説版、32ページ、38~40ページ)
須賀はその事務所で有限会社『K&Aプランニング』の社長(CEO)を務めており、大手オカルト雑誌をはじめとするいくつかの出版社から執筆依頼を受けて特集記事を書き上げる生活を送っている。会社のアシスタントである夏美とともに日夜取材と執筆に奔走する須賀のライフスタイルはあまり規則正しいものであるとはいえず、期日の迫った原稿を仕上げるために夜を徹して取りかかったり、それらの仕事や飲酒の反動で正午を過ぎるまで寝ているというような不規則なものとなっている。
その他
- 整理整頓については無頓着で、飲み干した空き缶や脱いだ衣類をそこらじゅうに置きっぱなしにすることも珍しくない。また、食事についてもあまりこだわりを見せず、帆高が不器用ながら作った味噌汁や目玉焼きも、コンビニで買ってきたカップの味噌汁や総菜でも、とくに感想も区別もなく味わっている。(小説版、57ページ)
- 年齢による衰えを取り戻すために『中年元気! マムシドリンク』『とどめのマカ』『明日へのスッポン』『高麗人参メガMAX』などといった数々の精力剤を飲用しており、その効能の違いを体感としてまとめて『四十代記者が体当たり取材! 精力剤総力レポート』なる記事を作成し、出版社に売り込んだこともある。(小説版、66ページ、129ページ)
経歴
代々議員を世襲する地方の名家の次男として生まれ、両親の期待のもとに育てられる(小説版、158ページ)。しかし、順風満帆に出世コースを歩む兄とは裏腹に、10代のころに東京に家出をした須賀は、そこで間宮明日花(まみや あすか)というひとりの女性と出会う。次第に惹かれあうふたりは、両家の喧嘩にまで発展するほどの大恋愛を繰り広げた末に、めでたく夫婦として結ばれることになる。(小説版、158~159ページ)
夫婦で編集プロダクション『K&Aプランニング』を立ち上げ、それから間もなくして一人娘の萌花(もか)も生まれている。4年前にはスナックをリノベーションした事務所を開き、パーティーとあわせて家族3人そろって記念写真を撮っている。
しかし、幸せな日々は長くは続かず、妻の明日花は不慮の事故によって亡くなってしまう。駄目になってしまった夫の須賀を見かねた間宮家の両親は当時3歳だった萌花を引き取り、現在でも彼女を育てている。須賀は収入面や社会的評価を整えながら間宮家と娘の引き渡しの交渉を続けているが、状況は一向に改善されないまま平行線をたどり、現在に至っている。
また、須賀にとっての明日花は「全部を放り投げてまで会いたい」「世の中全部からお前は間違えていると嗤(わら)われたとしても、会いたい」と強く思うほどの、生涯を通してたったひとりだけのかけがえのない存在であり、いまでもほかの女性との再婚を望まず、一途に彼女のことを想い続けている。(小説版、159ページ、185ページ、238ページ)
主要キャラクターとの関係
森嶋帆高
離島から家出して東京にやって来た16歳の少年。
須賀は帆高のことを「少年」「帆高」と呼んでおり、対する帆高は「須賀さん」と呼んでいる。
東京へ向かうフェリーの甲板上で、突然のスコールに打たれて船外へ押し流されそうになってしまった帆高を間一髪のところで助けたのが、ふたりが出会ったきっかけとなっている(小説版、19~20ページ)。須賀はそののち、帆高の命を救った「恩人」として彼に多額の食事とビールを奢らせるが、同時に彼の身の上が家出少年であることも察し、「もし東京でなんか困ったことがあったらさ、いつでも連絡してよ」と言いながら自身の連絡先の載った名刺を手渡している。
その数日後、根無し草同然の生活に耐えかねた帆高からの連絡を受けた須賀は、彼に新宿にある事務所まで来るように伝える。名刺に記載された住所に従って事務所を訪れた帆高に、須賀は「インターンシップ」と称して前もって予約していた取材への同行と、その内容をもとにした記事の作成を命じる。そして、帆高の働きぶりを見て「見込みあり」と判断した須賀は、彼を新しいアシスタントとして採用し、事務所に住み込みで働かせることを決めた。
須賀はアシスタントとしての帆高に対し、「社会の娯楽を舐めんじゃねえよ」という意気込みのもとに彼の仕事に対して厳しい校正の目を向けているが、同時に「お前はもうちょっとマシになれる」と一人前の従業員としての公平な気遣いもかけている(小説版、63ページ、160ページ)。帆高もまた、そのような日々の叱責(しっせき)を通してわくわくするような向上心を実感するとともに、須賀の仕事に対する真摯(しんし)な姿勢をかっこいいと思うようになる。
なお、須賀が帆高に支払っている月給はわずか3000円である。食事代は別途支払いで家賃はなし、スマートフォン代は会社払いで済ましているものの、須賀からその額を告げられた夏美は「やっす! 超ブラック! 訴えられるわよ」と唖然とした様子で応じている。(小説版、134ページ)
須賀夏美
須賀の事務所でアシスタントをしている女子大生。
須賀は夏美のことを「夏美」と呼んでおり、対する夏美は「圭ちゃん」と呼んでいる。
須賀にとって彼女は姪(兄の娘)にあたり、互いに馬が合うこともあって仕事を手伝わせている。これまでも、生まれたばかりの萌花を抱き上げさせたり、事務所開きの際に須賀たち3人の家族写真を撮ってもらったりと、須賀やその家族たちとは昔から深い関わりを見せている。
現在では、就職活動のただなかに置かれている彼女に対して「いい加減まともな会社に就職しろ」と繰り返し発破をかける一方で、元から人間好きな彼女の働きぶりを「俺などよりもよほど熱心に取材仕事に向き合っている」と高く評し、優秀なアシスタントとして認めている。(小説版、131~133ページ)
関連イラスト
赤シャツ姿
黒シャツ姿
関連タグ
森嶋帆高 - 離島から東京に家出してきた16歳の少年。須賀の事務所の新しいアシスタントになる。
須賀夏美 - 須賀の事務所でアシスタントとして働いている女子大生。
外部リンク
参考文献
- 新海誠『小説 天気の子』 角川文庫 2019年7月25日初版発行 ISBN 978-4-04-102640-3
- パンフレット 映画『天気の子』 東宝 2019年7月19日発行