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事故概要編集

発生日時1989年9月15日
発生場所大西洋上 ハリケーン・ヒューゴー内
機材 WP-3D
乗員15名
乗客1名(取材の為搭乗していた新聞記者
犠牲者0名(全員生還)

命知らずのハリケーン・ハンター編集

1989年9月、アメリカ海洋大気庁(以下NOAA)はアメリカ大陸に接近中でシンプソン・スケールにてカテゴリー2〜3に相当すると思われるハリケーン・ヒューゴーを観測するためバルバドスのグラントレー・アダムス国際空港からWP-3DオライオンN42RF号機(以下NOAA42)を飛ばし、ハリケーン内に突入して観測を行うことにした

彼らはハリケーン・ハンターと呼ばれ、接近するハリケーン内部に突入して詳細な気象データを持ち帰るのが任務である。彼ら曰く「たいていの場合()ハリケーンは意地悪ですけどw」「命知らずと言われますが死にたいわけじゃありません、任務だから遂行しているだけです」「向いてるのは危険を厭わない人です、やりたがる人はあまり居ませんねw」らしい。危険な任務ではあるもののハリケーンが発生すれば日常的に行われる任務なので彼らからすれば特に変わったこともないいつも通りの任務である。


…………色々とツッコミどころは多いが


ハリケーンに突入、しかし……編集

気を取り直して、ハリケーン・ヒューゴーの観測任務が始まった。観測はNOAAだけではなく空軍予備役と共同しての観測活動になった。NOAA42は高度460メートルからハリケーン内部へ侵入し、その上部から空軍予備役の観測機C-130(コールサインTEAL57。以下TEAL57)が続く形となった。

が、突入前にNOAA42の胴体下部にあるレーダーが故障するというトラブルに見舞われ修理のためしばらく旋回待機を余儀なくされた

NOAA42は機首と胴体下部にレーダーが存在し、機首のレーダーだけでも観測自体は可能だが範囲や精度は胴体に比べ劣るため精密なデータ収集は胴体のレーダーが不可欠。

しかし機器の故障ごときで引き返すという選択肢は彼らにはないのである。幸運(?)なことにエンジニアの修理によってレーダーは回復しこれで突入準備は整った。


ここまでで番組尺的に20分ほどの時間を要しているが、ここまでにチラチラ起きているトラブルは全て「よくある事」「ハリケーンに突っ込んでいるのだから当然起こること」のどちらかであり番組の主題ではない


嵐の中のトラブル編集

NOAA42はヒューゴーに突入し観測を開始。遅れてTEAL57も上空から観測を開始した。観測されたデータは風速は時速250キロ、気圧は960ミリバールを示しており、これはカテゴリー4に相当する勢力だった。機体は乱気流で激しく揺れ、機内の物品が固定されていたにも拘らず散乱するほど過酷な環境だった。

比較的勢力が落ち着いている中心部のに向かって飛行しているうちに勢力はどんどん増していき、しばらく飛行していると風速363キロと気圧930ミリバールを記録し本来の予想を遥かに上回るカテゴリー5のハリケーンであることが確定した。NOAA42はパイロット2人がかりで乱気流に抗い続けたが高度を維持しながら中心部に向かうのがやっとの状態だった。

しかしそんな中第3エンジンで火災が発生。排気口からは約9メートルの火柱が上がっていた。これに気づいたクルーは爆発を防ぐため第3エンジンの燃料ラインをシャットアウトし緊急停止させた。結果火は消え、爆発の危険は去ったが制御はさらに困難になった。


一難去ってまた一難編集

乱気流を3発のエンジンのみで飛行する無理のある状況だっただがなんとか乗り切り、中心部の目に到達した。しかし帰るまでが遠足とはよく言ったものか、今度は来た道を戻らなくてはならない。しかもエンジンは一機死んでいる。

そして更に状況は悪化する。パイロットの一人が外を見ると、第4エンジンのプロペラに乱気流で破損した2mほどある防氷ブーツの布切れがついていた。もしこの布切れが外れて空気流入口に入ろうものなら第4エンジンまで死んでしまう。これが現実になればNOAA42は右側の推力を全て失ってしまうことを意味していた。当然この状態でまた乱気流を突っ切るのは自殺行為であり、無事に帰還するには来た道より乱気流が弱い高い高度を飛ぶしかなかった。

しかしエンジンが一機死んでいる状況では思うように高度が上がらず第4エンジンも上述の理由に加えてエンジン内部が高温になっていた為出せる出力は限られていた。上昇するには機体を軽くするしかない。

クルーはエンジンが一機死んでその分重量物となっていた6トンの燃料を投棄することを決断する。同時に機体の損傷状況を確認するためにTEAL57に救援を要請、NOAA42と合流するためTEAL57は目に向かった。燃料を捨てるにあたり火花で引火するリスクを可能な限り減らすためNOAA42は無線やレーダーを含む全ての電子機器の電源を落とした。6トンの燃料を投棄するために15分の時間を要した。

その後TEAL57が合流。いくら勢力が弱い目の中とはいえ飛行機が飛ぶには大きなリスクを伴う環境下で両機は編隊飛行を実施。TEAL57はNOAA42の損傷状況を肉眼で確認し第4エンジンの防氷ブーツ以外は問題ないとされた。更に幸運なことにクルー達は防氷ブーツがエンジンに被害を与えることなく吹き飛んでいたことに気づいた

その後TEAL57はNOAA42が安全に脱出が可能なルートを探し、北東の部分は比較的風が弱いことを伝えた。NOAA42は再び嵐に突入したが最初とは違い大きな衝撃も受けることはなく30分後には乱気流はほとんど収まり晴れ間が見えた。

NOAA42は無事脱出に成功し、バルバドスのグラントレー・アダムス国際空港に帰還した。その直後ハリケーン・ヒューゴーはカリブ諸島と東海岸を襲い、勢力はカテゴリー4にまで弱まっていたものの百人以上の犠牲と90億ドルの損害を出した。



まさかの事故原因編集

さて、NOAA42はなんとか命からがら脱出して無事任務を果たしたわけだが何故第3エンジンがいきなり燃え出したのか。

まず考えられたのはハリケーンの乱気流でエンジン内部が損傷したことだった。実際フライトレコーダーを解析したところ、設計で想定されていた過負荷の3倍に相当する衝撃がNOAA42を襲っていたことが判明する

しかし問題の第3エンジンを分解してみたところ原因は意外なものだった。なんと燃料センサーの故障により燃料が過剰供給されエンジン内で異常発火したというものだった。これは一般的な航空機に見られるような典型的な欠陥であり、ハリケーンは全く関係なかったというオチだった


その後編集

とはいえNOAA42が突入した箇所はのちの解析で最も危険な箇所だったことが判明する。これはNOAA42のレーダー探知能力では正確な危険箇所が判断しきれなかった為だという。その後のマニュアルで安全のため危険箇所はなるべく避けて突入すると改訂されたのは言うまでもない。……突入するのはやめないんだな。まあそういう仕事なんだけれども。

なおNOAA42は2022年時点でもハリケーン・ハンターとしての任務に就いている。


クルー達編集

メーデー!航空機事故の真実と真相では再現映像においてこれからハリケーン内部に突入するというのにみんなやけにノリノリで、インタビューにおいてもいい笑顔で過去のことを振り返ってる。また防氷ブーツのトラブルに最初に気づいたクルーは再現映像にて「第4エンジンに愛着はないな?」だったり燃料を捨てるに時に「帰りに観光はできなくなるけど?」と明らかに状況に反してネジがブッ飛んだ迷言が飛び交っていた。トラブル一個取るだけで番組一本が作れる密度なのにいつもと雰囲気が違うことからメーデー民の多くからハリウッドでやれ」と総ツッコミを受けることになった。

もっとも、こういう命がけの仕事は良く言えばどんな状況でもユーモアを忘れないような性格、悪く言えばネジが2、3本ほど飛んでる性格を持つ人間が向いているのかもしれない。



関連映像編集


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メーデー!航空機事故の真実と真相

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