概要
1988年、ボストンのスラッシュメタルバンドエクセキューショナーのベーシストだったセス・プットナムによって立ち上げられたバンドである。
リズムや歌詞、楽曲タイトルなどの音楽要素を廃した「アンチ・ミュージック」を目指しており、
彼らのサウンドは激烈なスピードで演奏されるギター・ドラムサウンド、音階を完全に無視してひたすら高い声で叫び散らすボーカルと従来の音楽性を覆す凄まじいものになっている。
その音楽性は後にグラインドコアの中でも特に過激でラウドなジャンル「ノイズグラインド」の音楽性として確立していくことになる。(また、この時セットで語られるバンドとして「7 minutes of nausea」や「Sore throat」等が挙げられる)
2011年にリーダーのセス・プットナムが死去。彼の死をもってバンドは解散した。
正式なバンド名は「ANAL CUNT」であるが、後述するようにあまりにもアレな名前なため、レコード会社は本記事の題名のように略することが多い。
メンバー
※メンバーの入れ替わりが激しいバンドの為最終メンバーのみ記載
- セス・プットナム(媒体によってはセス・パットナム)とも
ボーカル・ギター担当でバンドの創始者兼リーダー
2011年6月11日死去。
- ジョシュ・マーティン
ギター担当
2018年にエスカレーター事故により死去したことが報じられた。
- ティム・モース
ドラム担当
音楽的特徴
簡潔に言えば「激烈な歌詞を激烈な演奏に乗せて激烈な声で叫び散らす」というもの。
具体的に言えば上記したようにリズムや歌詞、楽曲タイトルなどの音楽要素を廃した「アンチ・ミュージック」を目指した音楽性で、特に最初期の音源である「1st demo」(2011年に発売された初期音源のコンピレーションアルバム「The Old Testament」に収録されている)や1stスタジオアルバム「Everyone should be killed(邦題:皆殺しの唄)」ではひたすら叩きまくるドラム、ひたすらノイズを掻き鳴らすギター、そしてひたすら叫びまくるボーカルが塊となって次々と押し寄せるという凄まじいものだった。
3rdスタジオアルバムの「40 more reasons to hate us(邦題:嫌われ者にゃワケがある)」からは幾分か音楽らしい構成になったが、「音階を殺してひたすら高い声で叫び散らすボーカル」「激烈で速いギター・ドラムサウンド」といくつかの要素は活動終了まで一貫していた。(下記するPicnic of Loveのように一部例外もあるが)
歌詞はナチズムだったりレイシズムだったりシャーデンフロイデ(所謂メシウマ)だったり特定のアーティストに対する誹謗中傷だったりはたまた自虐を含めた内容だったりと色々やりたい放題な内容になっている。
無論冗談半分の曲がほとんどなので真に受けないようにすることが大事なのだが、ライブではその過激な歌詞に激怒した観客と殴り合いの喧嘩になることも少なくなかったようである。
また、歌詞の性質上「FUCK」「CUNT」「GAY」等ダーティーワードが頻発するのも特徴である。
ドラマー不在時に作成されたアルバム「Picnic of Love」(1998年発売)では一転してラブバラードとなり、歌詞が非常にマイルドなものになった他、ジョシュの奏でるギターサウンドがアコースティックの柔らかいものになり、セスのボーカルもファルセットを使った優しい歌声で歌い上げるスタイルになった。(ただしボーカルに限っては最終曲の途中で元に戻る)
ファンからは「曲そのものを楽しむと言うよりはいつもの彼らとのギャップを楽しむアルバム」として認知されている模様
2010年発売のアルバム「FUCKIN' A」ではハードロック調の音楽になったが、こちらの歌詞はいつものAxCx節が炸裂している。
その他
バンド名・ロゴについて
上記したようにバンドの正式名称は「ANAL CUNT」である。
意味はANALが「肛門」、CUNTが「女性器」を表すスラングである。即ち日本語でのニュアンスとしては「ケツ・マ◯コ」が近い。
セスによると「最も不快で、マヌケで、バカげたバンド名にしたい」という理由でこの名前にしたとのこと。
そのあまりにもストレートな名前ゆえ店頭に売る際は「AxCx」「A.C.」と略される事がほとんどだが、バンド側もこれを見越して「AxCx」のAとCの部分をそれぞれ肛門と女性器風にデザインしたものをバンドロゴに採用する対抗措置を取っている。
頻出する「GAY」のワードについて
上記したように彼らの曲には「GAY」というワードが頻繁に出てくるがこれは本来の意味である「同性愛者」という意味で使っているのではなく、彼らが活動していたボストン(及びボストンを擁するマサチューセッツ州)の方言で「おバカ・おマヌケ」という意味で使っている。
その為「You're gay」は「お前はお馬鹿さん」という意味になる。
バンドリーダーのセス・プットナムについて
日本国内では「憎悪将軍」のあだ名を持ち、ライブ中喧嘩になった女性の頭をマイクで殴る、来日公演中ライブパフォーマンスの一環としてステージ上で思い切りゲロを吐く、歌詞や楽曲タイトルで実在アーティストを思い切り名指ししてネタにしたり誹謗中傷したりする、フ◯ラの最中に注射(薬物?)している光景のポスターをアルバムに仕込む等過激なエピソードに事欠かない彼だが、国内でリリースされたアルバムのライナーノーツでは実は真面目で寡黙な好青年でかつ純粋なヘヴィ・メタルファンであることが明かされている。
前者に関しては「40 MORE REASONS TO HATE US」のライナーノーツにて来日公演の翌日の取材にて日本の取材班のスタッフとレコード会社のスタッフが約束の時間に遅れて到着したものの、セスと他のメンバーは一切咎めなかったどころか「大丈夫か?事故にでも遭ったのか?」とスタッフを気遣ったエピソードが語られている。
後者に関しては特に「JudasPriest」や「MANOWAR」の大ファンである事を公表しており、それぞれの名曲「Electric Eye」「Gloves of Metal」のカヴァーを披露したこともある。
また、同じくアメリカで活動していたヘヴィメタルバンド「パンテラ」との親交も深く、同バンドのアルバム「The Great Southern Trendkill」にセスがゲスト参加した他、パンテラの方からもボーカルのフィル・アンセルモがAxCxのアルバム「40 MORE REASONS TO HATE US」にゲスト参加している。(全42曲中17曲ゲスト参加している)
アルバムジャケットについて
楽曲もさることながらアルバムのジャケットも衝撃的なものが多い
以下一例
- 40 MORE REASONS TO HATE US(邦題:嫌われ者にゃワケがある)
上記した強烈なバンドロゴがこれでもかというほどデカデカとプリントされている。
シンプルかつ強烈な見てくれでよくTシャツなどのグッズにも採用されている。
- I LIKE IT WHEN YOU DIE(邦題:いい話じゃないですか)
男性がおばあちゃんを崖から投げ落としている
- IT JUST GET WORTH(邦題:怨みはパワー、憎しみはやる気)
斬首台に女性が固定され、その後ろで男性がその女性とコトに及んでいる
裏表紙には「その後」が描かれている。
なお、ここまでのスタジオアルバムは英国先鋭音楽レーベル「イヤーエイク・レコード」からリリースされていた。
- Wearing Out Our Welcome
ヤク中の男性が自分で用意したケーキに向かってゲロを吐いている
- FUCKIN' A
モトリー・クルーの1stアルバム「TOO FAST FOR LOVE」のジャケットをほぼそのまま流用している。(AxCx版はベルトの金具部に上記のバンドロゴがある)
またアルバム上部に書かれた「ANAL CUNT」のフォントもモトリー・クルー風になっている
裏ジャケットはセスがコカインを摂取してると思われる写真が載せられている。
- PICNIC OF LOVE
カップルが木陰で休みながら動物と戯れている
これだけなら平和的でロマンチックなものなのだが、上記した衝撃的なジャケットに見慣れたリスナーにとっては音楽性と共にそのギャップそのものが衝撃的なものとして認知されている。
さりげなく上記のバンドロゴもバッチリ映っているのがアクセント。