概要
バルバル(Balbal)とはフィリピンで伝承される食人鬼アスワングの一種で、夜になるとムササビやモモンガを思わせる皮膜を持つ異形に変身し、それを広げて空を飛びまわる。
ミンダナオ島のマラナオ族の伝承では、この食人鬼は昼間は人の姿で村に暮らしているといわれるが、月光を浴びると正体を現す怪物で、死体を目にすると欠伸をするので見分けが付くという。
パラワン島のタグバヌワ族の伝承では、ミンダナオ島の西部を意味するモロの国からやってくるといわれている。
飛来したバルバルは、衰弱し死にかけている者がいる民家を見つけ出しては屋根に降りたち、長い舌で犠牲者を舐めることで精気を吸いとり殺してしまう。
そればかりか、舌で巻き取って死体を持ち去ってしまうと恐れられている。
また葬儀の際に弔問客を装って訪れ、隙を見てやはり死体を奪ってしまうといわれるので、遺族達は寝ずの番を行う必要があるという。
フィリピンでは葬儀が行われた日の夜にみんなで酒を飲み、カードゲームなどで遊んで起きている理由は、この魔物に隙を見せないための風習がもとになっているからである。
しかし、それでも死体が盗まれてしまうことがあり、その際には棺や墓の中にバナナの幹を置いていくといわれるが、遺族達は幻術によって気づかないともされる。