- フィリピンで伝承される様々な魔物。※この項で説明
- 「GORO瞳孔ヒラキッパーズ」の楽曲。歌詞でフィリピンの妖怪を紹介している。
概要
フィリピンで伝承されている様々な魔物で、地域ごとにたくさんの種類がいるといわれているが、55ほどに分類される少数民族による伝承のものも含めると全容は分っていない。
マレー系民族によるフィリピン神話起源の民間伝承によるものが多く伝わるが、かつてのスペイン統治時代の影響から、現地のものとヨーロッパやキリスト教の伝承が混合したものも多く見られるという。
その中でも、吸血鬼であるアスワングとその一族が有名で、他国のものを含めて数多くの創作に登場している。
一覧
民間伝承
- アスワング/アスワン(Aswang ᜀᜐ᜔ᜏᜅ᜔):コウモリの羽根を持ち空を飛び、長い舌で妊婦の胎内の胎児を殺す吸血鬼と、死体を植物で造った偽物の人間とすり替えて持ち去り食べてしまう食人鬼が伝わる。蝙蝠、犬、豚に変身もできる。
- アマランヒグ(Amalanhig ᜀᜋᜎᜈ᜔ᜑᜒᜄ᜔):墓の中から起き上がって人間に襲いかかる大きな牙のあるゾンビのような怪物。
- アラナ・アキノ(Alanna Aquino):ビサヤ地方に住むという昼間は人の姿だが、夜になるとコウモリ、豚、黒犬などに変身するという人の性液を吸うことを好む怪物。
- ウンガウンガ/ウォウォグ/ウォグウォグ/マグタタンガル/サウサウ・スーカ(Ungga-ungga, Wuwug, wugwug, magtatanggal, sawsaw suka):生首の下に内臓を垂らしたペナンガランのような吸血鬼。
- エクエク/エケク(Ekek, Ek Ek ᜁᜃ᜔ᜁᜃ᜔):エックエックとも呼ばれ、長い舌で妊婦の中の胎児の血を「エックエックエック」と音を立てて吸って殺してしまう。鳥の要素が大きいといわれ、体は分離せずに嘴を持っている。
- クボット(Kubot):長く太い髪の毛の束を触手のように使い、首を絞めたり鼻や口に詰め込んで窒息させながら精気を吸う。
- ティユ・アン(Tiyu-an):母から娘に引き継がれる永遠の子犬を引き連れた長い舌の女性で、子犬の合図で妊婦の中にいる胎児の血を吸う。
- バンキラン(Bangkilan ᜊᜅ᜔ᜃᜒᜎᜈ᜔):名前はクヨノン語で“獰猛な猪”を意味する。大きな黒い猪に変身する能力を持った強力な女性のアスワングであり、接吻しただけで人間をアスワングに変えてしまうという。
- ブサウ/バルバル(Busaw/Balbal):畑を耕し家畜を飼っている普通の人間のように見えるが、正体はグールであり、夜になると墓地や事故現場から死体をバナナの樹とすり替えて持って帰って食べてしまうといわれる。
- ブブー(Bubuu):真夜中に鶏の声で鳴くアスワングで、樹で作られた偽物と人間をすり替えてしまう。
- マナナンガル(Manananggal ᜋᜈᜈᜅ᜔ᜄᜎ᜔):ビサヤ諸島西部に伝わる上半身と下半身が分離して蝙蝠の翼で飛び回り、長い舌で妊婦を狙い胎児を吸い殺してしまう女吸血鬼。
- マトルクラン(Matruculan):胎児を喰らうために女性を妊娠させる怪物で、他人の胎児も狙うので、賢明な夫は出産時の妊婦の腹の上でバリソン(バタフライナイフ)を振り回し追い払うという。
- マンダランカル(Mandarangkal ᜋᜈ᜔ᜇᜇᜅ᜔ᜃᜎ᜔):名前はタガログ語で“カマキリ”を意味する。美女の姿をしており男性を誘惑して食べてしまう。
- マンドゥルゴ(Mandurugo ᜋᜈ᜔ᜇᜓᜇᜓᜄᜓ):日中は美しい女性の姿で、夜になるとキスのふりをして長く鋭い舌で男の血を啜って衰弱死させる
- ワクワク/ティクティク/ソクソク/キリングキリング(wak-wak/tik-tik/sok-sok/kling-kling):翼を持ち飛び回る吸血鬼で、羽音がそれぞれの名前となっている。羽音が大きければ遠くに、小さければ近くに聞こえる幻惑の術を使って、鋭い翼と鈎爪で犠牲者を切り裂き心臓を食べる。
- アグタ(Agta ᜀᜄ᜔ᜆ):バレテやサントルの大樹の上に棲む巨人で、下記のカプレの親戚である。漁師を嫌って邪魔をし、服を盗み、気に入った女性を攫うといわれる。
- アグホイ(Aghoy):ビサヤ地方のサマール州に伝わる小人で、20代の裸足の西欧人のような姿をしており、魔法の道具をくれることもあるが、使ってしまうと最終的に大変な目にあうという。
- アニアニ(Ani-Ani ᜀᜈᜒᜀᜈᜒ):髭を生やした身長5~6mの巨人。平たい鼻、厚い唇、大きな鉤爪のある指、並みの木と同じくらい太い脚を持ち、山羊のような悪臭を放つ。大きな葉巻を吸っていたり、森の中の小道を塞いでいたりする。水牛、山羊、犬に変身する能力がある。カプレとアスワングの混合種といわれるが、どっちつかずの能力しか持たないともいわれる。
- アニト:ルソン島での精霊。
- アリマオンガ(Arimaonga ᜀᜇᜒᜋᜂᜅ):月を食べるライオン。
- アンギータイ(Anggitay ᜀᜅ᜔ᜄᜒᜆᜌ᜔):女性のケンタウロスのような姿をした妖怪。上半身は人間の女性で腰から下は馬の胴体になっており、額から一本のツノが生えている場合もある。
- アングル(Angul):斧の柄で人間を殺害する精霊。
- アンラッバン(Anlabbang ᜀᜈ᜔ᜎᜊ᜔ᜊᜅ᜔):争いをもたらす精霊。
- イーボン・アダルナ(Ibong Adarna ᜁᜊᜓᜅ᜔ ᜀᜇᜇ᜔ᜈ):捕まえた者の願いを叶える魔法の鳥であるが、黄金の木で催眠効果のある七つの歌を全て聴かなければならない。失敗すると糞をかけられ石にされてしまう
- インラブラッブート(Inlablabbuut ᜁᜈ᜔ᜎᜊ᜔ᜎᜊ᜔ᜊᜓᜂᜆ᜔):毛深い大男の姿をした妖怪。ハンサムな男性に変身して人間を誘惑し、そしてゆっくりと元の姿に戻って獲物の人間をむさぼり食う。
- ガウィガウェン(Gawigawen ᜄᜏᜒᜄᜏᜒᜈ᜔):六つの頭部を持った巨人。
- カシリとカユマン(Kasili and Kayumang ᜃᜐᜒᜎᜒ / ᜃᜌᜓᜋᜅ᜔):巨大鰻カシリに巨大蟹カユマンが噛み付くと、カシリは体をくねらせて地震を引き起こすという。
- カプレ(Kapre ᜃᜉ᜔ᜇᜒ):黒くて不潔な巨人で、とても大きな葉巻を吸っている。ガジュマルやマンゴーの樹の影に隠れ、通りかかった人間を化かす。
- カランゲット(Calanget):土の精霊で、彼らの住む土地に家を建てる際に祀らないと祟られる。
- クマカトク(Kumakatok ᜃᜓᜓᜋᜃᜆᜓᜃ᜔):ルソン島とビサヤ諸島に伝わる、タガログ語で「ノックをする」という意味の名の不吉なお告げをする黒づくめの3人組で、真ん中の者は女性で両脇の者は老人であるという。
- グモン(Gumon):人に絡みついて窒息させる悪臭のする毛の塊のような魔物。
- サランガイ(Sarangay ᜐᜇᜅᜌ᜔):耳に宝石を付けた牡牛の様な屈強な獣人。宝石を奪おうとする者には容赦はない。
- サリマノック/マガウル(Sarimanok ᜐᜇᜒᜋᜈᜓᜃ᜔):捕まえたものに幸運を与える聖なる鳥。この鳥のマガウルが突いた竹からマラカスとマガンダ(Malakas&Maganda)というフィリピンの人々の祖が生まれた。
- シエテ・フローレス:輝く羽根を持つ鳥の群れで、人間に襲い掛かり羽根でくすぐってくる。もし耐え切れずに笑ってしまうと石にされてしまう。群れの長を見つけ、その羽根を地面に挿さないと石化は解けない。
- シタン(Sitan):地下世界の神。魂の番人。悲しみと苦しみが渦巻く地下世界カサナアン(Kasanaan)で邪悪を罰する。
- フクロバン(Hukloban):シタンの四人の代行者の一人。悪の女神。手を挙げるだけで人を傷つけたり殺害したりできるが、傷つけた人々を回復することもできる。家々を壊すともいう。
- マニシラット(Manisilat):シタンの四人の代行者の一人。幸せな家族の破滅を担当する。
- マンガガワイ(Mangagaway):シタンの四人の代行者の一人。死をもたらす病の女神。時折、偽の治療師になることもある。
- マンククラム(Mankukulam):シタンの四人の代行者の一人。火災、特に闇夜と悪天候時の火災を担当する。火災が即座に鎮火した場合、犠牲者は命を落とすことになる。
- シッバラユンガン(Sibbarayungan):とても大きな乳房を持つ女巨人。サッパウという巨人の妻だが、夫に捕らえられた人間をこっそり釈放してあげる心優しい存在である。
- ジマリンガン(Jimalingan):病気の時に呼び出される神。
- シラガン(Silagan):鋭い爪を持ち、人間の肛門を突き破って肉を引き裂き内臓を食い尽くす妖怪。白い服を着た者を狙うという。
- シグビン/スィグビン/シグベン/ゼグベン/アママヨン(Sigbin/Sigben/Zegben/Amamayong):地域によって角の無いヤギ、トカゲのようなカラス、カンガルーなどに似るといわれる怪物で、臭い尻尾を持ち後ろ向きに歩く。子供の血を吸って殺し心臓をお守りとして持ち去るという。シグビナン(Sigbinan)と呼ばれる者に使役される使い魔ともいわれる。
- タアウィ/ターウィ(Ta-Awi, Taawi):人食い鬼だが、眼球だけは消化できないので食べない。巨体であるにもかかわらずとても素早く動き、とどろくような大声でマラナオ人の猟師を怖がらせる。
- タイヤバン(Taiyaban):空飛ぶ怪物。人間や動植物の魂を食べてしまう。
- ダマ・デ・ノーチェ(Dama de Noche):スペイン語で「夜の貴婦人」という意味の日本では「夜香花」と呼ばれる植物で、浮気な金持ちの男と結婚したダマという少女が永遠の愛を得るために化身したといわれる。
- タハマリン/タハマリング(Tahamaling):森の動物の守護者である赤い肌の女性姿の精霊。
- タマウォ(Tamawo):金の歯と爪、白い肌を持つ精霊でとても美男子である。植民地時代以前の貴族の姿をしていると伝わる。
- ダラケトノン(Dalaketnon):ダラケトの樹(ベンジャミン)が出入り口になっている異世界に棲む邪悪な精霊で、人間社会では上流階級の人物として潜伏しており、魔法の黒米を使った料理を振る舞い眷属を増やす。
- タワン・リポッド(Tawong Lipod):シルフのような精霊。
- タンバノカノ(Tambanokano):月食を引き起こす巨大な蟹。太陽と月の間に生まれた息子だが、母親である月に腹を立てて月を飲み込もうとする。
- チャナック(Tiyanak):洗礼前に死んだ赤ん坊の悪霊で森に住む。赤ん坊に化けて、人が近づいてくると悪魔の様な正体を現し人を襲う。
- チャルチャル(Chal-Chal):イゴロット族の太陽神。
- ディーラ(Dila):タガログ語で「舌」という意味の悪霊で、田舎にある高床式のニッパハウスの床から侵入して、犠牲者を舐め殺すと恐れられている。
- ティクバラン/ティグバラン(Tikbalang/Tigbalang ᜆᜒᜃ᜔ᜊᜎᜅ᜔):人間の身体に馬頭で馬の後ろ足を持つ魔物で、自らの子を産ませるために女性を襲う。アイギパーンのように悪戯好きで人を狂わせることもある。なお馬はスペイン人によってこの地にもたらされたものである。
- ディワータ/エンカンターダ(Diwata/engkantada):自然の中の精霊、妖精の様な存在。ニュンペーに似る。
- エンカント(engkanto):男の精霊。
- マリア・カカオ:セブ州アルガオの洞窟に住むという精霊で、畑でカカオを育てて黄金の船に載せ人の世界に運ぶという。
- マリア・シヌクアン(Maria Sinukuan):ルソン島のパンパンガ州の火山であるアラヤット山の女神。
- マリア・マキリン(Maria Makiling):ラグナ州の火山であるマキリン山の頂上に住む女神。
- ドゥエンデ(Duwende):妖精のような存在で、ヨーロッパの伝承のゴブリン、ドワーフ、エルフに似る。
- ヌーノ・サ・プンソ(Nuno sa punso):蟻塚に住むと言われる妖精で、足を踏み入れた人間に幸運や不運を与えるといわれるので、現地の者は横を通る際に許可をもらうため声をかけるという。
- ナガ/マリナガ/マリンダガ/マギナガ(Naga/Marinaga/Marindaga/Maginaga):下半身が蛇のように長い魚の尾である海の女神。
- パー(Pah):家と同じくらいの大きさの猛禽類。翼を広げて地上に暗闇をもたらす。
- バクナワ(Bakunawa ᜊᜃᜓᜓᜈᜏ):月食を引き起こす巨大な蛇神。元々は美しいディワータもしくは前述の海の女神ナガだったと伝わる。
- パサッサッ/パサトサト(Pasatsat):太平洋戦争の時代に死んだ者の幽霊ともいわれ、棺桶が間に合わなかったため葦の敷物に巻かれて埋葬されたことから、その姿で現れ通行の邪魔をする。何かで刺して広げると死臭を漂わせながら消える。
- バタングオン(Batanguon):みすぼらしい身なりをした不恰好な妖精だという事以外はあまり知られていないという。目撃者によれば、ぼさぼさの髪に煤まみれの肌をした10代前半の少女の姿で、靴もサンダルも履いておらず襤褸を纏っていたという。
- パティ(Pati):漁師によって呼び出される神。
- バティバト/バティバット/バンゥーンォッ(Batibat/Bangungot):樹木に住む大きな老女姿の精霊。木を伐採した者の寝ているところに訪れて胸に乗り悪夢を見せる。
- ハリヤ(haliya):月の女神。
- バンタイ・トゥビグ(bantay tubig):水域に棲む怪異水妖の総称。
- カタウ(Kataw ᜃᜆᜏ᜔):鰓や鱗を持つ水中に棲む者たちの支配者で、水を自由に操る力を持つ。溺れている人のふりをして、助けようとした者を溺死させることもあるという。
- ショコイ/シヨコイ(Siyokoy):男の人魚であるマーマンで、半魚人のような外見だが緑色の触手を持つともいわれる。
- シレーナ(Sirena ᜐᜒᜇᜒᜈ):人魚。
- パティン・ナ・パクパカン/トリブロン/ティブロネス(Pating_na_Pakpakan, Triburon, Tiburones):ビコル地方に伝わる『イバロン叙事詩』で、英雄ハンディオンとその仲間たちに襲い掛かった翼を持ち空を飛ぶサメもしくはエイの怪物。
- ベルベロカ(Berberoka):池の水を吸い込んで魚を集め、獲ろうと近寄ってきた人間を溺れさせる精霊。ニュンペーに似る
- マギンダラ(Magindara):月の神によって創造された、人を溺れさせる色とりどりの魚の尾を持つ人魚。
- ピニギピゴン(Pinigipigon):黒魔術の儀式で呼び出される残忍な人食い神。
- ピンテン(Pin-teng'):ルソン島のイゴロ人に伝わる霊魂アニトの一種。首狩りで首を斬られた者の霊魂。
- フアン・タマッド(Juan Tamad):世界一といわれるほどの怠け者すぎて、猿たちに死んでいると勘違いされて生きたまま埋葬されてしまった男。
- ブギスギス/ブンギスギス/ブドボド(Bungisngis/Budbod):陽気な一つ目の巨人。バタアン州の森に住んでいる。ビサヤ地方では同じような巨人をブドボドと呼ぶ。
- プゴット(Pugot):イロコス地方に伝わる首の無い黒い巨人。蛇や虫を切り口から食べることで早く走ることができるが、女性の下着を盗むという悪癖がある。
- ブソ:ミンダナオ島に伝わる一つ目で牙のある怪物で、人の腐肉を喰うため罠をはっているが頭は良くないため騙されやすい。
- プムプッド(Pumupud):分娩時に子宮と膣の通り道を塞ぐことで胎児の通行を妨げて難産をもたらす神。
- ペドロ・マタバト(Pedro Matabat):妖精の王。
- ベルナルド・カルピオ(Bernardo Carpio):勇敢な巨人でリサール州モンタルバンの洞窟にスペイン人の奸計により閉じ込められているという。地震は彼が脱出しようともがいているために起こるといわれている。
- マラカット:ビサヤ地方のワライ族が伝承する悪臭のする毛に包まれた獣人。
- マルクポ(Markupo):鋭利な牙、棘のような毛が生えた長い舌、二股に分かれた尻尾、赤いトサカ、恐ろしい猛毒を持った大蛇。
- マナウル(Manaul):鳥になったという伝説の王。空と海を戦わせフィリピンの島々を創ったという。
- マンククーラム/マンガガワイ/マンババラン/ブルーハ(Mangkukulam/Manggagaway/Mambabarang):かつては呪術医として敬られていたが、植民地となった後は黒魔術を使う魔女で悪霊を使役するとされた、呪いで痛みと病気をもたらす恐ろしい存在である。マンガガワイは病の女神由来の魔術師、マンババランは蟲使いであるという。
- マンサラウアン(Mansalauan):赤い宝石のような目、トカゲのような頭部、長い毛に覆われた尻尾、大きな翼、鋭利な舌、人間のような足、サルのような手を持った大きな鳥。
- マンタブンガル/マンタフンガル(Mantabungal, Mantahungal):パラワン島に伝わる悪魔。牛のような姿だがツノは生えておらず、大きな前歯が上顎と下顎に2対ずつ生えており、地面に付くほど長い体毛に覆われた毛むくじゃらの姿をしている。
- マンララヨ(Manlalayog):全身を長い髪で覆われた悪臭のする女妖怪で、その髪で男を窒息させて精気を啜り殺してしまう。
- ミノカワ(Minokawa):月を食べる巨鳥。
- ムルト(Multo ᜋᜓᜎ᜔ᜆᜓ):幽霊のこと。スペイン語で死をあらわすムエルト(muerto)が語源であると考えられている。
- ヤカウ(Yakaw):とある山で佇む精霊。この精霊が佇む山にはコゴン(Cogon)という草が生い茂っているらしい。
- ヤラタンディン(Yalatandin):草地で単独行動をする女性を守護する存在。
- ユムッド(Yumud):水の幽霊。長髪の女性の姿で現れることがあるが、男性の精霊もしくは神とされることもある。水底の岩場や淵に住んでいる無害な精霊であり、白色という色を保有しているらしい。
- ユンガユン(Yungayung):死者の埋葬後の儀式で呼び出される神。唾液で病をもたらす唾吐きと呼ばれる八体の悪霊たちから守ってもらうために呼び出されることもある。
- ランスール(Langsuir):マレーシアに伝わるランスグイルのこと。
- ランポン(Lampong):森の動物を守護する小人で一つ目の白鹿に変身して現れる。傷つけた者は病気にされて死んでしまう。
- リファ(Li'-fa):ルソン島のイゴロ人に伝わる鬼火。死んだ霊魂が現れたものだと考えられており、山上の樹木の間に青い火が燃えていればそれは霊魂がさまよっているのだという。
- ルウ(Ruu):地底に住む豚の姿をした神。強さを奪い、弱さをもたらす。
- ワロ(Walo):八つの頭部と千個の目玉を持つ毛むくじゃらの巨人。
カパンパンガン神話
- アポラキ:太陽神で妹の月の女神マヤリと争った。
- タラ:星の女神で姉の月の女神マヤリが片目を失ったために、ハナンとともに夜の闇を照らす手伝いをするようになった。
- バタラ/ディオス/アポ(Bathala, Diyos, Apo):最も高位な創造神。
- ハナン:朝の女神で姉の月の女神マヤリが片目を失ったために、タラとともに夜の闇を照らす手伝いをするようになった。
- マヤリ(Mayari):月、戦、革命、平等の女神で、兄の太陽神アポラキと争うことになって片目を失い、夜の地上を見渡しきれなくなったので妹神の手助けを受けた。サンバル神話では創造神マラヤリとして崇拝されている。
ビサヤ神話
- ディワタ(Diwata):神々の総称。キリスト教布教により自然の精霊とされた。
- カプタン:空の最高神。
- マグワヤン:海と死の女神。
- リハンギン:カプタンとマグワヤンの子である風神。
- リダガット:カプタンとマグワヤンの子である海の女神。
- リカブタン:リハンギンとリダガットの子である大地の神。
- リアドル:リハンギンとリダガットの子である太陽神。
- リブラン(Libulan):リハンギンとリダガットの子である月の神。
- リスガ:リハンギンとリダガットの子である星の女神。
- シダパ(Sidapa):リブランを愛する死の神。
- ウマラガド:精霊。
- ババイラン:神々や精霊と人との世界を媒介するシャーマンで、女性もしくは雌雄同体や同性愛者である必要があるとされる。
その他
- アギマット(Agimat):お守り。
- アモモンゴ:ネグロス島に棲むという白い体毛の類人猿。
- ウルドゥージャ/ウルドジャ姫(Urduja):14世紀の記録に残る伝説の女王でもある女戦士。
- エレベーターの怪(The Elevator):医者と患者が乗る病院のエレベーターに、途中階から乗ろうとして医者に拒否された別の患者の腕には、死亡したことを示す赤いバンドが巻いてあった。
- カサナアン/カサマアン(Kasanaan, Kasamaan):地獄。
- かみおとこ:マニラ警察署の事件報告書「特殊事件簿No.108号」にあるという人に噛みつく目に見えない怪異。
- さまよう戦艦武蔵:シブヤン海で沈没したとされる戦艦武蔵が、海底に沈まずに彷徨っていたという都市伝説。
- シナラウィタン(Sinalawitan):死者の霊魂アニトが最も恐れる魔除けの槍。日本語の文献だと鳥居竜蔵『日本周囲民族の原始宗教 神話宗教の人種学的研究』などに記述がある。
- 小便幽霊(Shōben Yūrei):洒落怖で語られたサラリーマンの幽霊。日本のフィリピンパブでとある一人のフィリピン人女性に執着しており、彼女が帰宅する時間になる度に現れてはその頭上に小便をかけていたが当人にそれを気付かれる様子は無かった。そして彼女がフィリピンへ帰国するとこの幽霊も全く現れなくなった。その後どうなったのかは語られていないが、もしかしたらこの幽霊は帰国した彼女を追いかけてフィリピンへと渡ってしまったのかもしれない。
- スコブ(Sukob):近親者が亡くなったとき、もしくは兄弟姉妹と同じ年に結婚すると不幸になるというジンクス。
- スネークマン(The Snake Man):有名ショッピングモール・ロビンソンのオーナーが飼っていた人面蛇で、試着室に入った客を襲い食っていたが現在は死んだという。
- チガプラン川の怪獣 :チガプラン川に出るとされる、20メートルの魚竜か魚類に似たUMA。この川が実在するかは不明。
- テニエンテ・ギモ/ギモ中尉(Teniente Gimo):西ビサヤ・イロイロ州の町に住むと都市伝説で語られるアスワング一族の筆頭。
- デビル・マウンテン(The Devils Mountain):ハイキング中に謎の分かれ道が現われて、行方不明者が続出するという山。
- バーゴン:パラワン島奥地の洞穴に棲むという原始猿人。
- ピナツボ・モンスター:ルソン島のティキ川に棲む蛇、もしくはずんぐりとした体型の水棲UMA。
- ビリガン(Biringan):都市伝説として語られる神秘の街。
- フィリピン・フライング・クラスタシアン/フィリピンの飛翔甲殻類(Philippine Flying Crustacean):1914年にアメリカの生物学者に目撃されたトビウオのように飛ぶ未知の甲殻類。
- ブラッディ・ブリッジ/血の橋(The Bloody Bridge):レイテとサマールを繋ぐサンファニコ橋(マルコス橋)は、ストリートチルドレンを生け贄にして出された血をコンクリートに混ぜ込んで建造されたといわれる。
- ヘッドレス・プリースト/顔無しの聖職者(The Headless Priest):大戦中に日本兵に斬首された聖職者の幽霊で、自身の頭を探して歩き回っている。
- ホワイトレディ/レッドレディ/ブラウンレディ/ブラックレディ(white lady/red lady/brown lady/black lady):女の幽霊。死因や有りようによって色が違う。
- カペローサ(Kaperosa)
- バレテ・ドライブ(BaleteDrive):ケソンにある、かつてバレテという木の並木があった道路で、性被害に遭って死んだ少女であるというホワイトレディが頻繁に目撃される。
- マイ・ウェイ・キリングス(My Way Killings):カラオケでフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」を歌った者は不幸になり謎の死を遂げるというジンクス。
- マウント・バナハウ(Mount Banahaw):山頂に謎の光が見えたり、登ろうとしたら別の山頂についておりその間の記憶が無いという、UFOが目撃される不思議な山。
- マカ(Maca):天国。
- マリア・ラボ(Maria Labo):都市伝説に登場する女性。出稼ぎ先の主人によって食人鬼にされ、子供を料理して夫に出したために山刀で顔に大きな斬り傷をつけられ、本物のアスワングになった。
- 山下財宝/ギント・ニ・ヤマシタ/カヤマナン・ニ・ヤマシタ(Ginto ni Yamashita, Kayamanan ni Yamashita):埋蔵金の都市伝説。
- ラングスウィル:昭和期の怪奇系児童書で紹介された妖怪。佐藤有文『ドラゴンブックス 恐怖と怪奇の世界 吸血鬼百科』によれば、フィリピンの奇怪な妖魔ラングスウィルはコウモリのような羽と長い尻尾が生えた猿に似た姿をした吸血蝙蝠の変種だという。常に密林の中や山奥の林を飛び回っており蛇を捕食するが、人間が森の中へ侵入すると人間の声を真似る事で奥へ奥へと誘い込み、上空から飛びかかり頭に齧り付いて生き血を吸う。なぜか子供や赤子は決して狙わず見向きもしないという。
- ルボップ:ミンダナオ島に棲むという類人猿。
- ロンブロン・トライアングル(The Romblon Triangle):ロンブロン州のミンドロ、パナイ、マスバテの三地点を結んだシブヤン海の一帯では海洋事故が続出する。
参考
外国の妖怪のタガログ語での訳名
- カバヨンマイスガイ(Kabayong May Sungay ᜃᜊᜌᜓᜅ᜔ ᜋᜌ᜔ ᜐᜓᜅᜌ᜔):ユニコーンのこと。
- カバヨンマイパクパク(Kabayong May Pakpak ᜃᜊᜌᜓᜅ᜔ ᜋᜌ᜔ ᜉᜃ᜔ᜉᜃ᜔):ペガサスのこと。
- タオンマイパクパク(Taong May Pakpak ᜆᜂᜅ᜔ ᜋᜌ᜔ ᜉᜃ᜔ᜉᜃ᜔):有翼人のこと。
- タオンロボ(Taong Lobo ᜆᜂᜅ᜔ ᜎᜓᜊᜓ):人狼のこと。
- デモニョ(Demonyo):悪魔のこと。
- バンピラ(Bampira ᜊᜋ᜔ᜉᜒᜇ):吸血鬼のこと。
- ダンブハランアハス/ヒガンテンアハス(Dambuhalang Ahas, Higanteng Ahas):大蛇のこと。
- プサンマイパクパク(Pusang May Pakpak ᜉᜓᜐᜅ᜔ ᜋᜌ᜔ ᜉᜃ᜔ᜉᜃ᜔):翼猫のこと。