概要
スペインやポルトガルの位置するイベリア半島で伝承されている妖精たちの総称で、一般的に英語文化圏におけるドワーフやノーム、レプラコーンなどの小柄な妖精と同様な姿と性質を持つとされることが多く、いくつもの種類が伝わっている。
なおこの呼び名「duende」は、スペイン語の「dueñ(o) de casa:家の主人」の短縮形が語源であるといわれ、見た目や性質などは北欧のトムテと起源を同じくしていると考えられている。
大航海時代以降、スペインが植民地としたフィリピンや中南米諸国では、公用語としてスペイン語が用いられるようになり、現地で伝承される妖精や精霊信仰と結びついて、現地の文化の中で独自のドゥエンデが伝承されるようになっている。
分類
スペイン
- アンハナ/アンハナス/アンジャナス(Anjanss):カンタブリアにおけるニンフのような森に住む美しき女妖精で、男を誘惑することもあるが、オハンカヌと呼ばれる一つ目食人鬼から人々を守るという。
- ザナ/ザナス(Xanas):アストゥリアスでの呼び名。
- ヤナ/ヤナス(Janas):カスティーリャでの呼び名。
- モウラ/モウラ・エンカンターダ(Moura encantad):ガリシアやポルトガルで伝承される同様の神格。
- アパバルデクス(Apabardexu):ソミエド湖に住むドゥエンデ。
- ブスゴソ/ブスゴソス/ムスゴソス(Busgosos):葉や苔で身を包んだ背の高いあごひげを持つドゥエンデ。フルートを吹いて羊飼いが森を抜けるのを手伝い、災害で家が倒壊すると修理する。
- デュアニョ/デュアニョス(Diaños):赤ちゃんや様々な動物に化けて人をからかうのが好きな悪戯好きのドゥエンデ。際限なく大きくなる白いロバや、夜中につきまとう黒犬などが知られる。
- エナノ/エナノス(Enanos):森に住む小人のドゥエンデで、農民に財宝の入った袋を与えて堕落させるが、袋の中身は石ころや葉っぱに変わってしまう。落とし物をして困った人を助ける善良なものもいる。
- エルフォ/エルフォス(Elfos):エルフのことで、民話や騎士伝説にも登場する。
- ハダ/ハダス(Hadas):運命や衰退という概念の擬人化で、妖精全般も意味する。
- ノモ/ノモス(Nomos):ノームのこと。
- ヌベロ/ヌベロス(Nuberos):雨や雹、雪などの悪天候を引き起こすドゥエンデ。
- テンティルフ/テンティルフス(Tentirujus):赤い服を着た小さなドゥエンデで、良い子をマンドレイクの魔法を使って悪い子にしてしまう。
- トラスゴ/トラスゴス(Trasgos):家の中に侵入して物を盗む嫌われ者のドゥエンデ。木に登り小石や小枝をぶつけるのも好きで、子供を悪戯好きにすることもある。子供は悪いままでいると最終的にこのドゥエンデになってしまう。
- トロストリロ/トロストリオス(Trastolillos):家の中に住む迷惑なドゥエンデで、小麦粉を小麦に戻してしまい、ミルクは全て飲み干し、火力を高めてシチューを焦がしてしまう。謝罪はするが同じ事を繰り返す。
- トレンティ/トレンティス(Trentis):草木の化身もしくは草木で出来た服を着た小さなドゥエンデで、生け垣の中などに住み、通りかかった女性のスカートを脱がして尻をつまむなど悪戯をする。
- トロナンテ/トロナンテス(Tronantes):雷鳴を意味する稲妻や雷をつくり出すドゥエンデ。
- ベントライン/ベントライネス(Ventolines):緑の羽根を持つ海のディエンデ。年老いた漁師が舟を漕ぐのを手伝う。
中南米
森で迷った人々を助ける小人の姿をした森の精霊であるとされる。
ベリーズなどの中米の島々では、親指が無い森の精霊タタ・デュエンデが伝わる。
メキシコ系住民には子供部屋の壁の中に住むノームのような存在として伝承され、つま先を切り取ってしまうブギーマンとして知られる。
フィリピン
綴りは「Duwende, Dwende」。
洞窟や大きな岩、古木などの自然の中や、家の中で人があまり近寄らない場所に住む妖精。
悪戯好きで善と悪の者がおり、礼儀を守らないと祟られるという蟻塚に住むヌーノ・サ・プンソなどが有名。