概要
Dom/Subユニバースとはオメガバースのように、主にBLの二次創作において登場する特殊設定の一つである(NL、GLでも使用できる)。簡単に言うと、信頼と庇護のバースである。発祥は海外のファンフィクション。BDSM、ひいては現実世界におけるDom/Subプレイを性別という概念で取り入れた設定である。現実世界においては、Dom役とSub役がいる形で、プレイ以外においてはDom役・Sub役としては振る舞わない(ディシプリンに関してはその限りではなく、Dom/Subユニバースに近い形となる。Wikipediaのディシプリンを参照)。
なお、現実世界におけるD/S関係は「ドミサブ」と読むが、Dom/Subユニバースは「ドムサブ」と読む。
Dom/Sub AU(Alternative Universe)、D/S Societyとも呼ばれる。
詳細解説
ダイナミクスという力量関係によって男女の性とは異なる性(Dom、Sub)がある。
DomとSubは信頼と庇護の関係にある(SubがDomを信頼することで、DomがSubを庇護することができる)。
オメガバースとは異なり、男性妊娠といった身体的な特徴はなく、番や運命もない。
また、Dom/Sub/(その他の性)の間での身体的・物理的な格差・強弱はなく、対等である(社会的にはその限りではないこともある)。
なお、単にDom/Subという場合、現実におけるロールプレイのことになり、Dom/Subユニバース(性が存在する世界という設定)とは異なる。
海外作品においては、Dom/Sub Undertone(日本語に訳すなら「ほんのりDom/Sub」)という概念もあり、日本でいうところの801の攻め・受けに近い。
作品によって、Dom/Sub以外の性(下記参照)がある場合がある。
Dom(Dominant:支配的な)
BDSMでいうとS(サディスト)(厳密には異なる)。Subから信頼を受け取り、Subを庇護する。
Subを支配したい欲求がある。以下の特徴を持つが、特徴の強さは一人一人異なる。
おおよそ総攻めとして扱われることが多いが完全なるイコールではなく、「責め」として解釈される場合がある(攻め、責め、女攻め、女責めを参照されると、「攻め」と「責め」の違いが分かりやすいかと思われる)。
Domの特徴
・躾・お仕置きをしたい
・褒めてあげたい
・守ってあげたい
・信頼がほしい
・世話をしたい
Domの傾向
詳細は下記のSubの傾向にある通り、Subと同様Domの特徴をどれくらい持っているかはDom一人ひとりによって異なる。傾向の異なるDomとSubがPlay(後述)する場合、事前の綿密な摺り合わせを行わないと、十分満足いくPlayを行うことは難しい。
Sub(Submissive:従順な)
BDSMでいうとM(マゾヒスト)(厳密には異なる)。Domに信頼を委ね、Domから庇護される。
大原則として総受けであるが、「責められる側」として解釈されることもある。
Subの特徴
・躾・お仕置きをされたい
・褒めてほしい
・尽くしたい
・信頼を伝えたい
・かまってほしい
Subの傾向
上記の特徴を持っているSubではあるが、一人ひとりによってどの特徴をどのくらい持っているかは異なる。上記の特徴をすべて持ち、後述するPlayの内容もハード(鬼畜責め)でなければ、一般的なSub=バニラ(シンプルで特筆すべき事項がない状態のこと。もともとはゲーム用語)系と評することもある。バニラ系をベースに、Playの好みがハードなものであればハード系、Subではあるが同時にツンデレならツンデレ系などなど、特徴の持ち合わせ方を系統で表現することもある。系統の種類は無限にあり、バニラをもとに何が足されているのか?と考えることでSubのキャラクター付けを行うことができる。こういった系統は必ずしも明示する必要はなく、各人物の傾向である。
Switch
DomとSub両方の特徴を持ち合わせた性別。DomとSubの特徴が入れ替わる。
入れ替わりのタイミングは本人の任意だったり、周囲の状態によったり、コマンドだったりとさまざま。
Usual/Normal/Neutral など
DomでもSubでもSwitchでもない性別。つまり、ダイナミクスを持たない性別。作品によって呼び方が異なるが、これは社会設定などが反映されているためである。
Usual
「一般的な」という意味。Dom/Subの割合が少ない場合に用いられる。
Normal
「普通の」という意味。Dom/Subに偏見などがあり、「普通でない」と受け取られている場合に用いられる。
Neutral
「中性」という意味。Dom-Neutral-Subという、どれもが独立した性ではなく、連続した性であり、その真ん中あたり(Dom/Subいずれの性としての気質も有していないあたり)にある性として用いられる。
Play(プレイ)
DomとSubの間では、特殊なコミュニケーション=Play(プレイ)を行うことで、種々の欲求を満たし、信頼関係を築くことができる。
Playの前に、SubのNG行為や好きなこと、苦手なことを確認することで、円滑に行うことができる。特に、前述した傾向が一致しないDom/Subの場合、確認を怠るとPlayがうまくいかず、Sub drop(後述)に陥らせてしまったり、十分な欲求を満たせないことになる。
Playにおいて、コントロール権を持つのはSubであり、そのコントロール権をDomに預けている形である(だからこそ同意が必須であり、DomはSubからいただいたコントロール権を大切にしなくてはならない)。コントロール権を不当に奪う行為は、強姦などと同じく、犯罪である(ことが多い。強姦などがまかり通る設定であればその限りではない)。
Command(コマンド)
Playにおいて、DomがSubに対して用いる命令・指示。DomがCommandを出し、Subがそれを遂行する、というのがPlayの基本的な流れである。
Safe word(セーフワード)
DomのCommandが行き過ぎてしまわないように、DomとSubの間で決めてある言葉。普段口にせず、とっさに口にできる言葉が望ましい。一般的なものとしては、信号機の色(止まれ)の意味から連想される「赤(Red)」があるが、Subが自由に言葉を決めてよい。
SubがSafe wordを発した場合、Domは行為を止めなくてはならない。
Safe wordそのものに拘束力がないこともあれば、Safe wordを使われることでDomにダメージが入ることもある。
Domに従い命令を達成することで満たされるSubにとって、Safe wordを使うことは、Domに反逆するように感じとても負担になる。DomはSubをSafe wordが使えるように躾けたり、万が一Safe wordを使われた場合、Safe wordを使えたことを褒めないと、Safe wordを使いにくくなってしまう。
Care(ケア)
Subをたくさんほめたり、スキンシップをとって、Subを全肯定する行動のこと。何がCareになるかはSubによるが、基本的にはほめてほめてほめまくる。Subが不安定なときに怠ると、Sub dropに陥りやすい。躾やお仕置きなど、Subにとって負担となる行為の後には、後述するAfter careが必須である。
After care(アフターケア)
DomがSubに対して躾やお仕置きなどのあとにCareすること。
Domは必ずしなければならないことが常識。怠るとSub dropに陥る。
Sub space(サブスペース)
Play中に、Subの意識が完全にDomにコントロールされてしまうこと。単にスペース、サブスペとも。
どんなことでSub Spaceに入るかは、Sub一人一人で異なる。
Sub spaceに入ると、頭がお花畑状態になったり、ふわふわした感覚に包まれたりする。
Subの体質、経験、なによりDomとの信頼関係がないと入ることができない。
DomがきちんとSubの意識をコントロールしないと、急激に落ちてきてSub dropに陥ることもある。
Collar(カラー)
DomとSubの関係成立の証としてDomがSubに送る首輪のこと。Subがこれをつけると精神的に安定する。首輪だけでなく、当人たちがCollarであると認識しているものであれば、精神的な効果を得られることもある(例えば指輪、ブレスレット、写真など)。Collarが外されると精神的に不安定になる。
Defense(ディフェンス)
Domが自分のSubに危害が加えられた時に陥る状態。
Subを過剰に保護しようとして周囲に対し暴力的になってしまう。
後述するGlareを周囲にまき散らすこともある。
Domが「この人は自分のSubである」「自分のSubに危害が加えられた」と思えば発生するため、相手のSubが実際に自分のSubであるかは問わない。
Sub drop(サブドロップ)
簡単に言うと、Sub spaceの対となる言葉。
DomとSub同士で信頼関係が築けていない、Domが躾やお仕置きなどの後Subをそのまま放置する(After careを行わない)場合、強いGlareを浴びた場合などに起こる現象。
幸福感、幸せな感情よりも緊張や不安が高まってしまい、Subが疲労感、虚無感を覚えてしまう。重症になると気を失ったり死に至ることもある。
Glare(グレア)
Domが躾やお仕置き中などに不機嫌になったときにSubなどに浴びせる、所謂目力のようなもの。オーラ、威圧感とも。
浴びせられたSubは身体が震えてしまったりと恐怖に飲まれ、Sub dropに陥ることもある。服従を示すKneelやRollの体勢をとってしまうこともある。
躾・お仕置き・ご褒美
DomとSubが円滑かつ深くコミュニケーションを行うためには、SubをDomが躾けて、躾に対し反目した際にはお仕置きをし、躾中やお仕置きを受けられたとき、Playをしているときなどにご褒美を与えることが重要である。
躾
いわゆる躾そのものも含まれるが、DomとSubの間で約束事・ルールを決めるといった、Dom好みにSubを仕立てる調教のような意味もある。
Commandがきけるように訓練する、門限を決める、などなど。
躾であるので、たとえうまくいかなかったとしてもお仕置きをするのは逆効果。Sub Dropに陥るリスクがある。できたところまでをきちんと褒めて、日を重ねながらじっくり躾けなくてはならない。ルールであれば、だんだん厳格化するなど、段階を踏むことで、SubにDomの命令をきけた達成感を感じさせ、よりDom好みに躾けていけるようにする。
お仕置き
いわゆるお仕置きではあるが、BDSM的なものも含まれる。Subが躾けられたことを守らなかった場合に行い、躾られたことの再確認、躾を破ったことの反省をさせる。Subにとって苦手なことを行うことが一般的。ただし、NG行為は行ってはならない。
たとえお仕置き好きなSubであっても、お仕置きを受けきったSubをきちんと褒めることが大事。褒めなければ、いつまでお仕置きなのかわからず、Domを怖がってしまうこともある。
また、お仕置きの途中でSafe wordを使われた場合、その行為は即座に止めなくてはならない。同時に、Safe wordを使えたことを褒める。
Sub dropに陥りやすい行為ではあるが、DomとSubの間では必要不可欠な行為でもある。
ご褒美
Reward(リワード)ともいう。
躾、お仕置き、Play中などで、Subを褒めることは必須。多かれ少なかれ、Subには「褒められたい」という欲求があり、そのためにさまざまなことを頑張るためである。
褒め方はいろいろあるが、「Good boy(girl).」「Good」と褒めると、褒められていることがSubに明確に伝わりやすく、同時にCommandが達成できたことを認識でき、次のCommandに移りやすくなる。
その他の特殊な慣習
※以下の内容は、作品によってあったりなかったりする。
Claim(クレーム)
DomがSubに対しCollarを送ること。結婚と同義・同等な場合もある。
ひいては、Domがほかの人々に対して、「このSubは自分の庇護下にあるのだ」と主張することになる。
Subの地位が著しく低い場合などに、Subの同意なくClaimが行われる場合もある。
一人のSubを巡り複数のDomがClaimすることはできず、複数のDomによるClaimが発生した場合は、一人のDomのみがClaimすることができる。どのDomがClaimするかは、Dom同士の力量を比べて決めることが一般的である。ただし、最も強いDomであっても、ClaimをSubに断られることもあるため、最終的にはSubにClaim相手の決定権があるといえる。
契約書
Claimしたり、パートナーになったりした際、好きなこと、苦手なこと、NG行為などをまとめ、躾方・お仕置きの仕方・褒め方などを書き、Dom/Sub双方がサインする。
抑制剤
オメガバースと同様、抑制剤が存在することもある。Dom/Sub共に、自分自身の欲を鎮め、安定した生活を送るために用いる。副作用があり、薬が合わない場合もある。
Dom/Sub専用の病院(もしくは科)があり処方されるケース、ドラッグストアで買えるケースなどさまざま。
抑制剤はあくまで抑制するもので、欲そのものは消えないため、Playすることが欲求解消には最も有効である。
ランク・レベル
Dom/Subとしての力・欲求の強さを、わかりやすく段階的に評価する場合もある。
Dom同士であれば力の強さ(自分より強いか弱いか)を理解できるが、それ以外の組み合わせの場合理解ができない、客観性に欠けるといった問題点があるため、統一的な指標としてランク・レベルを用いることができる。