概要
陸上自衛隊の観測(偵察)ヘリコプターOH-6カイユースの後継として、さらなる偵察力の向上をめざして開発された、国産の観測ヘリコプター。
ひそかに忍び寄り情報を奪うことから『ニンジャ』の愛称で呼ばれている。
設計を開始した1993年からわずか3年後に試作機を組み上げ、初飛行させるという、航空機にあるまじき開発スピードで完成に至った。もともと川崎重工内で基礎研究が進められていたというのもあるが、米国からの圧力を避けるため、ある程度形になるのを待ってから開発を正式発表したことによる芸当である。
胴体幅は1メートル以内とかなりスリムであり、両脇にハードポイントつきの安定翼をもつ。正面からは縦長の台形状にも見える。前方投影面積を小さくすることにより、被発見率・被弾率やレーダー反射断面積を抑えていると考えられる。陸上自衛隊が運用している攻撃ヘリコプターのAH-1Sとよく似たシルエットをしている。
搭乗員は二名で、通常は視界の広い後席が操縦席となる攻撃ヘリコプターと異なり、後席で観測を、前席で操縦を行う。
前線での偵察任務を想定し、安定翼のハードポイントには増槽および自衛用の91式携帯地対空誘導弾が搭載可能。
また、「OH-1改」と仮称される改修型はAH-64Dのもつ戦術データリンクと連携が可能で、専用のデータリンクポッドを小翼(スタブウイング)に搭載する。
メインローターには関節のないヒンジレスハブローターを採用し、高い操縦応答性を得ている。
従来の半関節型・全関節型ローターが採用されなかった理由として、急降下や起伏の激しい地形における地形追従飛行などの急激な動作を行った際に、ローターヘッドが負荷に耐えきれず破壊する危険性があげられる。山がちな地形の多い日本での運用には、ヒンジレスハブローターはもってこいのシステムといえよう。
ダクテッド式のテールローターは、通常と異なる不等間隔による配置となっており、騒音低下に一役買っている。
実際にOH-1が付近を飛行していた状況において、「少し遠くをヘリコプターが飛んでいると思っていたら、予想していたよりかなり近くにいた」という経験をしており、音だけでは距離を誤認するレベルである(編者体験。感じ方には個人差があります)。
ホバリングの安定性は高く、パイロットが手放しでも安定した状態で静止することが可能となっている(OH-1配備部隊による展示飛行では、ホバリング中に操縦手、観測手が両手に持った日の丸扇子を機外へ差し出し、完全に手を離しているというアピールをする)。また、機首を80~90度傾けた状態での急上昇や急降下、背面宙返りなど、その機動性は非常に高く、動画サイトでは飛行中の動画に対して「お前の飛び方はおかしい」とコメントされるほどである。
同様の機動が可能なヘリコプターは、同じヒンジレスローターを採用するBo105等、ごく少数である。
そして手にした栄誉
その卓越した性能により、優れたヘリコプターに贈られるハワードヒューズ賞を、米国製ヘリ以外で初めて受賞している。
発展型について
現在、陸上自衛隊の次期攻撃ヘリコプターでもあったAH-64Dの調達が価格高騰により中断したため、下画像のようなOH-1の重武装化案が出ている。
スリムな外見で自衛用の空対空ミサイルも搭載可能なことから、もともと重武装化を想定して設計されていたのではないか?との意見は登場時からあった。
ただし正式な発表はされておらず、後に陸自が攻撃ヘリを全廃して無人機で代替する計画を打ち出したため、この案が採用される可能性は実質的にかなり低い。
また、次期汎用ヘリコプター(UH-X)としてOH-1ベースの開発が予定されていたが、2012年にこれに関する官製談合が発覚し、白紙撤回されている。
後に民間転用(民間機としての販売)も視野に入れ、ベル・ヘリコプターの「ベル412EPI」をベース機としてベル社と富士重工業社の共同開発により開発することが決定した。
4年間も飛行停止
そんなOH-1であるが、なんと4年もの間全機が飛行停止の憂き目にあった。
これは2015年2月17日、エンジントラブルが原因の墜落事故が発生し、調査の結果エンジンに不具合が見つかり改修が必要になったためである。
その後は一部の機体が改修のための飛行試験を行っているだけの状態が続いたが、2019年3月1日から、ようやく順次飛行再開していく事になった。