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概要編集

1831年にドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒとフランスの科学者ウジェーヌ・ソーベイラン、サミュエル・ガスリーのそれぞれによって同時かつ個別に発見され、1847年にイギリスの医師ジェームズ・シンプソンによって実用化された揮発性麻酔薬の一種。


メタン水素原子のうちが3つが塩素原子に置き換わったもの。

分子式CHCl3で表される。トリクロロメタンとも。

常温では無色で、甘い味を有し、強く甘い芳香をもつ。


19世紀までは麻酔の主流として使用されていたが、後に強い毒性(不整脈や多臓器不全、発がん性を有し、致死性がある)が発見され、20世紀初頭にはより安価で人体に安全で効果的なジエチルエーテルが麻酔の主流となった。更にそのジエチルエーテルも可燃性が非常に高く電子機器との併用が難しいため、現代では吸入による麻酔は常温で気体である亜酸化窒素が使われている。


創作でのクロロホルム編集

犯罪を扱ったアニメ等では、ハンカチなどに含ませた上で対象者の吸気口を覆い、揮発したクロロホルムを吸引させることで昏倒させ、拉致誘拐などの用途に使われることが多い。とくに小説をテレビドラマ化する際の改変で安易に用いられる例が目立つ。



クロロホルムに対する誤解編集

この描写は実際には不可能に近いものであるが、上記のシーンに多用されたため未だに誤解している人も少なくない。


まず麻酔性を発揮するには相当量のクロロホルムの吸引が必要であり、実際には「クロロホルムに漬けたハンカチなどを口元に当て、5分ほど深呼吸させる」ことでやっと麻酔性を発揮する。成人男性であれば少なくとも10分近くかかる。多少の吸引では効果がなく、良くて咳や吐き気や頭痛を誘発する程度であるため、そもそも即時に昏倒させる目的には使い物にならないのである。

さらに、揮発性が非常に高いクロロホルムはかなり早い段階で効果が薄れてしまうので、多量に染み込ませたところで、5分も維持するのは難しい。


仮に吸入に成功したとして、前述したようにクロロホルムには高い毒性があるため、用量を厳密に操作しなくては肝臓や呼吸器に障害を引き起こし、昏倒どころかそのまま殺してしまう危険がある。また、口にあてた部分から一生残る皮膚の爛れが残る可能性が非常に高い。当然使う側にも危険が及ぶ可能性もあるなど、使用には相当な管理能力と知識が必要である。


昏睡させるために多量に使い、多量に吸入させてしまうと死なせる可能性が高い方法といえ、目的と結果がまったく噛み合ってない。


更に日本では毒物及び劇物取締法の医薬用外劇物に指定、労働安全衛生法の第二類物質特別有機溶剤等に指定されるなどの厳しい規制を受けているため、一般人がおいそれと入手できるものではない。


元祖シャーロック・ホームズシリーズでも、上記の手口でクロロホルムで相手を昏睡させるケースが複数回登場しており、これがミステリーやサスペンス作品でクロロホルムの危険性を度外視して多用させるそもそもの素地となった可能性が高い(ホームズシリーズが主に刊行された19世紀末には、まだクロロホルムの危険性が充分膾炙されておらず、医療現場でも実際に睡眠導入剤として利用されていたことが、原作者コナン・ドイルを含めて誤解を助長させたようである)。


またR-18系統の拉致監禁物などで相手を眠らせて連れていく際に上記のように口元を塞いで薬品を嗅がせるシチュエーションのことを「クロロホルム」または「クロロホルムレイプ」ということもある。ハンドギャグ的性的嗜好に近いが、こちらは対象が眠りにつくまでがワンセットなのが基本的。


若干ニッチであるものの一定の需要が(R-18、性別問わず)あるシチュエーションなのだが、近年上記のような「ドラマのクロロホルムのシーンはデタラメだ」的な情報がTV番組などで紹介されて以降、かなり数が減っており、またある場合でも玉石混交かつ石が非常に多く、その筋のファンが満足できず絶望している状況である。


主な具体例について語っている作品。コメント欄の意見も参考にしてほしい。


無論、これらのシーンで重要なのは、あくまでそうした展開やシチュエーションのほうであるため、使用薬物が厳密にクロロホルムである必要はなく、架空薬物でも構わない。

また、ユーモアミステリーなどでは、「クロロホルムを用いて眠らせようとして失敗する」というパターンも見受けられる。


医学の歴史におけるクロロホルムが創作に登場する例としては、手塚治虫陽だまりの樹』にて(作者の先祖でもある)幕末の外科医が最新の麻酔薬としての効能を絶賛するシーンや、攘夷浪士の治療で麻酔をかけようとして毒殺と疑われるシーンが描かれている。

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