概要
微分の逆であり、関数による曲線が作る領域の面積を求める方法でもある。
微分と併せて微積分と呼ばれる。
文字通りの面積の他にも、立体の体積を求めたり、速度(瞬間の速度の関数)から距離を求めるのにも応用される。
関数が作る領域というのは、例えば下イラストの中の灰色の部分の事であり、関数の曲線と横軸が作る面を縦に切り取ったものである。
横軸より下側の面積はマイナスとして扱われる。
この面積は、関数の(特定範囲における)合計に相当している。
例えば棒グラフの場合は、全ての棒の長さを足し合わせる事で合計を求める事ができる。
一方で関数は、無限に細い棒による棒グラフという見方ができるが、それらの長さを全て足し合わせてしまうと、棒の数もまた(無限に密集しているため)無限であるので無限大になってしまう。
それをまともな値になるように調整すると、それは面積となって来るわけである。
逆に言えば、領域を無限に千切りにして、各切れ端を無限に細い長方形と見なし、その面積を合計する事によって元の領域の面積を求めようという考え方である。
そのようなアプローチで積分を求めるのは大変であるが、実際には微分の逆を考えれば良いだけとなっている。
なぜこれが微分の逆となるかと言うと、変化を合計すれば元の値となる、という事を考えると、当たり前といえば当たり前とも言える。
尤も、それでも微分よりも大分計算が難しく、微分の計算は機械的にできるのに対し、積分の計算は工夫が要る事があったり、まともにはできないという事も多々ある。
ただ、微分には微分不可能な場合があるのに対し、積分は計算や表現が難しいだけで、値が無限大とかになってるわけでなければ、積分の内容自体は存在している(√2を小数で表現しきれないのと似たような感じ)。
ここで言う面積というのは、いわゆる図形の面積よりももう少し抽象的なものであり、縦軸と横軸が共に長さであればそのまま面積を意味するが、縦軸が面積ならば体積を意味し、横軸が時間で縦軸が速度ならば距離を意味する。
表現法など
微分の逆と言うのは、例えばaxを微分したらaになるので、aを積分したらaxになる、という事である。
しかし、ax+6の微分もaとなるので、ax+6もまたaの積分という事になってしまう。
これは例えば、速度がわかっていても、出発点がどこなのかによって位置は変わって来るが、そういう場合に相当している。
面積部分はあくまで、未知要素である出発点との差となっている。
そこで、その未知要素をCという定数で置いて、aの積分はax+Cである、というように表現される。
このCは積分定数と呼ばれる。
微分の結果が導関数と呼ばれるのに対し、このような積分の結果は原始関数と呼ばれる。
微分がdy/dxのように表現されるのに対し、積分は∫ydxと表現される。
この∫はインテグラルあるいは積分記号と呼ばれ、数列で言う所のシグマ(∑、総和記号)の役割をしている。
ydxが無限に細い棒の面積に相当し、∫はそれを合計するよという事を意味する。
通常、∫とdxで挟まれた部分が、積分の対象となる関数となっている。
f(x)の微分をf´(x)と表現する事に対しては、積分はF(x)のように大文字とする表現がよく用いられる。
関数の作る面積だけを求めたい場合には、Cは不要である。
そういう場合、積分の結果をF(x)と置いてF(b)-F(a)を求める事によって、a~bという範囲における面積を出すというやり方が用いられる。
bまでの面積からaまでの面積を引けばa~bの面積となる、という寸法であり、ここでCも打ち消し合って消える。
このような計算は定積分と呼ばれ、下イラストのように∫の上と下に範囲の値を書く事で指定できる(この場合はx=-1からx=2の範囲での面積が出て来る)。
範囲の値が定数ならば、結果も定数となる(1変数の場合)。
範囲には∞が指定される事もある。
対して先程のC入りの積分は不定積分と呼ばれる。
不定積分は「微分の逆」という側面が、定積分は「関数の作る面積」という側面が強め。
変数が複数の場合
重積分
微分の場合、複数ある変数の内の1つだけを変数と見なした上での微分は偏微分という特殊なものとして扱われたが、積分の場合の同様のものは偏積分…とはなぜかあまり言わず、普通のdxを用いた積分で表現される。
また、積分の場合は∬f(x,y)dxdyや∭f(x,y,z)dxdydzのように、残りの変数についての積分も同時に行われる事が多く、このような積分は重積分と呼ばれる。
変数の数に応じて、二重積分、三重積分とも呼ばれる。
圧力×面積で力が求まるのは、圧力が一様な場合の話であり、圧力が一様でなければ積分を使う事となる。
力は圧力の二次元的な合計であるため、二次元的な積分が必要となるのである。
単に「xで積分した後yで積分する」とはちょっと違い、常に定積分として計算される。
範囲の指定についても、積分したい範囲の領域をSと置いて、∬の右下にSとだけ書くという抽象的な表現が用いられる。
実際に計算する際には通常、各∫に具体的な範囲を指定して順次積分を行う形となるが、これは厳密には逐次積分(累次積分)と呼ばれ区別されているらしい。
∬f(x)dxdxのように、同じ変数に対して積分を繰り返す場合は重積分とは呼ばれない。
線積分
変数が複数の場合には他に、曲線に沿って積分する線積分というものもある。
1変数の場合で例えると、それはx軸に沿った線積分である。
1変数の場合はx軸以外に沿うものが無かったが、2変数の場合ならxy平面上に様々な曲線を考える事ができるため、それらに沿っての積分も可能となるのである。
曲線に沿った距離をsと置いて、xとyをsの関数とした上での積分となっており、結局の所は普通の積分の形となる。
微分における全微分と似ているが、全微分の場合とは異なり、sには「曲線に沿った距離である」という条件が付いている(これにより、ds^2=dx^2+dy^2のような関係が成り立ち、xとyが他の変数で表現されている場合には、これを変形して利用する)。
この曲線が輪っかの一周を描いている時には特に周回積分と呼ばれる事があり、∫の代わりに∮が用いられる事もある。
曲面に沿って積分をする面積分というものも存在し、こちらは二重積分の形になって来る(線積分の二重積分版、もしくは二重積分の線績分版という感じ)。