概要
「瞬間の速度」と深い関わりを持つものであり、積分と併せて微積分と呼ばれる。
速度はよく「10秒間に何メートル走ったか」などから計測されるが、それはその10秒間における「平均の速度」であり、その10秒間の間にどう加減速したかまではわからない。
この10秒という間隔を、1秒、0.1秒とどんどん縮めて行くと、得られる結果は瞬間の速度に近づいて行く。
大雑把に言えば、このようにして瞬間の速度などを求める方法が微分であり、この場合「無限に微小な距離の差」を「無限に微小な時間の差」で割り算している。
平均の速度がその10秒間の間で一定であるのに対し、瞬間の速度は瞬間毎に違い得るわけなので、時間に対する関数となる。
数学的には、関数の変化を見る操作となっており、それはその関数の接線の傾きの関数を得る事となっている(接線自体では無い)。
例えば定数だけの式の場合、変化が無いわけなので、微分したら0となるし、一次関数の場合、変化が一定であるので、微分したら定数となる。
微分で得られた関数は導関数と呼ばれ、元の関数がf(x)ならばf´(x)、yならy´のように、ダッシュを付けるなどして表現される。
導関数がどんな式になるかについては、後述のような公式が確立されており、各々極限を用いて導出される。
定義としては、ここでは正確な表記ができないが、あえて強引に表記すると
f´(x) = lim(t→0)(f(x+t)-f(x))/t
のような感じとなっている。
これは、f(x)の変化であるf(x+t)-f(x)を、xの変化である(x+t)-x=tで割り、その上でtを限りなく0に近づけたものを意味している。
f(x)の変化を⊿f、xの変化を⊿xと置いて、
f´(x) = lim(⊿x→0)⊿f/⊿x
のような表現もなされる。
f(x)=0という方程式では、f(x)とx軸との交点におけるxが求まるが、それに対してf´(x)=0では、f(x)が極大値(山状の部分の天辺)や極小値(谷状の部分のどん底)を取るようなxが求まる。
この事は、複雑な関数の概形を知る際によく利用される。
絶対値関数のように、折れ曲がっている部分を持つ関数の場合、その折れ曲がってる点については接線を定める事ができず、そこでは微分不可能であると表現される。
不連続な部分(主に鉛直な段差がある所)も微分不可能であるが、逆は成り立たず、絶対値関数がその例となっている。
幾何学における曲線や曲面の解析にも用いられており、微分幾何学という分野がある。
汎関数というものにおける微分のようなもので変分というものもある。
dを用いた表現
y´やf´(x)は、dy/dxやdf/dxとも表現され、どちらかと言えばこれが正式表記である。
y´という表現はシンプルではあるものの、何で微分したかが曖昧であり、場合によってはdy/dxという表現の方が本質と密接で解り易く、応用も利く。
つまり「瞬間の速度=d距離/d時間」だったわけである(通常はこれを、距離をx、瞬間の速度をv、時間をtとして、v=dx/dtと表現する)。
このdは特殊な意味合いを持っており、間違ってもdy/dxを約分してy/xとしてはいけない。
dy/dxは、「d/dxという演算子がyに掛かってるもの」のような感じで扱われ、d/dxの部分を微分演算子とか微分作用素と呼ぶ事もある。
ただ、1/(dy/dx)=dx/dyという関係は成り立っており、dxとdyはそれぞれ独立した項のように扱う事ができる。
対数関数の微分は、これと指数関数の微分の結果を利用して以下のように求まる。
y=log(x) ⇒ x=e^y ⇒ dx/dy=e^y ⇒ dy/dx=1/(e^y)=(x=e^yにより)1/x
逆三角関数の微分も同様に導出できる。
uもまたxの関数である場合、(dy/du)×(du/dx)=dy/dxという普通の分数のような関係も成り立つ。
微分の微分
導関数に対して更に微分が行われる事もあり、これは2階微分と呼ばれる。
結果は2次導関数と呼ばれ、(d^2)y/(dx)^2のような、ここでは表現し辛い形で表現される。
先程のdxとdyとは異なり、(d^2)yと(dx)^2を独立の項のように扱う事は出来ず、あくまでd(dy/dx)/dxを強引に略した表現のような感じ(?)。
ダッシュを用いる場合は、f´´(x)やy´´のように、ダッシュを2つ付ける形となる。
微分が速度ならば、2階微分は加速度というイメージ。
f´´(x)=0では変曲点(関数の曲がる方向が変わる点)におけるxが求まる。
また、f´(x)=0の時のxを代入する事によって、その時のf(x)が極大値なのか極小値なのかが判定でき、f´´(x)>0なら極小値、f´´(x)<0なら極大値、f´´(x)=0ならどちらでもないとなる。
更に微分すれば3階微分となり、結果は3次導関数となる。
2変数の場合
f(x,y)のように、別々に指定できる変数が2つ以上の関数を微分する場合、主に偏微分というものが用いられる。
これは片方の変数を定数と見なした上での微分となっており、dの代わりに∂(パーシャル、デル、デー、ラウンド)という記号が用いられる。
一見ただの微分と変わらないが、例えばf(x,y)のxによる偏微分をdf(x,y)/dxと書いてしまうと、df(x,y)/dx=df(x,y)/dy×dy/dxとなるはずなのにdy/dxが定義できず、定義できたらxとyが独立でなくなってしまう、などの不都合がある。
3変数の場合も同じで、∂f(x,y,z)/∂xならば、yとzを定数と見た上での微分となっている。
これに対して通常の1変数の微分は常微分と呼ばれる。
偏微分の場合は∂yと∂xは独立した項のように扱う事はできず、1/(∂y/∂x)=∂x/∂yも成り立たない。
更に、v=uなのに∂/∂v≠∂/∂uであるケースもあったりなど、色々と扱いに注意が要る。
例えばf(x,y)=x+yの場合、x=u、y=u+vとすると、∂f/∂xが1であるのに対し、∂f/∂uは2となってしまう。
見た目は同じ∂であっても、何と何を変数と見た上での偏微分なのかによって実質的には別物となっており、それによってこのような違いが生じる、という解釈ができる(?)。
∂f/∂xの∂fは、xだけが微小変化した時のfの微小変化であるのに対し、∂f/∂yの∂fは、yだけが微小変化した時のそれであり、この時点で∂fの意味にも違いが生じている事がわかる。
xとyが共にtのみの関数である場合、f(x,y)もまたtのみの関数と見なす事ができ、df/dtという普通の微分で表現できる。
このような場合、偏微分に対して全微分と呼ばれたりする。
全微分と偏微分の間にはdf/dt = (∂f/∂x)×(dx/dt) + (∂f/∂y)×(dy/dt)という関係がある。
三次元の空間に関する偏微分の場合は、(∂f/∂x,∂f/∂y,∂f/∂z)という形や、∂f/∂x+∂g/∂y+∂h/∂zという形がよく出て来るが、これらは∇=(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂y)と置く事で、前者は∇f、後者は内積の形で∇・(f,g,h)のように簡潔に表現する事ができる。
この∇(ナブラ)はナブラ演算子などと呼ばれ、演算子部分のみをベクトルのように扱ったものとなっており、これを用いた代表的な演算として勾配(grad)、発散(div)、回転(rot)が存在。
基本的な微分の公式
※a^bはaのb乗、xは変数、nは任意の定数、eは自然対数の底、f(x)、g(x)は任意の1変数関数、f´(x)はdf(x)/dx。
元の関数 | 導関数(微分の結果) |
---|---|
n | 0 |
x^n(n≠0) | n×x^(n-1) |
e^x | e^x(変化しない) |
log(x) | 1/x |
sin(x) | cos(x) |
cos(x) | -sin(x) |
f(x)+g(x) | f´(x)+g´(x) |
n×f(x) | n×f´(x) |
f(x)g(x) | f´(x)g(x) + f(x)g´(x) |
f(g(x)) | f´(g(x))g´(x) |