651系
ろっぴゃくごじゅういちけい
概要
JR東日本が常磐線特急「ひたち」の新型車両置換えを目的として設計・新製した特急形電車。同社が分割民営化後初めて投入した新型特急形電車でもある。
登場当初のキャッチコピーは「タキシードボディのすごいヤツ」。
1989年3月11日のダイヤ改正より、「スーパーひたち」として運行開始した。
在来線特急としては初めて最高速度130km/hでの運転を行っている。
1990年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
2012年には後継車両のE657系電車が投入され、2013年3月16日のダイヤ改正で「スーパーひたち」「フレッシュひたち」から引退した……のだが、E657系がLEDランプの設置工事を行うことになったため、2013年10月から2015年3月まで「フレッシュひたち」1往復で復活する事になった。
さらに10月17日、郡山総合車両センターに入場していたK109編成が1000番台に改番されて大宮総合車両センターに配給輸送された。
車体
車体はステンレスやアルミ合金ではなく、普通鋼製となっている。
が、そこは年代の差。国鉄時代の鋼製車両よりもかなりの軽量化が行われている。
編成は基本編成が4M3Tの7連、付属編成が2M2Tの4連。
ドア数は片側1ドアとなっている。
車内
普通車の座席は従来通りの4列(2+2配列)座席であるが、シートピッチ(座席の間隔)は国鉄型の910mmから一気に970mmへと拡大された。
グリーン車はシートピッチ1160mm・3列(1+2配列)の座席となっている。
ちなみにグリーン車の座席の内、一人がけの方はどこぞの異層次元戦闘機と同じ「R-9」という型番のものを使用している。多分対バイドミッションも余裕だろう。
主要機器
制御には205系や211系で実績を積んだ界磁添加励磁制御を採用している。
界磁添加励磁制御は抵抗制御の延長線上の制御方式であり、主電動機の外側にある「界磁」というコイルに(半導体素子などで制御される)別電源からの電流を流しこんで速度制御を行う方式。「弱め界磁制御を連続して行なっている」と説明される場合もある。
抵抗制御の延長線上と言われると、一見すれば「電機子チョッパが実用化されていて、(当時は)VVVFも実用間近なのになんでそんなローテクな方法を?」と思ってしまうかも知れない。
しかし、界磁添加励磁制御は装置の価格が非常に安価(一番金がかかる電力用の半導体も電機子チョッパなどと比べて小容量=安価なもので済む)・電車用として非常に優れた特性を持つ直流直巻電動機を使用出来る・回生ブレーキが使えるなど、総合的に見れば実用面で有利な点が結構多い。「コスパに優れた次世代の抵抗制御」なのである。
主電動機も205系などでお馴染みのMT61形電動機を使用している。
MT61は定格出力こそ120kW(一部では150kW)と国鉄型の主力電動機であるMT54と変わらないが、コンピュータ設計の導入などにより効率や許容回転数が格段に向上しており、性能は圧倒的に向上している。
どれくらい性能が向上したのかといえば、例を挙げると
(ギア比を小さくすると起動加速度を犠牲にする代わりに高速運転向けの特性になり、逆に大きくすると高速性能を捨てる代わりに起動加速度を高くできる)
- 205系は103系と(ほぼ)同じギア比1:6.07なのに、ブレーキを強化するだけで110km/h運転に対応できる(京葉線用・阪和線後期車両)
- 計画のみで終わった187系はMT61によるオールMを採用し、機関車無しで碓氷峠を登り降りすることを目標としていた
などの事例で、MT61の潜在性能が垣間見れるだろう。
上にも書いたとおり、MT61なら130km/h運転程度であればギア比は4.82もあれば余裕でできるのである。
しかし651系のギア比は1:3.95と、結構低めに設定されている。これは一体何を意味しているのか・・・?
台車は205系などのDT50系列を元に高速安定性を強化し、さらにヨーダンパを追加したDT56系ボルスタレス台車を使用。
ブレーキシステムは回生ブレーキと機械ブレーキを併用したものを使用する。
しかしここで一つ問題がある。
直流区間であれば回生ブレーキを使うときは、主電動機で発生した電力(電動機と発電機は殆ど同じ構造であり、電動機の軸を動力を使って回転させれば電動機を使って電力を発生させることができる。これをブレーキに応用したのが電気ブレーキである)をそのまま架線に押し戻すだけでいいが、交流区間ではそうは行かない。電制時に電動機で発生する電力は直流電力であるためだ。
では、どうすればいいのか?
なんのことはない。力行時に整流用に使っているサイリスタブリッジ回路を、交流区間での回生制動時には「50Hzのインバータ」として運用してやればいいのだ。これにより、交流区間での回生制動を実現している。
補助電源装置にはブラシレスMG(ブラシレスモーターを使用した電動発電機)を使用。
電動空気圧縮機は低騒音型のC-2000L系列のものを使用している。床下に付いている魚の骨のような形状の部品が空気圧縮機だ。
隠し持った性能
先述の通り、651系はMT61を使用する車両としてはかなりのローギアである1:3.95に設定されている。
さらに運転台。正面に鎮座する電光表示式の速度計は180km/hまで表示可能なものを採用してる。
これは何を意味するのか。
実は651系は、当時建設中だった北越急行線での使用も検討されていたと言われており、それを見越して160km/h走行が可能な性能を与えられている。
(でも651系って50Hz専用の車両のはずだったよな・・・仕様変更するつもりだったのか?)