必要なものは、体(てい)で捉える。
肌で感じ、音にたずねて、あとはそこにある理(ことわり)と原理に従って、わずかな力で本流を正せば、弱力強伏(じゃくりょくきょうぶ)も真(まこと)になる。
これが鴨川に伝わる術(じゅつ)にして、力なき者達の戦う術(すべ)さ。
概要
「九十九の満月」の世界(以下、九十九世界)に登場する神技(かみわざ:後天的な努力で手にする能力)。
鴨川合戦剣術は式術でもなければ妖術でもない、己の肉体のみを使い実践を想定した実戦剣術。刀などの武器術や、相手の力を利用して流して返すいたって単純な運動力学を利用した武術の要素も取り入れた流派である。
合気の流れも組んでいるが、その本質は守りの技じゃなく肉を斬らせてまでも骨を咬む信賞必罰・立身出世の野心の拳。
戦国時代ならいざしらず、平時の時代を迎えたとされる作中では必要のない技で、護身術には過ぎたるものと言われているが…。
この剣術で戦う武士(もののふ)の雄姿を見た者は「鬼のように強かった。」、「まるで…軍神(いくさがみ。戦神(いくさかみ:最強の武人に付く称号)?)」と評している。
剣術の誕生経緯
(鴨川)合戦剣術が誕生したのは”戦国時代”の合戦場。
多くの剣術は互いに急所を露出させた生身での戦いを想定して作られている。だが合戦場においては両者共に甲冑を纏っており、刀の通る部位は極めて少ない。
そこで編み出され、鴨川によって磨かれたのが―
合戦剣術(かっせんけんじゅつ)
これは相手を組み伏せた後に、鎧の隙間から刀をすべらせ首などの急所を切り裂くのである。その為、斬ることよりもまず相手を投げ、組み伏せることに活路を見いだした柔らの剣である。
これが―
日本刀(たましい)のみで戦場を駆け上がった武家の「技(わざ)」であり、
幕府剣術指南役御三家が一つ「鴨川家」の「業(わざ)」である。
稽古
鴨川合戦剣術は実践を想定した実戦剣術。そのため傷が絶えない厳しい稽古が行われる。
武術
どんな相手の動きにも対応できるよう、体(たい)は力を抜いて、手は両手(もろて)で腰に添える。矢の当たる部位を減らすために、体は半身ひねって正面面積を減らす構えを取る。
そうしたならば、あとは目に頼らずに流れを肌で感じ、音に尋ねて、体で捉えて、流れを制す。これが鴨川合戦剣術すべての「始まりの型」であり「最強への道」の始まりである。
……はい、そんなわけで師匠が「いい」と言うまで、この体勢を何時間でも維持する訓練を行う。
子どもや青年、修羅?ごとに、合気道のような組手といった稽古で無刀の剣術を鍛錬する。生真面目に学ぶ姿勢と素質があれば、わずか3ヶ月にして初段の域に到達する門下生がいる。これは一番下の段だが、ここまで上達するのはすごい事らしい。
武器術
竹刀・真剣での剣術や十手術といった武器の稽古も行う。他の剣術と異なり正道の概念はなく、戦場にあるもの全てを武具とする訓練も行われる。
鴨川本家の門下生は皆、身体中キズだらけ。とある鴨川の人間には、胴体・両腕などに刀傷のような傷跡があり、厳しい稽古を受けてきた事が窺える。その人物が言うには「あんなもんは拷問だ。」、「戦場だ。」と生き地獄だったらしい。
ほんと、よく生きてたな…。
鴨川の技
過酷な稽古を修了し免許皆伝となれば、関節がない妖怪ならいざしらず、人型の妖怪・鬼と渡り合える実力者となる。
素手ならばー
- 暴走状態の鬼を体裁きだけで投げ・組み伏せる。
- 妖怪の放つ無数の弾を全て払い落とす。
- 打撃で相手の身体・武器を破壊する。
武器を使えばー
- 剣術は勿論の他、割り箸や鍋といった初めて使用する調理器具(ぶき)でも、大剣をも捌いて砕く戦いを繰り広げる。
- 十手を持てば、離れた場所からでも相手の関節を取る。
- 抜刀術が得意の者なら、お腰につけた専用剣を使うことにより、妖怪組織の隊長ぐらいスポポポンと斬ることが出来る。
免許皆伝者
上記のように合戦剣術で戦うだけでなく、中には鬼が放つ見えない刃に孕んだ殺気を感じ取って躱す実力者がいる。その人物が言うには、目に見えないなんて些末なことで剛力の価値など寸毫と同じとの事。力に頼るだけでなく、空気の流れを肌で感じることさえできれば、鬼技(おにわざ:超能力)どころか自身に降ってきた刃物の雨を除け、刃の部分を掴んで受けとめて戦える事を、瞑目した状態で証明した。
また戦闘中に妖怪と口喧嘩でバカ騒ぎしながらも、僅かな気先(きさき)を捉えれば再び戦闘状態に移行する干戈(かんか)の手練れでもある。
関連タグ
鑢六枝、鑢七実、鑢七花・・・刀を使わない剣術「虚刀流」の使い手。己を刀とする流派で、その体技は敵の刀を折り砕く強力なモノ。