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演:波岡一喜

概要

錠前のディーラー。異世界からインベスを呼び出せるロックシードという錠前を、若者たちに売りさばいている素性不明の男。

その正体はユグドラシルコーポレーションのエージェントと言える存在で、呉島貴虎(ひいてはユグドラシルコーポレーションの戦極ドライバーの実験)の協力者。

性格

錠前ディーラーとしては皮肉げな言動が目立つ軽薄かつ飄々とした態度で振舞っているが、その本質は非常に狡猾かつ傲慢な性格で、度々自らが「大人」であるということを強調し、

逆にビートライダーズを始めとする若者達の事は「子供」呼ばわりして頭からバカにして見下している。

若者の中でも特に直情的で理想家な紘汰の事は、本性を露わにする以前から忌々しく思っていたらしく、ユグドラシルの一員として本格的に敵対する様になって以降は「聞けば聞くほど虫唾が走るような奴」と強い忌避感を露わにしていたが、一度敗北した挙句、チェリーエナジーロックシードを奪い取られて無様に撤退させられるという屈辱を味合わされて以降は、半ば逆恨みに近い形で紘汰に対する恨みを募らせ、明確な殺意を露わにする程に憎む様になる。

このように、「大人」を自称するわりには、事ある毎にそれを盾にして自分より格下と見た者達に対し高圧的に振る舞い、初瀬を抹殺する事を『正義の行為』と主張して微塵も悪びれず、さらには自分の失態を素直に認めなかったり、返り討ちにあったりすると直ぐに逆上したり、目につけた相手をネチネチと恨み続けたりする等、言動の端々に見せるその短気ぶりや幼稚さや、特定の役職を持たず汚れ役を任される事を「大人」として唯々諾々と従いながらも、密かに自らの立ち位置に不服を抱く様子から見ても、実際はシドの方が「子供」ではないかと思わせる面が多くあり、若者達に敬意を向けられる事が無いのも、シドに大人としての自覚や人望が無い卑小な人間である事を伺わせている。

特に、後述する今際の際に発した台詞は、シドが大人になれていない『子供』に過ぎなかった事を強調している。

新世代ライダーの一人であるシグルドとしては、鎧武バロンを殺す気で攻撃するなど、その性格に似合った非情なバトルスタイルを好み、ゲネシスドライバーの圧倒的な性能もあって当初は他のビートライダーズを容赦なく圧倒していた。

一方で、元来の慢心しやすい一面が祟って、鎧武やバロンに強化形態へのアームズチェンジを許し形勢逆転される事も多く、さらに新たな力を得て本人も成長し続けている紘汰や戒斗を相手に次第に遅れを取るようになり、切り札であるシドロックシードを使ったスイカアームズの独立操作でも、カチドキアームズを装着した紘汰に一蹴されるなど、次第にその強さや立場共に陰りを見せるようになっていく。

劇中において

ディーラー時代

物語開始当初、沢芽市では彼以外にも錠前ディーラーの姿が随所に見られ、今やストリートの勢力分布はいかに強いロックシードを持つかに左右されている。但し戦極ドライバーだけは非売品で、彼が目をつけた者に無償で与えている(他のディーラーがドライバーを与えた描写・事実はない)。

葛葉紘汰駆紋戒斗呉島光実そして城乃内秀保初瀬亮二曽野村に戦極ドライバーを(前2人はロックビークルも)提供し、自ら(正確にはユグドラシル)の手のひらで踊らせるような形で、戦う運命へと身を投じさせる。

紘汰達の戦極ドライバーは「プロトタイプ」であり、彼はその使用者をモルモットとして監視する役目を引き受けている。しかし貴虎を恐れている風を装いつつ弟の呉島光実にも密かに戦極ドライバーを与えるなど必ずしも貴虎の思い通りに動いているわけではなく、彼なりの思惑を隠し持っていた(10話ではチーム鎧武の2人が新たに提案した「ゲーム」を「貴虎の一存で物事が決まる」現状への不満も手伝って受け入れている)。

11話終盤での紘汰の態度からインベスゲームの秘密に感づかれたことを悟ったのか「そろそろ店じまいだな」と呟き、それ以降はビートライダーズの前に姿を見せなくなった。

アーマードライダー時代

14話で仮面ライダーシグルドの変身者として再登場。初瀬亮二が変貌したヘキジャインベスを倒した。初瀬を救えなかったことで悲しみに打ちひしがれる紘汰の前で悠々と変身解除。「街を荒らした怪物を倒したんだ、これは正義ってやつだろ?」と煽るようなことを言い、紘汰の怒りを買った。

続く15話では、ユグドラシルから脱走しようとする紘汰の前に現れ、初変身(14話では変身前の姿はぼかされていた)。ドライバーの力の差もあり紘汰を圧倒する。だが加勢に入った戒斗との連携に翻弄されて頭に血が上り、2人を殺しにかかろうとして湊に制止された。

この頃はまだ新世代ライダーの代表格として、圧倒的な実力を見せつける立場だった。紘汰たちには逃げられたが黒星はなく、貴虎の仲間にふさわしい風格を見せていたとも言える。

だが19話では、チューリップロックビークル部隊を従え堅固な防御体制を敷いていたところを、さほど苦労せず紘汰たちに突破されてしまう。また頭に血が上り、変身解除した戒斗を一方的になぶるような攻撃を仕掛けるが、今度は戒斗に興味を持った戦極凌馬に制止される。

そして第21話にて貴虎が紘汰を気にかけているような発言をした事に危機感を覚えたのか、凌馬に確認を取ってから、前々から目障りで気に食わなかった紘汰を消すべく行動開始。銀行強盗を企てている2人組に改造ロックシードを提供した上で罠を仕掛けつつ、自身はシグルドに変身し襲い掛かり、ガイムに変身していた紘汰を圧倒する。

そしてユグドラシルの隠している真実が街の住人達にばれてしまった時は機密保持の為に(おそらく凌馬一派の考えでは)街ごと消し去ろうと考えていることをあざ笑いながら伝え、止めを刺そうとする。

しかし、その事実を知ったことで紘汰の怒りを買ってしまい、ジンバーレモンアームズに変身した事により形勢は逆転。鎧武の猛攻を前に逆に圧倒された末、無頼キックを受けて敗北。変身が解かれると同時に、チェリーエナジーロックシードを奪われてしまい、更に迫る紘汰に窮地に追いやられるものの、その場へと様子を見に来ていた光実の手助けを受け、小物臭い恨み節を吐き捨てながらなんとか逃げおおせるという醜態を視聴者に見せ付けてしまった。

その後、チェリーエナジーロックシードを失った事で暫くの間戦闘不能となり、目立った活躍を起こせなかったが、24話でオーバーロードインベスの存在を貴虎に知られたために、先の失態も合わせ、このままではユグドラシルにいられなくなるという可能性から危機感を覚え、これ以上の事態の悪化を恐れる凌馬自身から、「紘汰を口封じのため始末するように」との正式な依頼を受け、新しいチェリーエナジーロックシードを受け取る。

前回の敗北で受けた屈辱から、紘汰への憎悪と殺意を更に募らせていた事もあって、今度こそ彼を確実に抹殺すべく、切り札として大きく「S」と描かれたオリジナルのロックシードと3個のスイカアームズのロックシードを準備し、オーバーロードを探している紘汰を襲撃するものの、カチドキアームズに変身した鎧武の圧倒的な戦力の前には全く歯が立たず、呆気無く退かれる形となってしまった。

28話では湊耀子、凌馬とともに貴虎を倒すも、DJサガラの言う「禁断の果実を掴むただ一人」になるべく、さらに燿子や凌馬をも裏切りユグドラシル社屋内のクラックを破壊して、単身ヘルへイムの森に向かう。

最期

ユグドラシルから離反し、光実と共闘した彼は、31話に戦闘の末オーバーロードレデュエを懐柔する事に成功。彼女の手引きを受け「禁断の果実」を持つロシュオの元に到着(光実はレデュエの態度から速攻で彼女の罠だと気づくも、特に忠告する事もなくシドをロシュオの許へ送り出し、結果的に捨て駒にする形をとった)。

早速、果実を奪うべく彼に戦いを挑むが、その圧倒的実力差の前に為す術も無く翻弄され、ロシュオの放つ嵐のような念動力攻撃に圧倒される。ロシュオからは「大人しく去れば命までは奪わない」と諭されるも、尚も自分の敗北を認めず、果実を求める歩みをシドは止めなかった。

「ふざけんな!……もう二度と、誰の言いなりにもならねえ!誰にもナメた口は利かせねえ!

 俺は……俺は………人間を超えるんだ!!」

ゲネシスドライバーとチェリーエナジーロックシード共に粉砕され変身解除してもなお、手前勝手な、しかし狂気じみた執念の叫びを上げながら彼に迫ろうとするシド。だが、その愚かさに呆れたロシュオによって「それが貴様の覚悟なら、その過ちは死をもってあがなえ」と岩壁に開かれた亀裂へと吹き飛ばされ、そのまま念力で亀裂の中へ封じ込められて圧死。初瀬に続く2人目の退場者となった。

『子供』を蔑み、命を投げ出してまで人間を超えようとした彼が今際の際に叫んだ言葉は「誰の言いなりにもならず、誰にもナメた口は利かせず、人間を超えてやる」という、あまりにも「子供じみた」願いだった。

かつては「大人は危ない橋を渡らない」と語っていた彼が、力を欲する故に結局自分が見下し殺めた初瀬と同じく破滅の道を歩んだというのは何とも皮肉なことである。

また、シドが命を賭けてまで求めた「禁断の果実」を最終的に手にし、彼の願望であった人間を超える事を実現したのは、皮肉にも彼が最も見下していた紘汰であった。

評価

その傲慢で卑小な人物像から、作中の人物のみならず、ファンからの評価も決して良いものではないが、彼を演じた波岡氏自身はシドの人物像を肯定しており、一定の大義の下で紘汰を批判していると考え、彼の歩みを「シドは強さを求めて、強さだけを求めて、走り続けて、そこに新たな自分を求めただけ」と称し、好意的に見ている。「大人」にこだわるあまりやり方自体は歪んでしまっていた彼であるが、その本質は「自分を認めて欲しい」と言う子供じみてはいるが誰もが考える人間らしい願望だったのかもしれない。

彼の過去(鎧武外伝2のネタバレ注意!)

Vシネマ作品鎧武外伝2「デューク」編では、彼の過去が明かされた。

元々の彼は沢芽市で違法な薬物を売りさばく一介のゴロツキだった。しかしある日突如として現れた初級インベスの襲撃を受けてしまい、命からがら逃げ延びる事に。逃げ延びた先で己の無力さを呪っていた所を戦極凌馬に発見され、その反骨精神を彼に見いだされ「力が欲しいなら自分の元へ来い」と言う凌馬の誘いに乗り、劇中における錠前ディーラー兼工作員となった。

ちなみに、この際凌馬に「精々寝首をかかれない様にな」と発言している(そして、前述の様に本当に凌馬達を裏切る事に)。

また同作品では、「量産型ザクロロックシード」によって洗脳された一般市民達をヒマワリロックシードで呼び出した初級インベスで撃退、彼らの洗脳を解いて彼らから情報を得ると同時に錠前を幾つか持ち帰って事件解決の糸口を掴む等、シグルドへの変身こそ無かったものの裏方としての活躍を見せた。

補足

「仮面ライダー鎧武 キャラクターブック」によると、当初彼は10話ほどで退場する予定であり、光実が一線を越える描写として彼に殺害されることも検討されていた。話を進めるうちにキャラが育ってきて退場時期が大幅に先送りになったとのことである。

波岡氏自らの要請でシグルドに変身することが決まったものの、その時点でも20話までの登場だった。

演者の波岡氏は平成一期第八作第3-4話以来の平成ライダー出演となった。

シドが岩(ロック)で死んだのを観た一部の視聴者からは「これが本当のロックシードか」と皮肉めいた追悼の声も上がった。

ちなみにさくらんぼの花言葉は『幼い心』であり、チェリーエナジーアームズに変身するシドのキャラクターを端的に表していると言って良いだろう。なお、他にさくらんぼの花言葉には『善良な教育』というものがあり、これは「やれやれ…聞き分けのない子供は嫌いだぜ。」という台詞や「大人にとっては迷惑なんだよ。そう言うの!ガキはガキらしく、大人の書いた筋書き通りに遊んでりゃ良かったんだ。こっちの計画を引っ掻き回すんじゃねえ!」という台詞から、上記の花言葉が『自分達にとっての都合の良い教育』というブラックな意味にも取れたり、シドの生い立ちがまともな教育すら施されていなかった恵まれない環境で育った事が伺える。

また、小悪党でありながら北欧神話の英雄の名前を持つライダーに変身するものの、人間を超える力を求めた末に落命、ガキと見下していた紘汰が人間を超えた末に手に入れた力で本当の意味で世界を救う英雄になったのもまた皮肉である。

関連タグ

仮面ライダー鎧武 仮面ライダーシグルド

ユグドラシル・コーポレーション ロックシード

シドる いしのなかにいる

高見沢逸郎・・・・似たような欲望を抱いている仮面ライダー

霊幻新隆…ドラマ版で中の人が同じ。こちらに至っては主人公を誤った道へと進まないように助言をしたりしてるのではっきり言ってシドよりずっと大人である。

キュゥべぇ・・・脚本家繋がり。主人公達を後に引けない戦いに引きずり込むという点で共通する。

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