概要
第21話「ユグドラシルの秘密」にてその存在が明かされた謎の生命体。
オーバーロード(overlord=君主)と名付けられたように、他のインベス達とは違い明らかに知性を持っており、全員が共通して自らの武器を使っている他、地球言語ではない言葉を発し、会話をすることができる。
戦極凌馬の推論によれば、ヘルヘイムの森の侵食を克服し、進化を遂げた新しい種族ではないかとの事。但し体の造りは通常のインベスと同類らしく、通常インベスや上級インベスと同じくヘルヘイムの実を摂取することで更なる力を得ることができるが、作中でヘルヘイムの実を摂取して自らを強化したのはデェムシュのみであった。
ヘルヘイムの森の植物に侵食され滅んでしまった世界の、文明社会遺跡の奥深くに潜伏しており、森の植物を自由に操る事が出来る支配者階級に属する種族である。しかしDJサガラが「支配者にも拘らず、無責任な奴ら」と表現したように、他の世界への森の侵食を制御できる力を持っているのにも拘らず、そのようなことには無関心である様子。
他の世界の文明などに対しては興味を持つ者、或いは敵対的な感情を抱く者など反応は様々なようで、戒斗が凌馬のアドバイスにより彼らの1人を誘き出す際は、ヘルヘイムの森に国語辞典などの書物を置いて誘い出していた。
強大な力を持つ反面、長い時間を何もない森で暮らすがゆえに、大きな"虚無"を内に持ち合わせているのか、退屈を紛らわすために戒斗がばらまいた辞書(と人類の情報が書かれたパイオニア探査機の金属板に似たプレート)を読んで熟読したり、葛葉紘汰を玩具(オモチャ)と称して襲い掛かってきたりする等、人類に対しては友好的とは言えず、理解しがたい行動を取る描写が目立つ。
また、自分達の文明が滅びた為、他の繁栄している文明を垣間見るとどこぞの宇宙人のように嫉妬から滅ぼそうとしたり支配したりしようとする傾向があるらしい。
当初、オーバーロードインベスの存在を知っている者はユグドラシル・コーポレーションでも凌馬・湊耀子・シドの3名のみであり、貴虎は知らされていなかった。しかしサガラが紘汰にその存在を教え、さらに彼を経由した結果、呉島貴虎からユグドラシルの幹部会議でその名称が口に出され、社内に亀裂が走る羽目になっている。
凌馬一派が彼らを探す目的は、森を支配する力を解明することにより何らかの思惑を成就することのようだが、最終的に行き着く先は凌馬一派と戒斗ではまたそれぞれ違っている模様。
また、DJサガラの情報によると凌馬達の派閥が探し求める“知恵の樹の果実(禁断の果実)”は彼らが所持しているらしい。
その正体は、まさに凌馬の推論通りの「ヘルヘイムの森に適応し、進化した存在」であった。
かつてこの世界で起こったヘルヘイムの侵食に抗ったロシュオが禁断の果実を手にした事で、彼らフェムシンムはロシュオの手により一部の者がこの森で生きていけるよう身体を改造され(いわば改造人間)、ヘルヘイムにおいて絶大な力を持つ支配者へと進化したのだが、結局は彼らの文明は滅びの運命を迎えてしまった。
その最大の原因はロシュオの「選ばれた者達にのみ力を与え、他の者達は切り捨てる」という選択にあり、この選択を行ってしまった結果「自らを選ばれた存在と驕り昂ぶったフェムシンム達の殺し合い」へと発展してしまったのだった(ちなみに映画では、この選択肢の背景にコウガネの暗躍があったことが明らかになっている)。
皮肉にも、フェムシンム達は生き残るために手に入れた力で、自らの首を絞める結果となってしまい、更に生き残った僅かな者も選民主義の結果破壊や支配欲、野心が強い愚か者のみが残り最早文明を再興する事は不可能となってしまったのである。その状況を嘆き比較的温厚なロシュオ自身も「知恵の実を人間に使うくらいなら自分の愛した女王を蘇らす事がはるかに意味がある」という、極端な思考に至ってしまう。
余りにも皮肉な結末だが、この選択はユグドラシル・コーポレーションが推し進めようとしている「プロジェクト・アーク」の末路を暗示しているように見える……。
シリーズ恒例の「幹部怪人」の立ち位置であるが、本格的な登場時期が第23話とカブトに次いで遅く、また登場した後暫くは「地球へのヘルヘイム侵略を阻止するための交渉相手」として扱われるなど珍しい扱いの多い幹部怪人である。
ロシュオを筆頭に色を表わす名を持つ人型に近い幹部、さらにその下には上級インベスと同様に動物に似た姿とそれを表わす名を持つ者達で構成されている。いずれもロシュオから選ばれてからさらに同族の殺し合いから生き延びた猛者であり高い知能と上級インベスとは比較にならないほどの戦闘力を誇り次世代アーマードライダーとも互角以上に戦えるほどの強さを持つ。しかし、知恵の実の力を持つ極アームズの登場によりそのアドバンテージは一気に縮まることとなり相次いで戦死者を増やしていった。
そして第41話でロシュオがレデュエの裏切りに合い死亡し、レデュエもその事で紘汰の怒りを買い戦死し、フェムシンムはすべて絶滅した。
ただし、フェムシンムが死滅すればオーバーロードが居なくなるかと言えばNOで、紘汰自身もオーバーロードと化しており、また第43話で駆紋戒斗も果実摂取によりロード・バロンになり、また2015年4月に発表された外伝(時系列的には戒斗がデェムシュと対峙する前)で新たなオーバーロード(後述)が登場するなど、ヘルヘイムがある限りオーバーロードが出現する可能性があると言える。
一覧
フェムシンム
第21話で、戒斗が持っていた写真に写っていた、赤い体のオーバーロードインベス。
第24話から登場した、緑色の体を持つオーバーロードインベス。
第27話から登場した、白い体の上位のオーバーロードインベス。
第33話に登場したレデュエ配下のオーバーロードインベス。
第34話から登場したロシュオ配下のオーバーロードインベス。
第38話から登場したレデュエ配下のオーバーロードインベス。
映画にて登場したオーバーロード。
- デェジュシャシュ
ヒーローショーにて登場した黒い体のオーバーロードインベス。鎧武本編では登場しなかったが、ことのあらましは知っているとのこと。
沢芽市から離れた場所にクラックを開き、世界をインベスで支配しようとした。
名前の由来は恐らく「漆黒」と思われる。
候補者
『鎧武外伝 グリドンVSブラーボ』に登場したゲストキャラクター。
劇中で正体が明かされることはなかったものの、彼女の変身するライダーの変身シークエンスや変身前後で共通する能力などからして可能性がある(単にそのライダーの形態で手に入れた可能性も否めないが)。
人間が進化したオーバーロード
極ロックシードの力により徐々に変貌していった。怪人態こそ存在しないが(レデュエの見せた幻覚ではビャッコインベスとなっていた)、最終的にオーバーロードインベスの能力を全て発揮可能となった。
第43話から登場。駆紋戒斗がヘルヘイムの森の実を口にした事により変貌したオーバーロードインベス。
Vシネマの「バロン」編に登場、外見や扱う武器がグリンシャに酷似している。その正体は…(Vシネマ未視聴の方はリンク先にてネタバレ注意!)。
他のオーバーロードと違って人語を話す事も無くただ本能のままに暴れ回るなど実質的にはただのインベスに近い。
- ???
舞台「仮面ライダー斬月」に登場。外見や扱う武器はレデュエに酷似している。
ロード・バロンと同様に理性を保って人間が変化したもの。
その正体は…。
その他
外伝及び小説に登場したユグドラシルコーポレーションの元研究責任者。
リンゴロックシードの暴走事故により肉体が消滅すると同時に人間を超えた高位の存在となった。
そして小説仮面ライダー鎧武において始まりの女と同じレベルの存在に昇華されていること、オーバーロードとなっていることが明かされた。
しかし凌馬やサガラ曰く厳密には「オーバーロードに限りなく近い存在」である。
余談
人類に人知れず襲い来る脅威であるヘルヘイムの森の支配者という点や、人類とはあまり友好的ではない描写が、どことなくクトゥルフ神話を連想させる。まぁ、脚本家が脚本家なので、案外意識している所があるのかもしれないが…。
また東映の公式サイトによれば、グロンギ語と同じく彼らの名前や言葉にも一定の法則性があり、解読が可能とのことらしい。既に一部では解読が進んでおり、それが正しければオーバーロードの名前もデェムシュ→深紅、レデュエ→翡翠、ロシュオ→白亜といったように色を表わすものに、彼らの配下はデュデュオンシュ→朱雀、グリンシャ→ベコなどモチーフとなった生物が由来となっている。
そして彼らが度々口にする「フェムシンム」も解読が正しければ「ニンゲン」と訳すことができる。
詳しくはオーバーロード語を参照。
フェムシンムの上位オーバーロード4体は、紘汰たち『鎧武』の主要ライダー4人と、色や行動が似ており、相当すると考えられる。
仮面ライダー | フェムシンム | 色 | 性格 |
---|---|---|---|
紘汰/鎧武 | シャムビシェ | 青 | 平和主義 |
戒斗/バロン | デェムシュ | 赤 | 好戦的 |
光実/龍玄 | レデュエ | 緑 | 知略家、裏切者 |
貴虎/斬月 | ロシュオ | 白 | 権力者、大局的な見方 |
また、龍玄とレデュエは中華系、デェムシュとバロンは西洋系のデザインという意味でも共通点を持つ。
一方で、テレビに出てきた3体に関しては、行動は似ているのにもかかわらず根本の価値観は真逆であるとも言われている。
仮面ライダー | フェムシンム | 価値観(仮面ライダー) | 価値観(フェムシンム) |
---|---|---|---|
戒斗/バロン | デェムシュ | 強者に踏みにじられないためにさらなる力を求める。弱者が踏みにじられない世界を作る | 弱者を踏みにじるために今ある力を行使する。 |
光実/龍玄 | レデュエ | 大切な人のために自分の全てを犠牲にする。肉親を手に掛けたことを悔やみ続ける | 己の快楽のためなら家族でも犠牲にする。 |
貴虎/斬月 | ロシュオ | 大義・世界平和のためなら己の家族を手に掛ける決断ができる。 | 愛する者のためなら多くの命を見捨てられる。己の一族には諦めの感情を抱いている。 |
ちなみに前作のウィザードのファントムとも相当していると考えられる。
赤色で炎を使う、好戦的で何度も主役側に立ちはだかる。退場直前には話し合いしようとした相手を無視して街で暴れ、破壊の限りを尽くす。
緑色で野心家、自らの目的とトップが持つ重要アイテムを欲する為に敵対関係にある人物とも手を組もうとする。
白色で実質的トップ、強大な実力を持ち自分の愛する者を蘇らす事が目的で、その為には他の者が犠牲になることも厭わない。
…と、幹部怪人とは色に対する性格や立ち位置が似ている。
更には緑色の幹部が実質自分達のトップでカラーリングが白いキャラを裏切って殺害するという点まで類似している。