概要
この国および都市はマレー半島の先端、シンガポール島に存在する都市国家である(このほかごく小さな島々から成り立っている)。
正式名称はシンガポール共和国。 東南アジア屈指の経済力を持つ、先進国ないし準先進国であり、都市としてのシンガポールは世界的影響力ランキング8位の大都市である。東京23区と同じぐらい(香港特別行政区の約半分)の国土しかないが、マレーシアからの独立後の経済発展はまさに驚異的だった。
歴史
3世紀には婆羅洲として中国の文献に登場し、7世紀から14世紀にかけてテマセックという漁村として知られていた。所属としてはシュリーヴィジャヤ王国(6世紀より存在し、7世紀ごろには勢力があったものの、11世紀以降は衰えた王国、おそらく小さな王国の連合体だったと思われる。大乗仏教)、後にマジャパヒト王国(13世紀後半から15世紀後半まで存在した国。ヒンドゥー教)に属していたが、14世紀末にシンガプーラ(ライオンの町、あるいは寄港地)と名づけられた。
15世紀のはじめ、シュリーヴィジャヤ王国の王族によりマラッカ王国(イスラム教)が成立、その支配下に入る。
ところが16世紀に国自体がポルトガルの侵略により滅亡、それ以降300年ほどこの島が省みられることはなく、漁村および海賊が住む土地だった。
19世紀のはじめごろ、この島にイギリスが目をつけた。そこでこの地域を支配していたジョホール王国(マラッカ王国の滅亡時の国王の次男が立てたイスラム王国、国王自体は現在も存在し、マレーシアの国王継承権も持つ)より権利を得てその後割譲させ、植民地とした。
イギリスはこの土地を自由港(積荷に関税を取らない港)として整備し、島は発展し、その後この地を海峡植民地に組み入れた後、首都とした。19世紀後半にイギリス領マラヤが成立した。また、この地が島であることを利用し、軍事拠点としても整備を行い、要塞となっていた。
太平洋戦争中、シンガポールを占領した日本軍は昭南島とこの島の名称を変更した。この際、辻政信らの指示で中国系(華人・華僑)系住民が大量に虐殺される事件が発生している(シンガポール華僑粛清事件 )。
終結後はイギリスが再び支配したが、当初イギリスはこの地を手放そうとはしなかった。しかし結局1950年代には手放すことになった。
イギリスの自治領となった後、1963年にマレーシアの一州となった。ところがこの地域は元々中国系住民が多いことから、マレーシアの中央政権の「マレー人中心主義的政策」に反発したのをきっかけに、追放されるような形で1965年に独立した。マレーシア残留の夢が破れ、水も電気も不安定な状態での舵取りを迫られた初代首相のリー・クアンユーが独立を発表するスピーチにおいて、人目を憚らず涙を流した姿は現在でも語り継がれている。
民族構成と言語政策
マレーシア同様、元からこの地域に居住していたマレー人やイギリス統治時代に流入した中国系、インド系など、様々な民族が共存しているが、上述の通り中国系移民が人口の77%と非常に高い割合を占めている。
各民族は法的に格差をもうけられることはなく平等に共存し、独自の文化と言語を守っている。各民族間での恋愛や結婚はほとんどないものの、交遊関係や仕事仲間などとしての交流は当然存在している。
このために英語教育に非常に力を入れており、英語力ではインドと常にアジアのトップを争い、シンガポールにおける事実上の第一公用語である。一方で、シングリッシュと呼ばれる独特の語彙と発音で知られる方言もよく知られ、外国人が理解できないこともしばしば。
外交関係
東南アジア諸国連合(ASEAN)の原加盟国である。
その他、中華民国(台湾)やイギリスとは友好関係にあり、軍事協力関係にある。また、金融を主な産業としているため欧米や日本、中華人民共和国との関係もおおむね良好であるとされる。
ただし隣国であるマレーシアとの関係は微妙であるが、仲が悪いというほどでもない(インドとパキスタンほどではない)。
内政の状況
シンガポールは建国以来人民行動党(People's Action Party、PAP)による一党独裁が続いている。厳格な法律で知られており、紙クズをポイ捨てすれば罰金が科せられ、、銃を発砲したり麻薬(ヘロイン15グラム以上、大麻300グラム以上など)を持ち込むと死刑に処される。ただしその恩恵で治安は良く、街は清潔である。
政府による管理が隅々にまで行き届いている事から、「明るい北朝鮮」「成功した北朝鮮」と言われることも。世界的には「Fine City」と言われており、国内でもジョークTシャツが売られている。
一応、野党自体は存在するが、振り分けられる議席の大半が最多得票を得た政党が議席を総取りするという大政党に極端に有利な選挙制度であり、野党を当選させた選挙区はインフラや行政サービスの更新を後回しにするといった報復措置を受け、さらに刑法では、一部の刑法犯は証拠なしに有罪にできるようになっているため、政府にとって好ましからざる人物と認定されれば事実上政府の好きな時に投獄可能である。
これらの処置により、建国以来与党であり続ける人民行動党が選挙では圧倒的な支持を受けている(ことになっている)。また報道の自由も存在せず、ポルノも存在しない。
とはいえ、人民行動党が権力の座にあぐらをかき腐敗と堕落にまみれているかと言えばそうでもない。野党は2000年代以降30%前後の得票を安定して得ており、人民行動党も失政を公式謝罪したり、聞き取り調査で問題を素早く解決しようとするなど、選挙や議会が全くの茶番劇とは言い難い側面もある。
また、中国国民党が支持を失い台湾に逃れたことを教訓に非常に強力な汚職捜査組織を設立しており、この餌食になった政治家は決して少なくない。
欧米が発表した民主主義指数ランキングでも一党独裁にも関わらずギリギリとはいえ民主主義と見なされている(70位くらい)。
一人当たりGDPは日本を上回る、アジアでも有数の富裕国である一方、先進国の中では貧富の格差が相当大きい方である。土地が限られているために住宅事情は悪く、所得の少ない若者は親と同居を続けるかシェアハウスに住むかの2択であるが、家族のいない天涯孤独でも政府から施設があてがわれるのでホームレスまで転落する人は稀(というか野外に寝泊まりしているのを見つけられると施設に収容される)。貧困層~中間層の国民の多くは公共住宅のHDBに住むが、これは同時に政府のこまごまとした干渉を受けることを意味する(例えば、入居希望者は物件を選べない。これは民族別に住む場所が偏らないようにするための措置である)。外国人などが入居する賃貸のコンドミニアムの家賃は日本円で20~40万円もするのが普通。一戸建てを購入しようとすれば最低でも10億円以上かかり、大金持ちでなければ到底不可能である。
都市国家だけあって公共交通機関の整備は行き届いている。自動車には高い税金が課せられ、マイカーは持っているだけで富裕層を意味する(一般的な車でも1000万円を超える)。
この国では女性同士(レズビアン)の同性愛が合法化(というより、男性の同性愛を想定しているのでそもそも発想の範囲外)されている一方、男性同士(ゲイ)の同性愛は依然禁止されており、処罰(ムチ打ちなど)の対象となる。が、近年ではゲイとバレただけで捕まることはなく、同性愛や同性同士のセックスも合意であれば罰しないという方針を取っており、同性愛を公言している人もいる。1999年以降同性愛を禁ずる法律が適用されておらず、実質的には合法ともとれる。シンガポールは先進国としては同性愛への風当たりが強い方だが、ゲイバーもあればゲイコミュニティも存在し、ある程度は大目に見られている。