概要
ギリシャ神話に登場する海の怪物。海神ポルキュスと女神クラタイイス(川の女神とも、月と魔術の女神ヘカテーの別名とも言われる)の娘、または魔神テュポーンと半人半蛇の怪物エキドナの娘とされる。
姿に関する記述も文献によっていくらか異なり、十二本の垂れ下がった足と六本の長い首、三列に並んだ歯を持つ(ホメロス『オデュッセイア』)とも、上半身は女で下半身は魚、胴体から六頭の犬が生えている(ヒュギーヌス『神話集』)とも言われている。
彼女の生い立ちについては、オウィディウスの『変身物語』で詳しく語られている。
曰く、スキュラはもともとはシチリア島に住む美しい乙女だった。彼女に言い寄る男たちは多かったが、ことごとく冷たくあしらっていた。元人間の海神グラウコスもその一人で、悩んだ彼は魔女キルケーに相談し、その魔法で彼女を振り向かせてくれるよう頼む。しかしキルケーはグラウコスに恋心を寄せてしまう。スキュラ一筋のグラウコスにそれを拒絶されると、スキュラを一方的に恋敵と見なして彼女がいる海岸に呪いを込めた毒薬を流す。何も知らずに汚染された海水に腰まで浸かったスキュラは、上半身は美しい乙女のまま、下半身だけが奇怪な怪物に変えられてしまう。
そのショックで凶暴な性格に変貌してしまったのか、その後は大渦を起こす怪物カリュブディスと共に、メッシーナ海峡(シチリア島とイタリア半島の間)を行き来する船を襲う存在として恐れられるようになった。英雄オデュッセウスの一行も彼女に襲われ、犠牲者を出している。
創作物におけるスキュラ
悲劇的な出自を持つスキュラであるが、現代のゲームその他のメディアにおいては単に女性型のモンスター(モンスター娘)の一種として知られている。その場合、姿は神話に基づくものとは限らず、様々なバリエーションが存在する。「上半身が美女」というのはほぼ確実に共通するが(これはモンスター娘としてのお約束である)、下半身は多数の蛇であったり、蛸のような触手であったりと、作品によってまちまちである。この傾向はpixivのイラストにおいても変わらない。中でも「下半身が蛸状の触手」という解釈は多く、人外萌えの人々に愛されている。
なんでタコがモチーフなのかは未だに起源がわかっていないが、水木しげるセンセイの描いたスキュラは人間のような多頭にタコのようなヒゲを生やした姿で描かれる。ブリタニカ百科事典の解説によれば十二本の足を持っているらしく、ここから頭足類に結びついたのだろうか?
なお、過去のゲームにおいては、倒すべきモンスターとして怪物的に描かれたものもあり、ここに例をいくつか挙げるが現代でほとんど廃れている。
女神転生シリーズ
初出のFCの『女神転生』では種族は”怪獣”で三つ首竜として登場、『デジタル・デビル・ストーリー女神転生Ⅱ』では闘技場のイベントボスとして、三つ首竜の中央の首が女性の上半身の姿で登場した。『真・女神転生』では種族は”鬼女”で蛸に乗った女悪魔、『真・女神転生Ⅱ』では手足が蛸の触手になった女悪魔の姿だった。
ファイナルファンタジー
『ファイナルファンタジー3』の禁断の地エウレカで「長老の杖」を得るための試練で戦うことになるボス。神話とは逆で、怪物の多頭を持つ多脚魔女とでもいう恐ろしい姿で登場した。その後『ファイナルファンタジー14』でも再登場した。
ぷよぷよシリーズ
『ぷよぷよ通』の一部作品や魔導物語で登場している。詳細はこちら
ソード・ワールド2.0
人族と敵対する魔物たち『蛮族』の一種として登場している。
主な特徴は「下半身が蛸の姿で触手を持つこと」、「水中に適応していること」、そして「下半身を隠せば人間に変装出来ること」。
そのため人族に紛れて工作員となっていたり、人族側に寝返って共存しているものなども存在する。
蛮族にスポットを当てたサプリメント『バルバロステイルズ』ではプレイヤーが選択可能な種族の一つとなっている。
ゴッドオブウォーシリーズ
第1作と第2作の間の話を描いたPSPの外伝『降誕の刻印』にて、シリーズ定番となっている序盤の巨大ボスとして登場。
全体的な外見は鮫と鯨を足して2で割ったような姿で、胸部から先端が口のようになった6本の触手が生えている。更に胸から蟹に似た幼体を生み出す。
実母カリストに会うべくアトランティスを目指すクレイトスを乗せたアトランティス海軍の艦隊を襲撃するが、クレイトスによって下顎を切り裂かれるなどの深手を負わされてしまう。これを恨み、アトランティス上陸後も執拗に彼を追い続けるが、メタナ火山内部に追い詰めたところで噴火抑制装置のドリルに脳天を突き刺され死亡、亡骸はアトランティス諸共海底に沈んだ。
聖闘士星矢
海闘士のスキュラのイオの鱗衣のモチーフになっている。フォルムだけ見たら原典をなぞっているが、構成する動物は他の作品では使わなさそうな鷲、狼、蜂、蝙蝠、蛇、熊になっている。