突撃!ヒューマン!!
とつげきひゅーまん
悪の軍団フラッシャーを相手に ぼくらのヒューマン大活躍
(当時のTVガイドに掲載された番宣広告より)
概要
「舞台の公開録画」スタイルを取ったヒーローショー形式の特撮番組で、「ヒューマンに変身する主人公がピンチになると、会場に来ている子供達(+テレビを見ている視聴者達)がヒューマン・コール(声援)を送り、更に「ヒューマンサイン」(上の絵で子供たちが指先に付けている赤い円盤)を回転させる事で力を得て変身すると言う、結構面倒な変身プロセスが採用されている。なお変身の際は、観客席後方から舞台に向けて紐を伝ってヒューマンの飛行人形が飛んでいき、舞台裏に消えると同時にヒューマンが現れると言う演出になっている。
当時絶大な人気を誇っていた仮面ライダーに対抗するために企画・制作された作品で、キャラクターデザインに成田亨、ナレーターに山田康雄、主演に後に宇宙鉄人キョーダインとなる夏夕介、出演陣に田中好子や八代駿とかなり気合が入っており、また制作側も「打倒・仮面ライダー」の意気込みを掲げ、放送時間も敢えてライダーと同じ土曜夜7時半と真っ向勝負を挑んだが、舞台劇故に派手な特撮が不可能な事から迫力が物足りず、主人公の体操教師という設定も上手くいかせずに奮闘虚しく1クールで打ち切りになった。
小学二年生で連載されていた漫画版は最終回が2ページしかないというリアルソードマスターヤマト状態であった。
また、VTR収録だった為、本放送終了直後に数度行われた再放送の後にビデオテープ再利用のためにマスターテープが別の番組に上書きされてしまい(1970年代末までは放送用のビデオテープ(2インチVTR)がたいへん高価だった為、当時のTV局では基本的に、放送後一定期間が経た番組が記録されているテープに別の番組を上書きする形で使用していた。) 、ソフト化の目途も立っておらず長い間幻の作品と呼ばれていた。
そのため当時の児童誌および特集を組んだ『宇宙船』誌のバックナンバーか、成田亨の著書以外は画像などの記録が残っていなかった。(写真も成田亨蔵)と絶望的な状況だったが、番組の放送終了後にデパートの屋上で行われたヒーローショーをアマチュアカメラマンが撮影していたものが2009年に見つかり、その映像を収録したDVDが発売された。
あらすじ
大学の体操コーチ岩城淳一郎は、子供たちの体を鍛えるために全国の小学校を回る旅に出る。
彼の正体はヒューマン星からやってきた異星人で、地球を狙う侵略者フラッシャー軍団の脅威を察知し地球に潜伏していたのだ。
そしてついにフラッシャー軍団の侵略が開始。淳一郎はヒューマンに変身し、新聞記者の星山ルミ子、カメラマンの平井安兵衛、そして淳一郎の弟でヒューマン2号の淳二郎と共にフラッシャー軍団に立ち向かう。
放映リストと登場する怪獣
No. | サブタイトル | 登場怪獣 | 脚本 | 収録場所 | 収録日 | 放送日 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヒューマンって何だ | ジャイロック、カブトンガ | 藤川桂介 | 川口市民会館 | 9月23日 | 10月7日 |
2 | 怪獣シビレッタ3千匹! | シビレッタ、ザリゾン | 雪室俊一 | 上尾市民会館 | 9月30日 | 10月14日 |
3 | 血を吸う!怪獣ドラゴンダ | ドラゴンダ | 上原正三 | 土浦市民会館 | 10月3日 | 10月21日 |
4 | 空飛ぶ怪獣ブランカー! | ブランカー、シビレゴン | 田村丸 | 江東公会堂 | 10月14日 | 10月28日 |
5 | 殺せ!!怪獣レッドロック | レッドロック、セグロ1号 | 藤川桂介 | 足利市民会館 | 10月21日 | 11月4日 |
6 | 怪人ゲジルの死!! | ゲジル、キングタコラス | 藤川桂介 | 府中市民会館 | 10月28日 | 11月11日 |
7 | 怪人メガヘルツテレビ局を爆破!! | メガヘルツ、ブルゲリラ | 藤川桂介、田村丸 | 草加文化市民会館 | 11月4日 | 11月18日 |
8 | 魔の少年フラッシャー!! | ギャロン、ダンケット、ドロク星人 | 藤川桂介 | 渋谷公会堂 | 11月11日 | 11月25日 |
9 | キングフラッシャーの最期 | バリンガー、再生怪獣軍団(ジャイロック、ザリゾン、ブランカー、キングタコラス、ゲジル) | 田村丸 | 柏市文化市民会館 | 11月18日 | 12月2日 |
10 | 英雄ヒューマンの最期!! | ストック、ギリンガ | 藤川桂介 | 大宮市民会館 | 11月25日 | 12月9日 |
11 | 帰ってきたヒューマン | スパイダー、ダンバラキ | 上原正三 | 川口市民会館 | 12月2日 | 12月16日 |
12 | ヒューマン兄弟大活躍! | ガラメドン、ギルドギラ | 上原正三 | 江東公会堂 | 12月9日 | 12月23日 |
13 | さよならヒューマン | アントギラス、インパルス | 藤川桂介 | 府中市民会館 | 12月16日 | 12月30日 |
余談
- 企画はウルトラマンやウルトラセブンなどで美術を担当した彫刻家、画家の成田亨自身の設立したモ・ブル。舞台で光り輝くヒーローを表現するためステンレスでマスクを作成したり、軽くて巨大な怪獣を登場させるために風船を使用するなどの工夫をおこなった。
- 舞台劇という性質もあったのかもしれないが、登場怪獣のデザインはウルトラ怪獣よりもシュールでグロテスクなものが多かった。ほとんどの怪獣は改修され『行け!グリーンマン』にも登場している。
- 「打倒・仮面ライダー」の意気込みから、当初は主人公役として大野剣友会(仮面ライダーの劇中アクションを担当)に所属していた中村文弥に出演オファーをしていたが、当の中村氏は「仲間の出ている番組の敵にまわりたくない」と、このオファーを断っている。なおこれにより急遽主演のオーディションが行われ、最終的に、当時ミュージシャンから俳優に転身したばかりの夏夕介が選ばれた。
- ヒューマン役のオーディションには松田優作も参加していた。もし続いていたら武闘派のヒューマン3号が出ていたかもしれない!?
- 80年代にバラエティ番組で本作の一部シーンが流されたという目撃談が多数ある。
- 何故か後年のギャグ漫画等でパロディされる事が多い
- 『ミルモでポン!』の劇中では本作をモチーフとした『Pマン』と言う作品が存在し、ミルモが「Pマンサイン」を廻して応援している事も。
- アニメ『ケロロ軍曹』の中でも屈指のバカ回、166話「突撃!ウエットルキングであります」は完全に『ヒューマン』のパロディ回(題名の方は『アイアンキング』(水が燃料)も入っている)。その他このエピソードはちびっ子どころかお父さん世代でも匙を投げるような特撮のパロディがギュウギュウに押し込められている。
- 漫画『しあわせのかたち』の、ナムコの舞台劇がモチーフのアクションゲーム『ワンダーモモ』のパロディ回「ワンダーオオ」では、作者の桜玉吉が直撃世代であったため、変身のために”ヒューマンサイン”ならぬ”ワンダーサイン”が回されるという描写があった。なお、このシリーズ連載中桜の元には大量の「ヒューマン」関連資料が読者から贈られたようであり、「ヒューマン博士になった」とのコメントも見られる。
- 漫画家唐沢なをきは劇団四季の『ライオンキング』を観た際、当時このノウハウがあったら…と想いを巡らせた。
- 2014年から2015年にかけて富山、福岡、青森の3都市の美術館で開催された『成田亨 美術/特撮/怪獣 ウルトラマン創造の原点』展では、デザイン画と登場怪獣ブランカーの像が制作されて展示された。現在デザイン画はこの時に発刊された『成田亨画集』に掲載されているので見ることができる。
- NHK Eテレにて放映された日本の文化を紹介する番組『JAPANGLE』2018年8月15日放送回ではこの作品が元ネタとおぼしきテロップが登場した