金は天下(てんが)の回り物
ところがどっこい近頃は 天下が金の回し者
金さえありゃとは申しませんが 情けがありゃとも申せません
きれいごとばかりじゃー とどのつまりの堂々巡り
どうやらどの世に生まれても こいつだけは許せねえ てな輩がおりますもので
(オープニングナレーション:春風亭小朝)
解説
始まりは2007年にスペシャルドラマとして制作された「必殺仕事人2007」である。
1999年公開の「必殺! 三味線屋・勇次」以来、8年ぶりの必殺シリーズという事もあって、一種のターニングポイントとして、これまでの仕事人の顔だった中村主水から渡辺小五郎に主役交代した初めての作品でもある(ただし、2009まではダブル主人公で2010で完全に小五郎になった)。その小五郎演じる東山紀之を筆頭にメインの仕事人をジャニーズ事務所の中心的アイドルや俳優陣で固めるなど、新たな視聴者を呼ぶ試みが成された。
結果、放送は大成功し、2009年にテレビ朝日系列で「必殺仕事人」の新作シリーズとして放送される事となり、2009新春スペシャルを経て連続時代劇として2000年代に復活したTVシリーズこそ「必殺仕事人2009」である。尚、キャストや設定は概ね2007からそのまま引き継がれている。
金曜夜9時のドラマ枠で放送された。なお、制作は過去の仕事人シリーズと異なり朝日放送のみからテレビ朝日も加わっている。
よく平成の必殺仕事人はこの作品だけだと思われがちだが「必殺仕事人激突!」で既に平成に入っている為、厳密に言うと21世紀版というべき必殺シリーズである。
必殺仕事人2010からは2011年、2017年を除いて年一でのスペシャルドラマに再び戻っている(2008年も無かった)。また、2019は平成最後の必殺仕事人の作品となる。そして、2020は令和最初の必殺仕事人となった。
楽曲はEDテーマを除いて劇伴曲は新作は無く全て過去作品のものを使用している。その為、これまでのシリーズでよくあったEDテーマをアレンジした殺しのテーマ曲はこの作品には無い。
藤田まことが2010年に逝去した為、2009が生涯最後に出演した必殺シリーズとなってしまった。(2018ではライブラリの形で再び出演している)
スペシャル版
- 必殺仕事人2007
- 必殺仕事人2009新春スペシャル
- 必殺仕事人2010
- 必殺仕事人2012
- 必殺仕事人2013
- 必殺仕事人2014
- 必殺仕事人2015
- 必殺仕事人2016
- 必殺仕事人(2018※)
- 必殺仕事人2019
- 必殺仕事人2020
※…放送時期が早い段階で決まらなかった為、西暦が付いていない。
物語の傾向
基本的にはこれまでとは変わらないが、昭和の必殺シリーズの後半に見られた、放映当時の現実の社会情勢・世相風俗のオマージュがより強く取り入れられるようになり、本来時代的にはありえないがネタとして採り入れ、それでいて時代錯誤感をなるべく感じさせないまでに上手く世界観に融和させたスタイルも含まれている。
作品名 | 作中で取り入れられた時事ネタ |
---|---|
2010 | 派遣切り、公共事業削減・事業仕分け |
2012 | 非正規雇用、貧困ビジネス |
2013 | 医療トラブル |
2014 | TPP(環太平洋パートナーシップ協定) |
2015 | 離婚問題 |
2016 | リストラ |
2018 | 自爆テロ |
2019 | 転売ビジネス |
2020 | 振り込め詐欺、半グレ |
他にも2013や2014などで頼み人自身が別人から恨みを買う悪どい事をしており、結局は自分自身も仕置の的に入れられる事になったケースや、2019では「頼み金さえあれば恨みを晴らしてくれる事」が本当に果たされた事を目の当たりにして、よりにもよって「金の力」というものに悪い意味で目覚めてしまった結果、頼み人から仕置の的に堕ちてしまった人物が出てくる等、負のスパイラルも描かれている。
2015以降は二部構成というべき「前半の出陣」・「後半の出陣」が見受けられるようになった。出陣には早い時間なのだが、前半の出陣では完全に事件が解決しておらず後半でようやく真の黒幕を討つ展開となっている。
登場人物
仕事人・裏稼業の関係者
現在のレギュラーメンバー
本名・通り名 | 表向きの職業 | 武器・得物 | ヤリ口・役割 | 演者 | 余談 |
---|---|---|---|---|---|
渡辺小五郎 | 南町奉行所同心(2007~2010)→本町奉行所同心(2012~) | 大刀、脇差 | 大刀、脇差で斬る、刺す | 東山紀之 | |
経師屋の涼次 | 経師屋・絵師 | 仕込み筆・劇薬(2007)→仕込み筆・錐(2009以降) | 顔に劇薬を塗りつける(2007)→仕込み筆から抜き出した長い錐を相手の肩口から深く突き刺して、心臓まで到達させ、血を体内に噴出させる(2009以降) | 松岡昌宏 | |
リュウ | 僧侶見習い(2014)→雑役夫(2015)→蕎麦屋(2016)→植木屋(2020) | 懐剣または脇差(2014~2019)→片鋏(2020) | 小柄な刃物で悪人の急所を突き刺す、切り裂く | 知念侑李 | |
瓦屋の陣八郎 | 瓦職人 | メリケンサック | 額を線を描くようになぞってから、その中心を突いて頭蓋骨を砕く | 遠藤憲一 | 2020には未登場 |
花御殿のお菊 | 常磐津の師匠 | 無し(※) | 仕事人の元締め、情報収集、頼みの請負人 | 和久井映見 |
※…基本的に実行役ではないからだが、実は武器として刃仕込みの扇子を持っている。
元レギュラーメンバー
本名・通り名 | 表向きの職業 | 武器・得物 | ヤリ口・役割 | 演者 | 出演作 |
---|---|---|---|---|---|
中村主水 | 南町奉行所書庫番(2007)→自身番(2009) | 脇差 | 脇差で斬る、刺す | 藤田まこと | 2007~2009、以降は回想シーンのみライブラリ出演 |
からくり屋の源太 | 玩具屋(2007)→板前(2009) | からくり玩具 | からくり人形を作動させ、それに気を取られている隙に、筒に仕込んだ紐付きの蛇の玩具を、相手の首めがけて飛ばして絞殺または刺殺 | 大倉忠義 | 2007~2009前半 |
仕立て屋の匳 | 仕立て屋 | 縫い針、縫い糸 | 仕立てに使う針と仕付け糸を投げて、首に絡ませ、絞殺 | 田中聖 | 2009後半~2013 |
流しの仕事人(ゲスト)
通り名 | 表向きの職業 | 武器・得物 | ヤリ口・役割 | 演者 | 出演作 |
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玉櫛 | 白拍子 | 懐剣 | 懐剣で斬る、刺す | 水川あさみ | 2007、2009SP |
カルタのリキ | 用心棒 | 仕込みカルタ | 仕込みカルタを手裏剣のように飛ばし、喉元を切り裂く | 内藤剛志 | 2010 |
胡桃割りの坐坊 | 蕎麦屋 | 素手 | 秘孔を突いて、相手の自由を奪うと素早く首を掴み、喉笛を砕き、へし折る | 中村獅童 | 2013 |
安倍川の仙吉 | 仇討ち屋 | 仕込み杖 | 錫杖に仕込んだ刃で斬りつける | 高橋英樹 | 2012、2014(参戦したのは2014のみ) |
泣きぼくろのお宮 | 髪結屋 | 琴爪、琴弦 | 琴の弦で拘束し、琴の爪で首を切り裂く | 山本美月 | 2015 |
小五郎の周辺人物
小五郎の家族
中村主水と同じく婿養子であるが、主水と違って嫁姑からは蔑ろにされていないものの、逆に色々と過保護に接せられる事に少々辟易している。また、主水同様に、子供に恵まれずに姑(義叔母)からそのことについて小言を言われるのはお約束。
小五郎の上司
これまでのシリーズ同様に主人公(小五郎)の上司は基本的に権力に弱い、所謂「長いものに巻かれる」タイプの人間で基本的にコメディリリーフである。
小五郎の相棒
表稼業では煙たがられる事の多い小五郎の数少ない理解者にして親密な同僚でやはりコメディリリーフである事が多い。一方で、その立ち位置と裏腹に「2020」の時点の相棒の住之江を除く2名の歴代の相棒はいずれも突然にシリアスな境遇に立たされた末に非業の死を遂げてしまっている。
本名 | 役職 | 演者 | 出演作 |
---|---|---|---|
大河原伝七 | 南町奉行所同心 | 福士誠治 | 2007~2009 |
結城新之助 | 南町奉行所同心(2010)→本町奉行所同心(2012~2016) | 田口浩正 | 2010~2016 |
住之江彦左衛門 | 本町奉行所同心 | 松尾諭 | 2018~ |
小五郎が始末した黒幕達
本名 | 役職・小五郎との因縁 | 演者 | 出演作 |
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権堂伊左衛門(※) | 浪人(小五郎の旧友) | 沢村一樹 | 2009(新春SP) |
風間右京乃助(※) | 幕府方勘定吟味役 | 小澤征悦 | 2010 |
弥勒坊燕斎 | 人足寄場『塵尽会』棟梁 | 高橋英樹 | 2012 |
小宮山泰山(※) | 小宮山診療処処長 | 里見浩太朗 | 2013 |
中之島頼政 | 幕府側用人 | 中村梅雀 | 2014 |
燕天 | 駆け込み寺『縁天寺』住職 | 竹中直人 | 2015 |
朝比奈藤十郎 | 幕府監察方番頭 | 安田顕 | 2016 |
壬生の幻楼 | テロ集団首領(小五郎の両親の仇) | 奥田瑛二 | 2018 |
上総屋清右ヱ門 | 豪商 | 西田敏行 | 2019 |
湯川伊周 | 本町奉行(小五郎の上司) | 市村正親 | 2020 |
(※)…厳密には黒幕ではなく、その作品のメインの敵役である。
登場人物について
この20XX必殺シリーズにおいては、いわゆる仕事人の死の退場を物語で描写されたのは「玉櫛」「からくり屋の源太」「泣きぼくろのお宮」の3名であるが、玉櫛とお宮の二人は実質的にゲスト扱いに近く、レギュラーメンバーとしての殉職者は2020年現在では源太のみである。
「仕立て屋の匳」「瓦屋の陣八郎」の2名は特に説明もなく登場しなくなった(ただし、匳に関しては実情としては大人の事情が強い)。
「カルタのリキ」「胡桃割りの坐坊」の2名は、それぞれ登場した回で小五郎達仕事人一味にその回限定で加勢したゲスト仕置人であり、「安倍川の仙吉」に至っては厳密には仕事人でもないが、2014において成り行きから小五郎達の仕事に加勢した為、ここに追記する。
また、演者の死去によるものでは先述の「中村主水」は殉職ではなく異動の形での退場、「渡辺こう」は演じた野際陽子同様に2019では前年に死去した設定であった。
また、ゲストの悪役でも話題になった事もあり2013での「小宮山泰山」役だった里見浩太朗は役者人生初の悪役に挑戦し、2012・2014では「弥勒坊燕斎(悪役)」「安倍川の仙吉」を高橋英樹が悪役と仕事人(相当)の一人二役を行った。2019での「上総屋清右ヱ門」役の西田敏行は必殺仕事人で斬られる役になる事をものすごく喜んだとのこと。しかも妙にコメディチックな命乞いのシーンは全てアドリブだったとのことで、撮影後にスタッフから笑い声が上がった時はホッとしたらしい。
特に里見は「水戸黄門」で二代目格さん・5代目の黄門様、高橋は「桃太郎侍」と有名な作品で出演していた事もあり話題となった。