概要
プロフィール
初出は『結城友奈は勇者である 勇者の章』に登場した英霊之碑にて確認できる名前のひとつ。
人物像
本作の新キャラクター。高嶋友奈を勇者として導いた巫女で、巫女としての能力は高かったようだが、かなり年上だったため物語開始時点で既に力を失っている(具体的な年齢は不明だが、少なくとも自動車の運転はできる年齢。作中の容姿は二十代半ばくらいと書かれている)。男勝りな口調で喋る。
現在は教師も兼ねる大社神官となり、年長者として後輩の巫女達(上里ひなた・安芸真鈴・花本美佳ら)をサポートする。
しかし教師としては大雑把なところがあり、真鈴達が就寝時間を過ぎた後で部屋を抜け出したのを目撃しても何も言わず見逃していた他、勇者達のお目付け役も「面倒だ」という理由だけで辞退していた。美佳がある人物の遺体を独断で回収した際も迎えに現れ「おもしろいから」という理由だけで見逃すという柔軟さも持つ(その住所を美佳に教えたのは久美子自身で、美佳を送る気だったとも語っていた事から、わざとそのように仕向けた可能性もある)。
また、武術を嗜んでいる。
ひなたには何やら「大きな貸し」があり逆らえないらしいが…?
花結いのきらめき
直接登場はしていないが、きらめきの章11話にて真鈴と美佳が召喚された際、高嶋が触れている。
高嶋によると、一緒に近畿地方から脱出したとの事。
そんな中…
勇者史外典第三章は『乃木若葉の章』より過去の物語になる事が事前に明かされていた事、高嶋が勇者になった経緯が唯一明らかになっていなかった事から、一部のファンからは、「第三章の主人公になるのでは?」という予想が早くからあったが、2021年1月に発表された第三章のタイトルには烏丸久美子の名があり、第三章の主人公となる事が確定した。
さらに翌月には容姿が公開され、シリーズの登場人物初となる大学院生である事も判明した(そのためシリーズの主人公達の中では一番の先輩に当たるキャラクターである)。当初、公開されたイラストで手に持っている物はタバコかチョークかで推測が分かれていたが、後にタバコであった事が判明した(つまり喫煙者)。
なお、発表時のタイトルは「烏丸久美子は▓▓▓▓▓▓▓▓」と後半部分が伏せられている(勇者御記のように検閲で塗りつぶされた扱い)。これが意味するものとは…?
関連タグ
安芸先生:『鷲尾須美は勇者である』に登場。安芸真鈴と同姓(子孫かどうかは明言されていない)で、烏丸と同様に教師兼大赦神官として勇者・巫女をサポートする位置付けのキャラクター。
ネタバレ注意
勇者史外典第三章にて明かされた、衝撃の事実。
それは、「烏丸久美子は巫女でない」事であった…
プロフィール(『烏丸久美子は巫女でない』時点)
物語開始時点では大阪の大学で文化人類学を専攻し、将来を有望視されていた。
文系にもかかわらず白衣を着ているが、これは「他人とは違う、変わった事をやってみよう」という彼女の趣味によるものである。大学に入ってから平凡な世界に飽きて始めたものだが、大学院に入る頃にはやりつくしてルーティン化してしまったためほとんどやらなくなり、人生のレール通りに生きる事に虚しさを抱いていた。形式上の巫女となった現在も、その経緯で何かあったのか自らを「クズ」と自嘲する場面も見られる。
また、仲良くなった相手には、好物のお好み焼きをふるまう事にしている。
物語は、友奈の戦死を聞かされ、彼女との出会いを回想するという形で始まる…
遺跡の調査のため奈良県御所市へ向かった際に七・三〇天災に遭遇。その中で友奈や茉莉と出会い、居合わせた他の市民共々四国へ向けてバスで逃避行をする事となる。
突如として巻き込まれたバーテックス襲来という非日常にむしろ楽しさを感じていたり、逃避行の中で和を乱し害悪になりかねないと判断した男をわざと星屑に喰わせるように仕向けて殺害しようと企て、失敗しても彼が害悪となったら友奈や茉莉がどんな反応をするのか見てみたいと内心で思ったりと、良くも悪くも狡猾で快楽主義的な性格であり、勇者や巫女とは正反対の「大人」として描かれている。
自身は決して周囲に隙を見せずに立ち回り、何が騒動が起きても自分が巻き込まれるなど特別な事情がない限りは傍観に徹して楽しみ、喧嘩を売られたら逆に煽りたくなるタイプ。
そもそも友奈や茉莉と共に行動しようと決めたのも、「もっと見ていたくなった」という個人的な好奇心からで、彼女達がいなければ自分の指示を聞かなかった人々を見捨てて一人で逃げていた所だった。
本人もこれまで「犯罪以外なら思いつく限りの事を何でもやった」「友奈や茉莉が嫌悪感や吐き気を催しそうな事も何度もやった」と自負しており、自分が善良な人間とは程遠いという自覚はある様子。
とはいえ、友奈達の意志は基本的に尊重している他、他者を切り捨てるのも自分ではどうしようもないほど迷惑な存在と判断した場合のみであり、全く見境がないという訳でもない。これは過去に友人を騙して傷つけてしまった結果、怒らせて刺された経験に由来する(曰く「彼女を怒らせたかった訳ではなかった」)。ただ、「予想通り」や「平穏」への本能的な怖さから場をかき乱したいだけで、他意は何もなかったのである。
この事は友奈や茉莉には見抜かれており、奇妙な信頼関係で結ばれる事となる。
観察眼も鋭く、バーテックスと対面した者の精神が不安定になっている=後に天空恐怖症候群と呼ばれる病を発病している事も見抜いていた。そして、茉莉が現実を受け入れられずに平穏な世界を望む一方で、友奈は現実を受け入れているからこそ戦いに迷いがない事も見抜いており、茉莉に対し「お前より私の方が友奈を有効活用してやれる」と豪語するほどだった。
時折友奈や茉莉にアドバイスを送り、市民から不満をぶつけられれば擁護するなど、表向きは彼女達の保護者的存在となっていくが、その中でもあえて選択肢を与える事で「彼女達が苦悩し、平常心を失い、普通じゃない行動をとるのが見たい」と考えるなど、あくまでもおもしろさを求めて付き合っているというスタンスは変わらなかった。
そして4話では、暴行されながらもいつか平穏な世界が戻る事を信じる茉莉の心情を知った事で、茉莉こそが自分と対極な存在であり、この非日常の世界から排除すべきと認識。
茉莉を救い出しつつも、何かが吹っ切れたかのように暴行していた男の一人を耳をナイフで切り裂いた上で拘束するなど手段が過激化し、遂には茉莉がバーテックスの位置がわかる事を逆手に取り、わざと四国に着かないよう回り道をしたり、人知れず実験と称して害悪になった市民をわざとバーテックスの前に連れて行き天空恐怖症候群を発症させていた事も友奈と茉莉に暴露(直接言及はされていないが、茉莉が市民達から非難を浴びたのも、自分の行動を悟られないようにするためあえて根本的には解決させなかったと思われる)。
「(前略)ああ、とても良かったぞ。私は化け物に襲われるスリルを味わえるし、恐怖でわめきたて、狂っていく人間の姿を間近で見るのは本当におもしろい。こういう事態でもなければ、こんな体験はできないだろうしなあ。そのうえ、私自身が直接手を下すわけでもなく、勝手に狂っていくだけだから、人間一人潰しても罪悪感がほとんどない」
愉快犯にでもなったかのように開き直る久美子は、さらに2人の願いをくじく宣言をする。
「このバスは四国へは向かわない!永遠に安全地帯になど──たどり着かない!」
とはいえ、久美子は何も茉莉の命を奪おうとしていた訳ではなく、茉莉だけ四国に置いていき自分達だけバーテックスが蔓延る世界に留まろうとしていたのである。
友奈の捨て身の行動で、バスを止めざるを得なくはなったものの、それでも「戦って私を従わせてみろ」と友奈に決闘を挑む。
人に対して拳を振るう事に迷いを抱いていた友奈はあっさりと拘束する事に成功したものの、茉莉から予期せぬ抵抗を受ける。
当初こそ凡人と罵りながら軽々とねじ伏せていたが、凡人と侮ったからこそ見抜けなかった反撃で左腕を刺されて形勢逆転し、結局敗北を認める。
同時に、非日常の世界で人知を超えた力を持っても「普通」を保ち続けた茉莉のようになりたかったとも。
その後、尾道大橋でひなたと初めて対面。勇者と巫女の過酷な将来を察した久美子は、自分が身代わりになる形で茉莉ではなく自分を友奈の巫女とするよう土下座して志願(これがひなたに対する「大きな貸し」になった)。
別れ際、久美子は茉莉には響かないだろうと思いつつも、彼女にこう告げる。
「(前略)お前は私がなりたかった私だ。だから変わらないでくれ」
その予想通り、久美子と茉莉は最後まで通じ合っているようで相容れない関係のまま終わり、書き下ろし短編で再会した時も久美子は気に入っているとしている一方で茉莉からは煙たがられるという、一方通行な腐れ縁といった印象であった。それでも久美子は、茉莉を日常の世界へ帰した事に、後悔はなかった。
久美子は茉莉との出会いで憑き物が落ちたからこそ、1人の大人として大社での御役目を何だかんだ言いつつ全うできたのだろう。
この結末は一見すると自ら憎まれ役になってでも茉莉の将来を守ったように見えるが、茉莉からすれば「負けを認めたはずなのに肝心の友奈だけ譲らずに連れていった」という裏切り行為である。加えて、茉莉は確かに自分は「凡人」である事を曲げず、一度は戦いに嫌気がさして大社入りを拒否したが、友奈が大社に行って勇者になる事を決めると(無理をしていた面はあったとはいえ)身を案じてついて行こうとしており、久美子はそんな彼女の気持ちに配慮した発言を一切していなかった(それどころか、響かないだろうと諦めてすらいた)。
このため、散々好き放題やった末に自分の理想を茉莉へ一方的に押し付けて勝手に満足しながら友奈を連れて勝ち逃げしたという無責任なものにもとれてしまう(本作では戦う子供へ好き勝手に命令し時には力ずくでも従わせようとする大人の身勝手さが強調されており、その歪な力関係が最後まで改善される事はなかったが、久美子と茉莉の結末はまさにそれを象徴している。茉莉は結果的には夢を叶えて家庭も築けたものの、裏を返せば「大人に押し付けられた生き方しかできなかった被害者」ともとれる)。
久美子の行動の是非はさておき、これでは関係がもつれるのも当然である。
皮肉な事に、そんな久美子でさえもひなたという別の子供には大人でありながら逆らえなくなってしまった上、友奈を救うどころか勇者達の戦いに関与すらできず、大赦の改革を立場上ひなたら正式な巫女に委ねていた点では、茉莉と同じように生き方を縛られてしまったともとれる。ある意味久美子もまた歴史の荒波に抗えない「普通の人間」に過ぎなかったと言えるだろう。
それでも彼女なりに茉莉の事は気にかけていたらしく、茉莉の娘にも「困った時は母を頼れ」という趣旨の助言をしていたらしい。
関連人物(ネタバレ関係)
天馬美咲 - 4話公開の同時期に、久美子とは別ベクトルで勇者であるシリーズのスタンスに真っ向から対抗する行動をとっており、4話公開以降何かと比較されるようになっている。
関連タグ(ネタバレ関係)
ウルトラマントレギア - 彼もまた元研究者であり、自身が絶望へいざなった人々がもがき苦しむ様を見て楽しむ。ただしこちらは純粋な悪役である。
言峰綺礼 - 友奈との関係やその考え方は、この人ともよく比較される。
ベルモット(名探偵コナン) - 敵側の人間でありお世辞にも善良とは言えない性格だが、無関係な人間を巻き込む事を好まず、ある理由で主人公に肩入れしている点が類似。