真・大魔王バーン
しんだいまおうばーん
…余を精一杯楽しませるのが…お前達の義務だ!
『魔王軍』を率いる『大魔王バーン』は限りなく永遠に近い時を生きようと叡知と超魔力を宿す老人の肉体をベースに、全盛期の若い肉体を分身体として二つに分けて皆既日食が来る度に『凍れる時間の秘法』を掛け続け、秘法で身体停止した全盛期の肉体を側近『ミスト』に預け、非常時には肉体の使用を解禁と同時に、この事実を周囲に悟らせぬ様に特定の技と略無言を貫く事を厳命、『死神キルバーン』の来訪を機にミストには新たな幹部名『ミストバーン』を授けた。
だが、現代において『大魔宮天魔の塔』にて老バーンが『双竜紋』を発揮させた『勇者ダイ』に倒されるレベルの生命の危機まで追い詰められ、『白い庭園』で『ラーハルト』や『ヒム』と戦闘中の『ミストバーン』に肉体を返還を命じ、全盛期の若い肉体と、老体の頭脳と魔力を併せ持つ本来の姿へと数千年ぶりに戻る。
正体の関係から、「子安武人が若バーンを演じるのではないか」と早い段階から視聴者達の声が挙がっていたが、予想通り子安氏が演じることになり、喜ぶ視聴者が多かったという。
一人称は「余」、二人称は基本的に「うぬ」だが、レオナに対しては老バーンと同じく「そなた」を使う。気が昂ると哄笑を上げるのは老バーンと変わらない。しかし若い肉体に戻った反動か、強引で血気盛んな性格に変貌し、老体時に見せた「予測不可能なものには警戒する、即時粉砕」と言った慎重さと冷静さが薄れてしまう。また「子供(ガキ)」「うざったい」など言葉遣いが乱暴になる。恐らくは精神すら「若く」なったのだろう(後に外伝『勇者アバンと獄炎の魔王』で凍れる時間の秘法による一種の副作用=生物が秘法によって時間を止められると停止期間の分だけ停止時の精神状態が解除後に色濃く残ることが明かされた。バーンの精神的な変貌もこのためであろう)。
また、力を取り戻して、いつでもあるいはいつかは倒せる自信を得たせいか、老体の時は弱い奴が反論しても、さっさと消してしまえばよいと判断するところで、わざわざ相手の屈服をさせようとして、時に陰湿とも言える面も強くなっている。特に、最後のピラァオブバーンを落とした後のポップに対し、ルーラ失敗で藻掻こうとする彼を瞳にしたり、とどめを刺そうとするより屈服を求める言葉が多かった。魔力がほとんどなくてもカイザーフェニックスを分解できたポップに戦う力があったと判断され瞳に出来なくても、肉体は普通の人間に近い魔法使いなら、カラミティエンドや必殺技でなくてもしっかり力を込めた打撃だけできっちりとどめを刺せられたはずなのに、痛めつけ、自分の理を言い聞かせるに留まっている(無自覚に大魔道士ポップのペースに巻き込まれていた)。もしかしたら、作中で唯一、バーンが『力こそ正義』を捨てて(後に竜魔人と化したダイには力で挑んでいる)相手を倒そうとしていたのかもしれない。
ロン・ベルクが作成した光魔の杖も、必要無しと判断したら即座に踏み砕くなどといった、独り善がりだったとはいえ他者への敬意も薄れてしまうようだ。その際に腹心の犠牲については一切触れていないが「老バーンの頃は」必要だった杖を踏み砕いた事実が何よりの答えだろう。
加えて老バーンの際に「いかなる種族であろうとも強い奴に差別はせん」と述べ、自分は神々とは違うのを暗に主張していたことも、自分以上の強さを引き出したダイに対して「化物め」と差別の代名詞を身も蓋も無く発言するといった自分本位の考えも強くなった。
一方、終盤ではバーンの「地上破壊」達成に我が身を顧みない部下(ジャミラス)も登場している。バーンが部下に求める忠誠心とはこういうものなのかもしれない。
一度でも元に戻ると、次に秘法を発動させる皆既日食の日まで、この肉体で過ごさねばならない。劇中では数百年に一度の皆既日食は十数年前に起きたばかりなので、不老不死を目指し呪法を使い続けていたバーンは数百年分もの寿命を削られるのが必至となり、それに対して静かに怒りをたぎらせていた。
若返って強固な肉体に戻り、作中最強といっても過言ではない強さを見せる。絶大な魔力と老成した頭脳に、超金属を無造作に折る全盛期の力と肉体が加えられ、老バーンでは『光魔の杖』で補助しながらも二回行動しか出来なかった動作が、三回まで引き上げられ、更には3つ在る心臓で小さなダメージも直ぐ様回復する。他の魔族に比べて再生力が非常に高く、三つある心臓が再生を司り、心臓を一つ潰されると再生不能となり筋力も弱まる(少なくとも左心臓を潰された時は左腕の再生ができず、傷も治っていない)。ダイの剣によって左心臓を潰され、以後も突き刺さったままで再生能力を封じられた(バーンはベホマも使えるが、剣を引き抜くことを優先していたことから剣をどうにかしないとベホマでも効果がないことが覗える。またレオナの見立てでは竜闘気で受けたダメージもすぐには回復できないとのこと)。『暗黒闘気』の奥義や攻撃呪文も弾き返す技も増え、完全な強さとなる。基本は武器を持たず、己の肉体と呪文を駆使する。何気に二本角の形状が違う。角は魔力の制御に欠かせない器官のようであり、老バーンにはある角がミストに預けている状態の肉体にはなく、頭脳と魔力を持つ老バーンと一体となって初めて角がある状態となっている。又、片側の角を折られた瞬間、魔力の源の鬼眼が光を失い、瞳化などの魔力による効果が無効化してしまった。
戦闘技能
- 格闘
己が鍛え上げた身体能力から繰り出される武術。蹴り技は一切使わず、手刀による接近戦を用いる。
竜魔人化する前のダイやその仲間達相手なら格闘術だけでも圧倒できたが、大魔道士ポップが大魔王のプライドを刺激する事で天地魔闘の構えでの対決に仕向けさせた。
原作では基本戦法が迎撃なのに加え、その場からほとんど動かず攻撃をする無駄なく戦うスタイルだったが、2020年のアニメ版では猛スピードでダイとの距離を詰め、接近戦をする激しい動きが描かれる。
- 闘気弾
闘気を砲弾の様に発射する攻撃術。頑丈な戦士でも負傷者ならば一撃で戦闘不能に追いやるほどの威力を持つ。
- 衝圧
衝撃波を放つ攻撃術。天地魔闘の構えに組み込んで使用され、ラーハルトの技を容易く跳ね返す。素顔を晒したミストバーンも使用しており、こちらはヒム達を壁面に叩きつける威力を見せた。
- 暗黒闘気の波動
両手を突き出すことで前方に波動を放つ。原作ではワンシーンのみの使用であり、どのような技かは不明だった。アニメ版では暗黒闘気を放つ技として描かれている。
暗黒闘気を纏った手刀。※詳細はリンク先にて
あらゆる攻撃呪文、技を弾く防御技。※詳細はリンク先にて
壁状の闘気に近いエネルギー波を放つ攻撃。※詳細はリンク先にて
不死鳥の姿を模した火炎呪文(メラゾーマ)。※詳細はリンク先にて
最強の切り札。※詳細はリンク先にて
その他の技
- 瞳化
鬼眼から光線を浴びせ、「レベルが低い」「傷を負っている」等、己が手を出すに値しないと判断した者を赤い玉の中に閉じ込めてしまう(逆に戦える力がまだある者は光線を浴びせても瞳化できない)。閉じ込められた者は見る・聞く・考える以外の行動が一切取れなくなり、言葉すら発せない。そして「見る」ことができる故に、凄惨な光景であっても目を背けることはできない。強制力は高く、一度術中に陥ると自力で抜け出すことは不可能である。この能力があるため「自分達の損害を省みずに物量戦や消耗戦をひたすら仕掛け続ける」という戦略はバーンには通じない(バーンの相手にならずともダイの盾になろうとしていたクロコダイン等の目論見は完全に頓挫してしまった)。
強いダメージを受けると「瞳」化を維持できなくなるらしく、ダイに左角を折られた際にアバン達は解放されていた。
※メタ的な都合上、勇者ダイの仲間達の死体を週刊連載で背景に紛れ込ませて描くのは過酷そのものであり、少年漫画ジャンルという都合もあり、大魔王戦での戦死者は必要最低限で済んだ。
鬼眼から放つ光によって遠くの映像を虚空に投影。地上の人間達の様子を観察するのに使用。ハドラーなどがやった「魔力による映像通信」と同じく投影した相手と言葉を交わす事も出来る。
- 魔力による強化
鬼眼の魔力を生物の肉体に分け与え、進化させる。ダイとの最後の一騎討ちでは、自らを進化させることで魔獣になった。ただし魔力の源であるバーン自身が進化すると二度と元に戻れなくなる。また他者を強化する事もでき(というより、こちらがメインの使用方法)、老バーン時には魔軍司令時代のハドラーに不死身の肉体を与えたり、魔力炉の管理をしているゴロア等に力を与えた。
「余は、心底ダイとの闘いを楽しみたいと思っているのだ」
「私の、不老の時間を数百年分も奪った代償を、お前達から貰わなければ、釣り合いが、取れんではないか……!」
「…余を精一杯楽しませるのが…お前達の義務だ!」
全盛期の若さを取り戻した強さは圧倒的であり、ダイ個人では太刀打ち出来ない。最大最凶のカウンター奥義で魔法剣を無効化され、倒れ伏した目前で『レオナ』を捕らえ、生涯語り部として生き続けることを迫る。
ダイを嬲り殺しにすべく、『爆裂呪文の雨』を浴びせる。言葉通り、この戦いを楽み、己の無力さを味わわせ、人間の卑小さを知らしめながら殺すつもりだった。
ところがレオナの『ナイフ』で腕の一部を切りつけられ「この世に本当の無敵なんていない」と言わしめ文字通りプライドを傷をつけられ激昂。第三の目を使い『瞳』に封印。完全に服従するなら解放すると嘲笑う。
駆けつけたダイの仲間たちも同様に瞬く間に瞳に変えるが、実力差が開き過ぎていなかったため、瞳化を逃れた『ポップ』、『アバン』、『ラーハルト』、『ヒム』が代わって対峙。『構え』でアバンは脱落、続けてラーハルトとヒムも容易く打ち倒し、3人を『瞳』に変える。
だが、ここで奥義の弱点に気付いたポップの挑発に乗ってしまった結果、必勝の奥義を『ポップ』の奇策によって破られ、直後に『アバンストラッシュX』で左腕を失い、ダイの剣で左心臓を突かれる大ダメージを受けて再生能力を失う。剣を抜こうにも剣自身の意思で突き刺さり引き抜けず、これが結果的には己の生命を絶たれる最大の敗因の一つとなった。
思わぬ奇策に逆転されかけたが、バーンはまだ秘策を残していた。『大破邪呪文』の影響を受けて且つ魔力炉無くとも唯一『大魔宮』に干渉できる場所……それは心臓部に搭載された『ピラァ・オブ・バーン』であった。
最後の一柱を地上へ投下し、真下にいたダイの仲間たちを光の魔法陣ごと消し飛ばす。更に各地に投下した柱には『バラン』の命を奪った『黒の核晶』を搭載させ、最後の投下を合図に時限装置が起動し爆発することを告げる。ダイたちを誘い出したのは、地上の実力者に真の目的と柱の関係を悟られるのを避ける陽動だった。
柱は六芒星の魔法円を描くように投下され、増幅した爆発によって数分後に地上が消える。こうして二人の戦意と心を挫かせ、かつての仇敵の冥竜王ヴェルザーもこの状況に苦々しくも祝辞を述べに姿を見せ完全勝利を確信(…が、実はこの時まんまと騙されていた事が後に判明)。
それも束の間、事前に危機を察知した『メルル』が『フローラ』たちを避難させ、『ロン・ベルク』と『ノヴァ』だけでなく、地上に残った世界中の戦士たちは『核晶』の凍結に奔走。諦めの悪い『ポップ』は、誰もが限り在る命で、精一杯生きている大切さを大魔王へぶつけ、その想いが今一度勇者を立ち上がらせた。
余裕を失い、爆発のタイムリミットを待たず魔力を核晶に起爆させようとするが、『瞳』が一斉に襲い掛かってきた事とその原因を知り戦慄。
今まで不思議な事を度々起こし、レオナ姫の胸の中に隠れていたゴメちゃんが神の涙である事をダイ達に明かす。
数千年の時を掛け、準備を進めて作り上げた『お遊び同然』な自軍が追い詰められたのは【竜の騎士】と【神の涙】。二つの神々の遺産が起こした奇跡と考え、自らの脅威となる【神の涙】を握り潰す。
刹那、【神の涙】によって起こされた最後の奇跡によってオーザムにいる勇者達や『マトリフ』が事態を知り、『核晶』の凍結に動き、地上の人々の奮闘で全てのが凍結させられてしまい計画は阻止されたが…。
【大魔王、戦慄】
「……やあ…済まなかったな。言葉は聞こえていたが…少々考え事をしていたものでな…」
「いや………実際、余の負けだ。人間の絆の力…恐るべきものよ」
「………うぬらを殺す!!」
「竜の騎士の血は絶え、地上の強者たちは全滅! それで終わりだ!!」
「再び地上破滅計画は続行される。しかも今度は邪魔者無しで…!!!」
王手を掛けながら、予想に反した逆転劇をまざまざと見せつけられ敗北を一時認めながらも開き直り、再度地上消滅の再開を宣言、徹底的に計画を潰した勇者一行を手に掛けようとする。ここに至ってダイは、父から受け継いだ紋章の力を完全解放する決断を下すも「子供の絵空事」と嘲笑、見せしめとしてポップたちを『大魔宮』の心臓部へと落下させ幽閉。
「怒るか? 怒れ怒れッ!!! 言ったような力が本当に在るならこれで出しやすくなっただろう!!?」
「そんな馬鹿げた力が在るなら、見てみたいわ…!!!」
行き過ぎた行為が、ダイの逆鱗に触れ、両拳に宿った紋章を再び額へひとつに集約させ、今迄表に出さなかった殺意を滾らせる魔獣へ変身した。
荒ぶる魔獣は凄まじいパワーを発揮し、力関係は一気に逆転。ダイに一方的に殴打され「より強い力でぶちのめされれば…お前は、満足なのか…?」と涙ながらに指摘される。「力こそ正義」の標榜は、自分が蹂躙する側に立つからこそ成立する論理に過ぎなかった。それを示すようにダイはバーンの禁断の手刀と同じモーションで……彼の左側の角を叩き折る。
「今のあやつは魔獣…!! 勝利の為に全てを捨てているッ…!!」
「……余も…捨てねばならぬか…!!」
激闘に継ぐ激闘で魔力の源すら失い、城の崩壊を止められぬ大ダメージを負い、例え両手があっても敵わぬと悟るが、己の信念を曲げず、大魔王としての矜持と、譲れぬ勝利の為、大きすぎる代償を承知で額から『鬼眼』を抉り出し、痛みを伴い力を解放。自らも二度と戻れぬ巨獣となる決断を下す。
「力こそ正義」という信念のもとで何千年もの時を生きてきたバーンだったが、初めて現れたバーンよりも強い存在は戦いの悲しみに打ちひしがれながらバーンを叩きのめし、「こんなものが正義であってたまるか!」と、その価値観を涙ながらに拒絶してしまう。
それはバーン自身の生き様はおろか、魔界の在り方さえも完全に否定してしまう言葉だった。
誰よりも魔界を愛していた魔族であるバーンにとって、そんな存在に敗北してしまうことは、死よりも受け入れがたいことだったのかもしれない。
オフィシャルファンブックのキャラクター項目のヒストリーの欄によればバーンが本体と肉体を分離させたのは、ヴェルザーと休戦協定を結んだ後とのことなのだが…。
同書籍の年表では伝説の魔界の剣豪・ヒュンケルが活動した時代より更に前の時期、数千年前にバーンが肉体を分けたと明記されている。劇中でもバーンは自身の肉体を分けてから数千年ぶりに二つを統合した事を語っており、一方でヴェルザーとの休戦協定締結を数百年前の事と言っているため、キャラクター項目は誤植の可能性が高い。
同書籍はヴェルザーのヒストリー欄でも、キルバーンがバーンの元に派遣されてきた時期をヴェルザーが封印された後(年表ではバランがヴェルザーを倒し封印したのは本編の約13年前)のように記載しているなど、他にも本編と大きく食い違う≒誤植らしきものが見られる(作中では休戦協定締結直後である数百年前にキルバーンが派遣されてきた、と描かれている。後の外伝『獄炎の魔王』でも約15年前の時点で既にキルバーンが古参の客将としてバーンに仕えている様子が描かれている)。
星のドラゴンクエスト
コラボイベントで老バーンと真バーンが登場。敗北後は自爆することで一行を道連れにしようとしたが、ダイによって空高くまで連れて行かれ、共に消え去った。原作の結末を少し改変したものになっているが、アニメ完結前イベントでは鬼眼王には成らずアバンの使徒が一人も欠けず元の世界へ帰還する。