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『…私はバーン様の真の、お姿を覆い尽くす黒い霧(ミスト)…!!』

『即ちミストバーンだ!!!』

概要

CV:古川登志夫(2020年版)

大魔王バーンが戯れに結成した魔王軍六団長の一人・魔影参謀ミストバーンの真の姿。

魔界で飽くことなく繰り返されて来た中で漂う“死しても戦おうとする壮絶な思念”から誕生した『暗黒闘気』の集合体が生命を持ち誕生したモンスターで、本人曰くゴーストとガス生命体の中間的存在。また、あやしいかげシャドーといったモンスター達の王ともいえる存在でもある。

人物像

恐るべき特性の持ち主だが、強者の肉体を奪うだけで強くなれる(「能力」の項目を参照)がゆえに、他者を利用することでしか強くなれない自分に対して強い嫌悪感とコンプレックスを抱いている。

劇中でクロコダインチウを格下扱いしたり、チウとのやり取りで言い放った「肉体的な強さならバーン様より上」「私が魔王軍最強なのだ」という台詞も強者に対する羨望の裏返しだったのだろう(その台詞がまったくのウソではないことも後押ししていたと思われる)。

フレイザードヒムに辛辣だったのも、「作られた肉体を持ち、鍛えずとも生まれつき強い存在」に対するコンプレックスが原因(ヒムへの態度は敬意を抱いていたハドラーの遺志を継いだことへの反発が主だが)だと思われる。彼らは自らの命を懸けて戦っており、また鍛錬を嫌う性格にも見えないので、ただの私怨と言ってしまえばそれまでだが……。

自分の肉体で正々堂々戦うことが出来ない(そもそも実体らしい実体も持っていないので体の鍛錬、なんてことはできない)というもどかしさが起因となっているようで、自己鍛錬を重ね強くなれる生身の肉体を持った真の戦士たちに対して憧れと羨望、強い敬意の念を持つ。

実際、ミストの基本的な戦い方は憑依能力で他人の肉体を乗っ取って戦うという超魔ゾンビを創ったザボエラと同じだが、高い魔力を持ちながら苦労せずに卑怯な手段で成り上がろうとするザボエラと、成長したいのに寄生虫になるしかないミスト、というふうに根底にある思いは似て非なるものだった(敵にしてみれば「味方の体を乗っ取り、盾(人質)にしながら戦う」という、ザボエラ以上に卑劣な戦法にしか見えないため)。

能力

自身の分身としてシャドーを生み出す事ができるほか(これが後のミストバーンの正体の伏線となっている)、暗黒闘気の塊である精神エネルギー生命体である為に本能的に別の生物に憑依して傀儡に仕立て上げて操る力を持つ(実体を失っても戦い続けようとする習性から、いつしか他者に憑依する術を覚えたという)。

憑依した者の魂を一時的に消して意識を奪うことが可能だが、完全に憑依する場合は魂自体を潰してしまうこともできる。

また、その特性故に「光の闘気」の攻撃以外は受け付けず(憑依する相手が自身の力を十二分に発揮できる場合は、それすらも撥ね返す暗黒闘気を発生させる)、迂闊に近付こうものならたちまちその肉体を奪われる危険性がある。憑依した状態でも光の闘気なら倒せるが、その場合は憑依された者の死も意味する。

真の姿であるミスト形態で使用した力。あらゆる生物の体を乗っ取り自らの肉体とする非常に強力な能力。ミストには痛覚や疲労という概念が皆無で、尚且つ彼自身の格闘技術も一流であることから、乗っ取られた者は文字通り死ぬまで戦う超戦士となる。凍れる時間の秘法で生命活動を行っていない肉体に憑依していることから死体になっても操れる可能性は大いにある。

但し「火事場の馬鹿力」を常時出しっぱなしの状態であるので肉体に過剰な負荷がかかる諸刃の剣であり、この状態を維持するのは通常は不可能。武道家として鍛え抜かれたマァムの肉体ですら攻撃時の反動で負傷を余儀なくされている。それを克服している手段こそが凍れる時間の秘法なのである。

闇の衣を剥いで素顔を見せた時にバーンの肉体に入り込むという性質上、ビュートデストリンガーや呪文吸収はミスト自身の能力と思われる。また憑依してからはこれらの能力は使っていない。

大魔王バーンへの忠誠

精神体である故に相手の肉体を乗っ取り続ける習性を覚えた後にバーンと出会ったと云う。

ミスト自身は実体を持たぬが故に「成長」という概念を持てず、他者の肉体を乗っ取り続けることしか出来ない自分の在り方に劣等感を感じており、自分自身を忌み嫌っていた。

それ故に、自分を必要としてくれたバーンに心から服従を誓い、長きに渡り側近として仕えたのである。ただしミストは「バーン様は私の能力が必要だった」と述べており、利用価値があるから側近にされたということは自覚しているようだ。

オフィシャルファンブックによれば、バーンから預かった肉体を晒すことは主の意思に背くため、だからこそミストは忠実にその秘密を守り続けてきたという。またバーンの肉体の力を完全に引き出しているとのこと。

アバンの言によれば、闇の衣をまとっている時はバーンの肉体を守るようにミストが覆っているという(まだ憑依していない状態。素顔を晒すと同時に憑依する)。そのため闘気拳(オーラナックル)など強力な光の闘気を用いた技ならばミストにダメージを与えられる。

憑依した状態でも「邪悪な存在だけを討つ」空の技ならミスト本体を攻撃することも可能。ただし凍れる時間の秘法による無敵効果まで貫通できるかは不明。

ヒュンケルによれば、ミストバーンが長年無言を強いられていたのは、声や仕草、戦法などから互いの共通点を見抜かれるのを恐れたためだという。特に素顔を晒した後はバーンと似通った口調だと指摘している(実際に二人称に「うぬ」を使うようになり口調も変わっている)。

マァムに憑依した際はこのような変化は見られなかったので、ミスト自身が意識して(あるいは無意識に)やっていると思われる。仮にそうなら、これもまたバーンに対する羨望の表れなのだろう。

バーンを守る影の男は、如何にして生まれたのか?

「この忌まわしい身体のおかげでバーン様に出会えた!」

「バーン様は言われた!『お前は、余に仕える天命をもって、生まれてきた』と!!」

そんな忌々しい己の特性を評価し、全盛期の肉体を守護するという自分にしかできない任務と生きる理由を与えてくれたバーンに対しては絶対の忠誠を誓っている。肉体を管理し始めたばかりの頃は「ミスト」と本名をそのまま名乗っていたが、冥竜王ヴェルザーによってキルバーンがバーンの元へ来て以降、新たな幹部名『ミストバーン』を与えられる。バーンにとっては非常に長い付き合いであり、側近としては最古参であった。バーンによる魔王軍結成後はバーンの為に尽くそうとアバンの使徒と戦いを繰り広げることとなる。

「バーン様には、私の能力が!」

「私には、バーン様のような偉大な主が必要だったのだ!」

「私は、まだまだバーン様の為に働かねばならん………!!」

活躍

正体を現してそうそう、手始めに不用意に近づいたマァムの身体を乗っ取り、アバン・ヒム・ラーハルトを一蹴。マァムの身体能力を120%発揮させ、同士討ちを誘うために暴れ回る。

クロコダインには「そんな人質作戦はお前に似つかわしくない」と窘められたが一笑に付した。アバンによって虚空閃が放たれる寸前に抜け出し、スキを突きヒュンケルに憑依。その際に発された暗黒闘気はミストバーンに匹敵する。

ヒュンケルの意識の中へと入り込み、彼の心の声と対話し、その魂を打ち砕き、完全なる同化を果たそうとした。

ミスト「あの日…アバンの下を離れた、お前を拾いあげた時、私は思った…」

ミスト「一からすべてを育てあげ最強の暗黒力をふるえる身体を作り出す事ができたら、これ以上のスペアはない!! 万一、バーン様に肉体を返す時が来ても、私にとってはこの上ない〝武器〟となるはず…!!」

ヒュンケル「武器…! …お前にとって…俺は…武器…か……」

ミスト「そうだ!! お前は私の武器だ! 道具だ!! 始末しようと思った事も何度かあったが…生かしておいて良かった! 最後の最後で役に立ったぞっ!! フハハハハハっ!!!」

ミスト「光栄に思うのだな! バーン様の身体の後釜になれる自分をっ……!!!」

ヒュンケルの魂に触れた瞬間、凄まじい光の闘気が発される。

ミスト「ヒュ、ヒュンケル…!! お前…光の闘気を魂の中に集中させていたのかっ…!!!」

ヒュンケル「もとより…………全身が、ロクに動かぬ俺にはこれしか、できる事が無かった……」

ミスト「し…しかし! これだけのパワー…一瞬で蓄えられようわけがない…! 最初から…私がお前に乗り移る事を知ってでもいない限りはっ…!!! なぜっ…なぜ、それに気付いたっ…!!?」

ヒュンケル「……なぜか…そんな気がした…………お前は必ず、俺を選ぶ…と…!」

ミスト「オオオォオッ!!! ヒュンケル~~~~~~ッ!!!!」

こうして影(ミスト)は光の奔流に飲み込まれ完全に消え去った。

クロコダイン「…終わったのか……闇の師弟の長き宿命の日々が……」

ヒム「本望だろうよ。長年かかって鍛えあげた理想の身体の中で死ねりゃあな…」

なお、バーンからはミストの死に対して何も労いの言葉はなかった(宿敵となったバランやハドラーに対しては思う事があったのか何度か思い出している)が、ヒムの言う通り、自身が鍛え上げた身体で死ねるのは本望なのかもしれない(ちなみにバーンは、老人時に必要だった光魔の杖を「もう必要ない」という理由で踏み砕いている。これが老バーンの時には重宝していたミストに対する「便利な道具への答え」と見ていいだろう)。

敗北したマキシマムに対する「自分がバーン様に買われていると思い込んでいる」「手負いの獣とネズミの区別もつかない(ヒュンケルを侮っていた)」という台詞が、自分自身にも当てはまってしまったのは皮肉としか言いようがない。

尤も「バーンの便利な道具」という自覚はあった上、バーンが部下の中でミストを最も重用していたのは事実なので、全く無自覚かつ期待もされていない阿呆王と一緒にするのは失礼かもしれない。

またヒュンケルの魂を砕こうとしたのに対し、マァムの魂は一時的に消し去るにとどめた理由については「あんな女のことはどうでもよかった」と述べている(ここでマァムを倒しておけば少なくてもキルバーンは「すぐに」討ち取られずにすんだかもしれない)。

どうやらマァムに庇われた恩があるというわけでもないようだ(ミストの性格からすると、消し去るのを躊躇した可能性はあるが、「バーンの言葉は全てを優先する」ので、卑劣な行動を良しとしなくても実際にポップのメドローアを避ける為に疲労した老師を人質にとっている。残る可能性として「魂を消す行為」は「魂を消す事でその身体が死ぬまで抜け出せない等」のデメリットがあったとすれば、マァムの魂を消してマァムの身体を完全に手に入れてしまうとヒュンケルに憑依するのが困難になる可能性があった)。

けっして週刊ジャンプ的かつメタ的な都合ではないはず・・・。

敗因

確かにミストはヒュンケルに暗黒闘気を教えたことで、自分のスペアにする計画は一見成したように見えたが、ヒュンケルがアバンにも師事していたことの価値を軽んじた結果、対になる光の闘気の脅威と、ヒュンケルがアバンの使徒の決意を甘く見ることへ繋がり、「自分自身を殺す諸刃の剣」にもなっていたのに最期まで気付かなかった。

加えて数時間前にヒュンケルへ自身の暗黒闘気を取り込ませたものの、光の闘気で打ち破られている。これはヒュンケルを我が物にする策だったのだろうが、この行為が「憑依されることを見越し光の闘気で対抗する」という手段を思いつかせた可能性は想像に難くない。

身も蓋もない言い方をするならば、自分がアバンよりも優れた師であると思い上がったことが最大の敗因だろう。

名言録

  • 「……侮辱は許さんぞ…! 私は…その手の侮辱が一番嫌いだ…!!」

ヒムから寄生虫呼ばわりされた事に対する怒りの言葉。

  • 「……そうだ 他人の身体を奪えば簡単に強くなれる私にはできない事…」
  • 「自らを鍛え強くなる事…!」
  • 「それができる者は皆尊敬に値した!!」
  • 「……うらやましかった……」

クロコダインに強い心身を持つ者に敬意を表してきた理由を悟られた際の哀しみと羨望の言葉。

  • 「フム…なかなか良い体だ」

マァムに憑依した時に放った言葉。マァム自身が鍛え上げた身体能力を最大限に活用し、楽しんでいた。

  • 「この忌しい身体のおかげでバーン様に出会えた!」
  • 「バーン様は言われた!『お前は余に仕える天命をもって生まれてきた』と!!」
  • 「バーン様には私の能力が!私にはバーン様のような偉大な主が必要だったのだ!」
  • 「私はまだまだバーン様の為に働かねばならん……!!」

己の特性を哀れみ、同情のまなざしを向けたクロコダインに放った言葉。自分の精神に太陽をくれた喜びを抱き、沈黙の仮面の下に潜んでいた【主のために命を賭す武人の魂】を露わにした瞬間である。

フェニックスウイングについて

ヒュンケルに自分の正体を看破される切っ掛けになった技であるフェニックスウイングだが、大魔王バーンから直々に伝授された可能性がある。

そもそも魔王軍自体がバーンの後進を育成するための組織であり、(真・大魔王バーンの場合は不明だが)老いた身体のバーンの場合は多少のリスクがあったとしても部下が強く育つのは大歓迎であるため、特に隠しておく理由がないからである(影武者としての機能は低下するかもしれないが、ミストバーンの忠誠心とトレードオフで納得するのは十分あり得る。現に六軍団長時代のミストバーンは、バランに次ぐ魔王軍の最大の持ち駒だった)。

担当声優について

正体が判明した際に「ミスト自身の声」で話すのだが、この声はヒュンケルも聞いたことがなかった(つまり闇の衣状態も「ミスト自身の声」で話していないということになり、声音を変えていたということ)。

ちなみにロン・ベルクは、テレパシーで若バーンの哄笑を聞いただけで「バーンか」と言い当てている。ミストバーンが「バーンの声」で話していれば正体に気づかれていた可能性は決して少なくない。

原作が完結して幾年か経った2020年新アニメ版では上記の「バーンの声で話している」という設定を尊重したのか、ミストバーンの声(子安武人)は本来は真バーンの声であり、ミスト自身の声は別(古川登志夫)となっている。

本来のミストを演じた古川登志夫は、『ドラゴンクエストⅩ オフライン』にてナブレット団長を演じている。

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